今日はどれにする?“甘い誘惑”ロシアの菓子パン図鑑

By russian-festival. Filed in いちのへ友里  |  
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焼き立ての香ばしい香りに誘われて、ついつい立ち寄ってしまう街角ベーカリー。

地下鉄の入り口には、行列のできる小さなパンのキオスク。

スーパーマーケットの棚には見たことのない菓子パンが並びます。

クロワッサンやマフィン、ドーナツなど日本でもお馴染みの菓子パンが並ぶ一方で、
ロシアならではの素朴でどこか懐かしい甘い菓子パンたちが、「おいで」と誘惑してきます。

これまでこの連載では、ロシアを代表する黒パン「ボロディンスキー」の七変化や、伝統的な白パン「カラチ」についてはご紹介してきました。今回は“甘い誘惑”ロシアの菓子パンの世界を歩いてみましょう。

☆関連記事:

モスクワ通信『ロシアで流行中!黒パンより黒い・・・』

モスクワ通信『乙女心をくすぐる町コロムナ 元祖ロシア白パン!カラチ博物館』

 

【トヴォロークを味わう幸せ:ヴァトルーシカとソチニク】

ロシア人の大好きなカッテージチーズ「トヴォローク」。もちろん、菓子パンでもその存在感は主役級。素朴な小麦の香りに、濃くて酸味のあるトヴォロークが広がります。

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△「トヴォローク」をのせた丸いパンのヴァトルーシカ(ватрушка)は、ロシア菓子パン界の王道。ほのかな甘みと酸味、しっとりとしたチーズの層が、焼きたての生地と絶妙にマッチして、まるでチーズケーキがそのままパンに乗っているような味わいです。

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△一方、ソチニク(сочник)は、トヴォロークを生地で半月型に包み込んで焼きあげます。ほろっと崩れるスコーンのような生地と、レアチーズのようなフィリングのバランスが絶妙で、優しい甘さの“ ロシア版スコーン”とも言える存在です。

【ロシアのあんぱん!?ポピーシードのパン】

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△日本では「あんぱん」が話題ですが、ロシア版「あんぱん」にあたるのが、ケシの実(ポピーシード)の餡が入ったパン。ぷつぷつとした食感とごまのような独特の香ばしさがクセになる味で、ねじりパンや渦巻き状など、見た目もさまざまです。日本では主に花屋さんで見かける印象のポピーですが、ロシアの製菓コーナーには、黒いケシの実が売られています。

赤いパッケージはケシの実フィリング、青はトヴォローク入り。旧ソ連時代から愛されてきた味はもちろん、どこか懐かしいレトロなデザインも魅力です。

 

【ジャム&ヴァレーニエを味わう!スロイカ】

以前ご紹介した、ロシアの果実の砂糖煮「ヴァレーニエ」を閉じ込めたのが、パイ生地のスロイカ(слойка)です。

☆関連記事:【モスクワ通信】ジャム<ヴァレーニエ<コンポート

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△スロイカは、パイ生地にりんごやさくらんぼ、ブルーベリーなどのヴァレーニエを挟んで焼き上げます。
パン屋さんの焼き立てサクサクのものがベストですが、パッケージされた菓子パンのしっとりしたものもまた美味しい。地下鉄の入り口に並ぶキオスクでも定番で、温めてもらったスロイカを頬張りながら歩く人をよく見かけました。

ハムやチーズ入りのお惣菜系や、ソーセージ入りのサシスカ(сосиска)も人気です。

 

【しっとり大人の味:ババ・ラム】

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△ババ・ラム(баба ромовая)は、コップ型のブリオッシュパンにラム酒シロップをたっぷり染み込ませた大人の味です。しっとりとした食感と芳醇な香りが広がり、まるで洋酒の香るケーキのよう。

 

【懐かしい子どものおやつ:コルジクとプリュシカ】

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△コルジク(коржик)は、外はクッキーのようにサクッ、中はスコーンのようにふんわりの薄型パンです。アーモンドプードルを使ったミンダーリヌィ・コルジク(Миндальный коржик)も人気。

プリュシカ(плюшка)は、ハート型やうずまき型の砂糖パン。どちらも学校の給食や子どものころのおやつ時間を思いだすロシア人も多いそう。

以前ご紹介した、蜂蜜とスパイスを練り込んだトゥーラ名物「プリャニク」も、パンとクッキーの中間のような食感で紅茶にピッタリです。

☆関連記事:

モスクワ通信『サモワールとプリャニキの街トゥーラ(1)ロシアのお茶文化を訪ねて』

 

【素朴な甘さが止まらない:ポンチク】

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△揚げドーナツ系の菓子パン「ポンチク(пончик)」は、表面は軽くカリッと、中はもちもち。粉砂糖をかけただけのシンプルなものが多く、一口食べると、ふんわりと油と粉の香ばしさが広がり、心がほっと温まります。サンクトペテルブルクではピシュカ(пышка)とも呼ばれ、味・形も店や地域によってさまざまですが、いずれにしても揚げたての香りに誘われて、見つけるとついつい並んでしまいます。

 

【日本にも“シベリア”があった!?】

ところで、日本にも“ロシアの香り”を感じる菓子パンがあります。その名も「シベリア」。

「昭和のこどもたべたいお菓子No.1」に選ばれたというこのお菓子は、カステラに羊羹を挟んだ日本生まれの菓子パンです。

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△お店自慢のシベリアを食べ比べるのも楽しい!左は京都・村岡総本舗のシベリア。右は青森・工藤パンのシベリア

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△シベリアの種類の多さは日本一!いえ世界一⁉︎?と噂の、埼玉県岩槻・関根製菓

こし餡をカステラではさんだ「昔なつかしシベリア」以外にも、小倉、柚子、抹茶、黒糖、味噌、よもぎなど和菓子屋さんの自慢の味。さらに、モカ、ミルクコーヒー、キャラメル、マロン、いちご、オレンジ&マンゴー、ココアなどケーキ屋さん風のお味。また、春のさくらや青梅、夏のラムネや紫いもなど季節を感じる珍しい味まであります。

羊羹部分をシベリアの永久凍土に見立てた説、カステラに挟まれた羊羹をシベリア鉄道の線路に見立てた説、シベリア出兵や従軍した菓子職人が考案したという説まで――。なぜ“シベリア”と名付けられたのかは諸説あり謎に包まれています

ただし、ロシアで「シベリアをください」と注文しても出てきませんのでご注意を!

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焼きたての香り、ほんのりとした甘み、そして紅茶の湯気。
ロシアの菓子パンには、その国の人々のやさしさと日々の物語が詰まっています。

「今日はどれにする?」――そんな小さな幸せの選択から、
あなたのロシア菓子パン図鑑が始まります。

 

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