Archive for the 'いちのへ友里' Category

プラトークの本場パヴロフスキー・ポサードへ 前編

火曜日, 1月 14th, 2025

寒冷なロシアの冬、ひときわ鮮やかに存在感を放つ「プラトーク(платок)」。

ロシア語で「スカーフ」や「ショール」を意味しますが、単なる防寒具ではなく、長い歴史のなかで培われたロシア文化の象徴的なモチーフのひとつで、ロシアの人々の生活や心に寄り添う大切な存在です。

スクリーンショット 2025-01-14 9.40.05

今回のブログでは、ロシアのプラトークの歴史や魅力、そしてその一大生産地であるパヴロフスキー・ポサードの工場と博物館をご案内しながら、奥深いプラトークの魅力を探ります。

 

プラトークの本場パヴロフスキー・ポサード

ロシアの首都モスクワから東に約70km、パヴロフスキー・ポサードというプラトークの一大生産地があります。

スクリーンショット 2025-01-13 21.37.01

△市の入り口もプラトーク

スクリーンショット 2025-01-13 10.19.27

「パヴロフスキー・ポサード・ショール工場」は、1795年から今日まで、職人たちが伝統技術を守りながらも現代的なデザインを取り入れたプラトークを生み出しています。

スクリーンショット 2025-01-13 10.25.18

プラトークの鮮やかな模様は、一枚ずつ手作業でプリントされています。その手法は「木版印刷」に由来し、今でも職人たちの熟練した技術によって、複雑な模様が正確に再現されています。

 

プラトークの作り方とその芸術性

プラトークの製作には、非常に多くの手間と技巧が求められます。

スクリーンショット 2025-01-13 12.27.31

まず、デザインを考案した後、そのデザインを布地に染め込む作業が行われます。

スクリーンショット 2025-01-13 10.31.18

スクリーンショット 2025-01-13 10.35.29

この過程には、 木版染め(木製の版に絵柄を刻み、染料を押し当てて布に転写する技法)やトレーシングペーパーを使って模様を移す技法が多く使われます。

スクリーンショット 2025-01-13 12.07.59 スクリーンショット 2025-01-13 12.07.28

実際に博物館では、古い木版やトレーシングペーパーの写真も展示されており、それらがどのようにショールに命を吹き込んでいるかを知ることができます。

スクリーンショット 2025-01-13 12.10.01 スクリーンショット 2025-01-13 12.10.20

デザインを精密にトレーシングペーパーに写し、さらにそれを布地にトレースしていきます。トレーシングペーパーを使うことで、デザインの一貫性を保ちながら、非常に細かいディテールを再現することができるそう。

スクリーンショット 2025-01-13 12.11.18

ショールの模様に込められた繊細さや、制作にかけられた時間と努力が、このような道具や技法に凝縮されています。

スクリーンショット 2025-01-13 12.27.46

印象的だったのは、1枚のプラトークに使用される色数の多さ!一つのデザインに30色以上を重ねることも珍しくなく、各色ごとに版を変えて印刷するため、非常に手間のかかる作業です。

スクリーンショット 2025-01-13 12.18.51

△また、天然素材であるウールやシルクが主に使用され、触れるだけでその柔らかさと高級感が伝わってきます。メリノファインウールは、メリノ種からとれる羊毛で、ほかの羊毛に比べて繊維が細く、吸湿性と通気性に優れているので、サラッとした肌心地で夏でも快適に着用できるうえ、丈夫なのが特徴だそう。

スクリーンショット 2025-01-13 12.31.47

△20世紀はじめ頃の工場周辺の様子や、

スクリーンショット 2025-01-13 12.28.42

スクリーンショット 2025-01-13 13.38.02

△職人たちが作業にあたる様子など、貴重な資料も展示されているほか、

スクリーンショット 2025-01-13 10.28.03

△これまでのレジェンド職人たちの作品も紹介されています。

スクリーンショット 2025-01-13 13.25.59

△パヴロポサードのショールには、作家の名前とタイトルがつけられているのも特徴で、お気に入りの作家の柄や色合いから世界観を感じられたり、ストーリーを想像して楽しむこともできます。

スクリーンショット 2025-01-13 13.35.33

△たとえばタチヤナ・パヴロヴナさんのコーナーでは、経歴や受賞歴、そして代表作(「エレジー」や「ベルベット」「ベルベット・ナイト」)などを知ることができます。

スクリーンショット 2025-01-13 13.34.23

△デザイン分野で傑出した作品を残したエレーナ・ゲルマノヴナさんは、モスクワ国立繊維アカデミー卒業後、勤務をはじめた初日から(!)、非対称などモダンなデザインを生み出していきました。代表作には、「春の息吹」や「ロマンチック」「雪の女王」などがあります。

スクリーンショット 2025-01-13 13.27.06

ひとつひとつのプラトークには職人の技が光っていて、まさに「生きた芸術」を感じることができます。

後編では工場の外へ・・・パヴロフスキー・ポサードの街のショール博物館やプラトークのお店にもご案内します!

 

 

ロシア映画の聖地!モスフィルムのスタジオツアー(後編)

月曜日, 11月 25th, 2024

前編では、創立100周年を迎えたロシア最大の映画会社モスフィルムの歴史と、スタジオツアーの前半部分である博物館内の様子をお伝えしました。後編では、さらにモスフィルムの魅力を探っていきます。

IMG_3617

△広いモスフィルムの敷地内は、映画をモチーフにしたモニュメントや実際に使用されている撮影機材があちらこちらに点在しています。

IMG_3625 スクリーンショット 2024-11-24 16.20.09

△また、「レオニード・ガイダイ広場」など監督の名が冠された住所があったりと、楽しくてキョロキョロしてしまいます。

IMG_3638

△また、数多くのセットがありますが、ツアーでは実際に映画で使用された巨大な屋外セットのなかを散策することもできます。

IMG_3660

この日は、19世紀から20世紀初頭のモスクワの街並みが再現された「古いモスクワの街のセット」と「古いサンクトペテルブルクの街のセット」を見ることができました。

IMG_3648

△観光客はタイムスリップしたかのように、当時の都市風景のなかを自由に歩き回り、まるで映画のワンシーンのような写真を撮ることもできます。

モスフィルムが長年にわたって保持している貴重なカメラのコレクションも見応えがありました。

IMG_3768

IMG_3798 IMG_3774

△ソビエト時代の映像機器は貴重なもので、映画技術の進化を実感することができました。初めて見るものも多く、ガイドの説明を聞きながら、これらの機材がどのように使われてきたのかを知ることができるのも、映画ファンにとっては非常に興味深いポイントでした。

IMG_3710

△こちらは屋内の教会セット。

IMG_3733

△運が良ければ撮影が行われている現場に立ち会うことができます。

IMG_3741

△実際にカメラが回り、照明や音響、演出、役者の演技が一体となって、ひとつのシーンが作り上げられていく緊張感!

IMG_3791

△モスフィルムのシンボルといえば『労働者とコルホーズの女性』の彫刻です。手に鎌と槌を持った男女はソ連時代の労働者階級と農民の団結を象徴しているそう。1937年パリ万博のソ連パビリオンを飾るために製作されました。

IMG_3094

△モスフィルムの映画はいつも、スパスカヤ塔を背景に『労働者とコルホーズの女性』像を映したオープニングから始まります。1947年のグリゴリー・アレクサンドロフ監督『春』から使われているそうです。

IMG_3853 IMG_3857

△ちいさなお土産屋さんには、モスフィルムのマークが入ったグッズやDVDなども。

こうして、ソビエト・ロシア映画の魅力をたっぷりと味わう盛りだくさんのツアーが終了しました。

IMG_3803 2 IMG_3809 2

△併設のカフェでひとやすみ、映画をテーマにしたメニューもありました。エリダール・リャザノフ監督の映画『職場恋愛』サラダにしようかな?

IMG_3680

ツアーを終えて、改めてロシア映画の魅力ってどんなところにあるかしら、と一緒に参加したメンバーでおしゃべりに花が咲きます。

社会的・哲学的なテーマを深く掘り下げ、魂に響く心理描写で訴えかけ、観客に考える余地を与えるような作品づくり。

商業性エンターテインメントよりも思想の深さや芸術性を優先するロシアらしい詩的な映像美学と音楽。

そしてロシアの歴史や文学を背景にした壮大な規模や、ソビエト時代の生活感を描写したストーリーなど。

今、改めて観たい映画がたくさんあります。

 

ロシア映画の聖地!モスフィルムのスタジオツアー(前編)

金曜日, 10月 25th, 2024

今年2024年はロシア最大の映画会社(映画コンツェルン)モスフィルムの創立100周年を記念する年です。

「ロシア文化フェスティバルIN JAPAN」では、モスフィルムから女優のマリヤ・カルポワを招いて詩の朗読と音楽を融合したコンサートを開催、また11月には「モスフィルム100周年記念映画祭」を開催し、2日間にわたって名画と最新作を一挙公開して大好評を博しました。

△モスフィルム公開の記念映像『モスフィルム100

今回はそんなロシア映画ファンにとって夢のような場所であるモスフィルムのスタジオ見学ツアーへご案内します!映画制作の歴史に触れ、映画の舞台裏を知る貴重なチャンスとして、ロシア人にも海外からの観光客にもとても人気があります。

IMG_3473

△場所はモスクワ南西部、モスクワ川を越えてモスクワ大学のある丘の近くです。

IMG_3893

△モスフィルムへ到着!

IMG_3634

△敷地を入ると巨大な看板に「モスフィルム」と書かれた撮影スポットも用意されていました。数々の名作映画がここで誕生し、そして今もこの敷地のどこかで新しい映画が撮影されていると思うと興奮を隠せません!

IMG_3887

△ツアーの始まりは、モスフィルム博物館です。モスフィルムの名作映画の撮影時に実際に使用されていたセットや衣装、映像機材が保存されており、見学者はそれらを間近で見ることができます。

IMG_3529

IMG_3525 IMG_3506

△クラシックカーがずらりと並ぶエリアや、豪華な衣装が展示された部屋は、ひとつの博物館のように充実しています。

IMG_3551

△「ルスランとリュドミラ」(1972年)で使用された衣装

IMG_3556

△「アンナ・カレーニナ」(1967年)で使用された家具

IMG_3573

ツアーの参加者からも「この衣装が使われた作品は?」「これ、映画の中で見たことある!」など声があがっていました。

IMG_3577 IMG_3516 2

ここで簡単にモスフィルムの歴史を振り返っていきましょう!

モスフィルム最初の長編映画は、1923年11月、当時の所長であったボリス・ミーヒンが監督した『翼で上空へ』という作品で、そのプレミア上映が行われた1924年の1月30日が創立記念日として祝われています。

1920年代当時、レーニン政権下のソビエト政府は、社会主義革命後の思想を広めるための手段として、映画を活用しようと試みていました。革命のメッセージを普及するための教育ツールとして、映画の力は高く評価され、モスフィルムはその重要拠点として設立されました。

1930年代に入ると、ソビエト映画は社会主義リアリズムを標榜し、政治的なメッセージを強く打ち出していました。当時の映画は、労働者や農民の生活を賛美し、革命精神や社会主義国家の建設を称賛する内容が多くみられました。

IMG_3869 2

△(写真左上)この時期を代表する映画作品には、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の『戦艦ポチョムキン』(1925年)があります。革命前夜のロシアを描いた無声映画で、異なるテーマや場面を対比させた映像でメッセージ性を強める「モンタージュ理論」が確立されました。「階段」のシーンは特に有名で、今も映画を学ぶ学生たちにとっては教科書のような存在なのだそうです。ソビエト映画を国際的に広める重要な役割を果たした映画といえます。

戦後、スターリン時代(1940~50年代)においてもモスフィルムは映画制作を続けました。この時期は、ソビエトの英雄的な物語や、戦争映画が盛んに制作されました。特に、戦争映画や革命映画は、戦争や社会主義の勝利を強調するテーマが多くみられました。

IMG_3704 IMG_3710

△『イワン雷帝』で使用された衣装

同じくセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の歴史映画『イワン雷帝』は、第1部が1944年に、第2部が1946年に完成しました。16世紀のロシアを舞台に、モスクワ大公からロシア皇帝へと即位し、ロシア国家を統一したイワン4世(イワン雷帝)の人生を描いた映画で、第2部はその内容がスターリン政権下で問題視され、長らく公開が禁止されていました。(その後、1958年になってようやく一般公開されました。)その構図や光と影の対比、象徴的なモチーフを多用したシーンが印象的で、視覚的にも力強さが感じられますが、特に、顔をクローズアップすることで登場人物の心理を効果的に描いています。また、作曲家セルゲイ・プロコフィエフによる音楽も、この映画を一層素晴らしいものにしています。

ミハイル・カラトーゾフ監督の『鶴は翔んでゆく』(1957年)は、第二次世界大戦中のソ連を背景に、革新的で美しいカメラワークや印象的な長回しのシーンを用い、戦争の悲劇のなかで若い恋人たちが味わう絶望と犠牲、そして失われた愛情を描いています。第11回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを獲得しました。

IMG_3795 2

△モスフィルム建物内にずらりと並ぶ歴代名監督たちのポートレート

1953年にスターリンが死去し、ソビエト連邦の政治状況が変化すると、モスフィルムは新たな方向性を切り開いていきます。1950年代後半から1960年代にかけては、アート的な映画や実験的な映画が注目されていきます。この時期に活躍したのが、アンドレイ・タルコフスキー監督で、中世ロシアのイコン画家アンドレイ・ルブリョフの人生を描いた『アンドレイ・ルブリョフ』(1966年)を皮切りに『ソラリス』(1972年)、『ノスタルジア』(1983年)、『サクリファイス』(1986年)など、世界中の映画祭でつぎつぎと賞を獲得し、モスフィルムが誇る芸術的な映画作品として名声を確立していきます。

 

IMG_3794 2

△セルゲイ・ボンダルチュク監督(写真右上)の『戦争と平和』(1966年)はトルストイの名作を映画化し、豪華な映像とスケールでアカデミー賞外国語映画賞を受賞しました 。

IMG_3587 IMG_3599

さらに1970年代にかけては、社会的テーマや人間ドラマに焦点を当てるようになり、ウラジーミル・メンショフ監督『モスクワは涙を信じない』(1980年)も、ソ連時代にモスクワで暮らす3人の女性の友情や愛、自己実現に向かう人生を鮮やかに描き、アカデミー賞外国語映画賞を受賞しました。

エルダール・リャザロフ監督によるロマンチック・コメディ『運命の皮肉、またはいいお湯を!』(1976年)は今も毎年ロシア、新年の時期に放送される伝統的な作品になっています。

IMG_3770 2

△輝かしい国際映画祭受賞トロフィーの一部も展示されていました。

また日ソ共同制作の映画として、ロシアの探検家ウラジーミル・アルセーニエフの回想録を原作にシベリア奥地で撮影された黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』(1975年)や、アレクサンドル・ミッタ監督、吉田憲二監督、栗原小巻さん主演の『モスクワわが愛』(1974年)などの作品が文化交流の象徴となりました。

1980年代に入ると、冷戦時代の影響を受け、社会主義と資本主義が対立する中で、モスフィルムにとっては国内外のさまざまな政治的な圧力のなかでの映画制作が続きます。

そして1991年、ソビエト連邦の崩壊により、モスフィルムも大きな変革を迎えます。

IMG_3566

△カレン・シャフナザロフ監督の『皇帝暗殺者』(1991年)の衣装

1998年から現在までモスフィルムの社長を務めているのは映画監督のカレン・シャフナザーロフ氏。ソ連からロシアへ移行するなかで経営を立て直し、ロシア映画の復興のために伝統を尊重しつつ、デジタル技術を活用した映画制作や国際的な制作協力にも取り組んでいます。監督としても意欲的に活躍をつづけ、歴史映画 『アンナ・カレーニナ:ヴロンスキーの物語』はロシア文学の名作『アンナ・カレーニナ』を基に、新たな視点から愛と運命を描き、世界中でヒットしました。

IMG_3113

△「ロシア文化フェスティバルIN JAPAN」では2010年に「カレン・シャフナザーロフ監督作品映画祭」も開催し、監督が来日。

今年2024年の「モスフィルム100周年記念映画祭」では、監督の最新作『ヒトロフカ、4ノ印ースタニスラフスキー殺人事件』が上映されたほか、デジタル化された過去の映画アーカイブから名画の数々が選ばれました。

(ツアー後半へつづく)

 

ロシアの朝食の定番、カーシャってなに?

火曜日, 9月 24th, 2024

ロシアでは9月に新しい学年がスタートします。季節の変わり目、たっぷり睡眠をとってしっかり朝食をとって、素敵な1日のはじまりを迎えたいものですね。

さて、ロシアではどんな朝食が人気なのでしょうか?

IMG_9924

△ロシアの朝ごはんの定番はいくつかありますが、卵やロシアのクレープ「ブリヌイ」、そして右下に見えるロシアのお粥「カーシャ」もそのひとつ。

「カーシャ」とは、お粥と翻訳されますが、日本人がイメージするような生米をたっぷりのお水でやわらかくなるまで炊いたものとは違い、セモリナ粉(ひきわり小麦)やお米、オーツ麦、カラス麦、キビ、蕎麦の実などのさまざまな穀物をミルクや水でとろみが出るまで煮たものです。

IMG_1337

△ロシアではホテルの朝食でもよく見かけます。バターを乗せて、お砂糖や蜂蜜、ヴァレーニエというジャムをかけたりして食べる甘いカーシャは幼い子どもにも好まれます。(関連ブログ☆【モスクワ通信】ジャム<ヴァレーニエ<コンポート

ロシアでは幼稚園や学校給食で、朝ごはんも提供されるのですが、「子ども時代はカーシャばかり食べていたなあ」と思い出を語ってくれるロシア人も。

IMG_1328

△お洒落なカフェのブランチメニューでも、このとおりお好みのカーシャを選ぶようになっていました。手前の黄色いカーシャはキビのカーシャ。右上がお米のカーシャ、そして左上が「マンナヤ・カーシャ」と呼ばれるセモリナ粉を使ったカーシャです。

「マンナヤ・カーシャ」の作り方は、セモリナ粉1に対しミルク10くらいの分量でたっぷりのミルクを温め、セモリナ粉を入れて、ゆっくりとかき混ぜながら煮込みます。ロシアでも「ミルクが逃げた(Молоко убежало)」と表現したりしますが、ミルクはちょっと目を離すと吹きこぼれてしまうのでご注意を。最後にバターを落とし、蓋をして、数分蒸らしたら完成です。

この最後にバターを落とすのがポイントで、「バターでカーシャを台無しにすることはない=カーシャにバターを入れれば入れるほど美味しくなる(К кашу маслом не испортишь)」という言い回しがあるほど。

ソ連時代もロシアでも、忙しい朝に手軽に栄養がとれるカーシャは定番の朝食で、スーパーにはさまざまなレトルト商品も並んでいます。

 

ところで、日本では蕎麦=麺類ですが、ロシアでは脱穀した蕎麦の実を茹でていただくのが主流です。

IMG_1334

△ソ連時代からあるレストランのランチ。

IMG_1335

△蕎麦の実をミルクと煮てお粥状態(蕎麦の実は煮ても粒が感じられるためスープ状態という方が適切?)にして朝食でもいただきますが、一般的にはお湯で煮て、水分が飛ぶまで蒸らし、スプーンで掬うとポロポロと崩れる状態で、こんなふうに朝食以外の食事でもメインの付け合わせとしてよく登場します。

IMG_1314

△ファーストフード店のメニューにある「蕎麦の実のカーシャ」(関連☆【ロシアのファーストフード事情】2017 〜ТЕРЕМОК テレモーク〜)安くて栄養があるので手軽な食事にぴったり。どどんとソーセージやハム&チーズとの組み合わせ!

シンプルな「蕎麦の実のカーシャ」の作り方は、蕎麦の実1カップに対して、お水を2カップほど鍋に入れて、ひとつまみの塩と一緒に煮ます。水気がなくなったら上にバターを乗せ、蓋をして数分間蒸らします。バターが溶け、全体を軽く混ぜたら出来上がり。

IMG_1315

△モスクワのロシア料理店のビーフストロガノフ。付け合わせは「蕎麦の実のカーシャ」です。香りがよく滋味豊かで、病みつきになりそう。

この「蕎麦の実のカーシャ」と「付け合わせの蕎麦の実」の呼び方の厳密な違いはないようで、友人たちに尋ねてみても、感覚的に朝にお粥がわりに食べるならカーシャ、メインの付け合わせとして食べるなら「蕎麦の実」と呼んでいる方が多いようです。「どっちがどっち⁉︎ 頭が混乱する〜!」という私に友人が笑って一言「頭が混乱するとき、ロシア人は、頭の中がカーシャっていうのよ。」

IMG_1316

△付け合わせの「蕎麦の実」には、玉ねぎやきのこ、オリーブオイルを合わせたりして、ボリュームや旨みを加えたものも人気です。

△スーパーの陳列棚にはずらりと蕎麦の実が並んでいます。コロナ禍のステイホーム前に一時期スーパーの食材が買い占め⁉︎とニュースになったときに、がらりとしていたのは蕎麦の実のコーナーでした。長持ちして栄養豊富、しかも安いので、ロシア人にとって欠かせない食材なんでしょうね。

IMG_1336

△日本の朝市で、スーパーフードとして売られていた蕎麦の実。国産のものはロシアで食べていたものよりも少し色が薄い印象です。蕎麦の実は、レジスタントプロテインやレジスタントスターチと呼ばれる体内で消化されにくい成分が含まれており、脂肪やコレステロールの吸収を防いでくれるほか、低GIでグルテンフリーの穀物のため、食後の血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。ミネラル豊富で栄養価が高いため、海外ではダイエット食としても人気があります。

日本でも近年オートミールが人気で、和風に味つけしてご飯がわりに食べるなど工夫されたメニューがたくさん登場していますが、もともとお蕎麦が大好きな日本人ですから、そのうち蕎麦の実のカーシャもブームが来るでしょうか?

△ドイツのグリム兄弟の童話「あまいカーシャ」のロシア語版。

日本では甘いお粥はあまり馴染みがありませんが、ロシアだけでなくヨーロッパでは昔から甘いお粥は朝ごはんの定番のようです。

あなたはいくつご存知?フランスのなかのロシア

日曜日, 8月 25th, 2024

夏のオリンピック・パラリンピックで開催地フランスが注目を集めている2024年8月。

エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ通り、ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館・・・フランスを旅して魅力溢れる観光スポットを訪れたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回のブログでは、定番の旅では満足できない!あなたのために、とっておきの“フランスのなかのロシア”な場所を集めてみました。

 

〜パリ・マドレーヌ駅にロシア民話のステンドグラス!〜

まるで宮殿や美術館のように芸術的で人気の観光名所にもなっているモスクワ地下鉄。どの駅もそれぞれにテーマがありますが、ノヴォスラヴォツカヤ駅のステンドグラスで飾られたホームの美しさは有名で、映画『モスクワは涙を信じない』でのワンシーンも目に焼き付いています。一方、フランスにも、ロシアゆかりのステンドグラスが美しい地下鉄駅があります。

IMG_0247

△パリの地下鉄マドレーヌ駅構内では、ステンドグラス作品『雌鶏リャーバ(Курочка Ряба)』を見ることができます。デザインしたのはベラルーシ生まれの人民芸術家イヴァン・ルベンニコフで、モスクワの地下鉄マヤコフスカヤ駅やスラビャンスキー・ブリバール駅などを手がけました。

IMG_0248

△総重量は約2.5トン、大きさは約6×10メートル。ガラス部分はウラジーミル地方のグシ=フルスタリヌィの職人たちの手によって制作されました。(→関連ブログ☆モスクワ通信『クリスタル・ガラスの里グシ=フルスタリヌイの世にも美しい聖堂ガラス博物館!』)ロシア正教会の玉ねぎ屋根や十字架、サモワール、クレムリンの赤い星、マレーヴィチの『黒い正方形』などソ連&ロシアのモチーフが点在しています。

IMG_0251

△民話『雌鶏リャーバ』は雌鶏が金の卵を産むが、最後にはちいさなネズミが割ってしまうというお話。ルベンニコフはインタビューのなかで、フランスを象徴するモチーフのひとつにガリア雄鶏があり、このふたつの鶏を関連づけてみることから着想を得たと話しています。

IMG_0249 IMG_0250

△2008年にモスクワ地下鉄からパリ地下鉄へ寄贈されたことが記されています。

IMG_0279 b1de88b9-b4b6-4c5c-81d1-ff584d291202

△説明パネルによると、2007年にはフランス地下鉄からモスクワ地下鉄へ、フランスの建築家エクトル・ギマールの優美なアール・ヌーヴォー調デザインのエントランス装飾が贈られました。写真左はモスクワのヨーロッパ広場(現・ユーラシア広場)にあるキエフスカヤ駅入り口、写真右はパリのモンマルトルにある12号線のアベス駅入り口です。

 

〜アレクサンドル3世橋〜

モスクワ川の美しい橋と観光クルーズも大人気ですが(→関連ブログ☆モスクワ通信『モスクワ川クルーズへご案内!』 )、フランス・パリを流れるセーヌ川にも、やはりたくさんの美しい橋が架かっていて、クルーズ船が行き交っています。

IMG_0252

△なかでも最も美しい橋とも称されるのはアレクサンドル3世橋。セーヌ河岸の一部としてユネスコ世界文化遺産になっています。

IMG_0254

△この橋は1900年のパリ万博にあわせてロシアから寄贈されました。フランスとロシアの友好に寄与したロシア皇帝アレクサンドル3世の名前がつけられています。

IMG_0253

△天使やペガサスの彫刻やレリーフなどで装飾されています。4本の柱には、芸術と農業と闘争と戦争をモチーフにした女神像が建っています。今回のパリ五輪ではトライアスロン競技などで使用されたようです。

 

〜パリ・オペラ座のシャガールの天井画とシャトレ座〜

モスクワのボリショイ劇場の美しい天井画とそこに描かれた女神の謎については以前ご紹介しましたが(→関連ブログ☆モスクワ通信『改装後のボリショイ劇場本館』をご紹介!)、パリのオペラ座でも素晴らしい天井画を見ることができます。

IMG_0255

IMG_0256

△豊かな色合いのバレエとオペラ作品に、パリの風景が溶け合った詩情あふれる大きな天井画は、まさに『夢の花束』というタイトルが示すとおり、シャガールから私たちへの贈り物です。今にも音楽が聞こえ、踊りだしそう・・・!1964年9月23日に完成した、シャガール78歳の作品です。

IMG_0257

△1875年に完成したオペラ座(ガルニエ宮)は入場券を購入して自由に見学できるほか、“オペラ座の怪人“をテーマにした演劇仕立てのツアーも人気でした。

一方、フランス最古の劇場のひとつであるシャトレ座では、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス(Ballets Russes ロシア・バレエ団)が1909年に旗揚げ、パリを中心に一大ブームを巻き起こしました。また、シャンゼリゼ劇場では、ストラヴィンスキーのバレエ『春の祭典』の初演が行われ、あまりの前衛性で世界を震撼させました。

 

〜シャガールも!レーニンも!パリ老舗カフェのラ・ロトンド〜

IMG_0258

△1903年創業の老舗カフェ、ラ・ロトンド(La Rotonde)。ピカソ、モディリアニ、ドビュッシー、コクトー、シャガール・・・!多くの作家や芸術家たちがここに集いました。トロツキーやレーニンといった亡命ロシア人政治家たちのたまり場でもあったそうです。

IMG_0259

△シックで洒落た、赤の空間!

街歩きの途中でひと休み、天才芸術家たちがこよなく愛したカフェで美味しいカフェオレでもいかがでしょうか。

 

〜クスミティー 150周年!〜

ロシア生まれ、フランス育ちの紅茶ブランド、クスミティー。帝政ロシア時代にサンクトペテルブルクで、パーヴェル・クスミチョフ氏が創業し、ロシア国内でも大手の紅茶メーカーに成長するものの、ロシア革命後に一族でパリへ亡命。その後はフランス人オーナーの手によってフランスを代表する紅茶メーカーのひとつになりました。

IMG_0262

△アナスタシア、サンクトペテルブルク、トロイカなどロシア・ブレンドは人気商品です。

IMG_0260 IMG_0261

△2017年の150周年記念商品。ロシアでも、海外ブランドと並んで高級スーパーなどで購入可能ですが、残念ながらモスクワで路面店はみたことがありません。

可愛いパッケージはお土産にもぴったりですね。

 

フランスのなかのロシア〜展覧会の絵に描かれたテュイルリー公園、モネと睡蓮〜

ロシア文化フェスティバルIN JAPANでは7月、作曲家ムソルグスキーの生誕185周年を記念して日本舞踊とバレエのコラボ作品『展覧会の絵』が上演されました!この組曲は、親友ガルトマンの遺作展からインスピレーションを得て作曲された親友に捧げる作品といわれています。プロムナードと呼ばれる間奏がそれぞれの曲をつなぎ、まるで、展覧会の部屋をひとつひとつ巡りながら、親友との日々に想いを馳せるような展開になっています。

IMG_0263

△その『展覧会の絵』の第3曲に、パリのテュイルリー公園が登場します。ガルトマン遺作展の作品のなかにこのテュイルリー公園で遊んだり喧嘩したりする子どもたちの様子を描いた作品があったと言われています。当時は約400点も展示されたという遺作の多くを今は確認することが叶いません。ムソルグスキーの自筆楽譜には「遊びのあとの子供たちのけんか」と記されているそうです。

IMG_0264

△さてテュイルリー公園には、印象派の画家クロード・モネの連作『睡蓮』を展示するために作られたオランジュリー美術館があります。「睡蓮の間」と呼ばれる2つの展示室はゆったりとした楕円形で、ぐるりと連作に抱かれて、まるで睡蓮の浮かぶ池のほとりに佇んでいるような気分に。人生でたくさんの睡蓮を描いたモネのこの晩年の大連作は、自身の死後にという約束で寄贈されたもの。オランジュリー(温室)を利用して自然光の差し込む空間での展示にこだわったのだそうです。

さて、せっかくですからモネの絵画で睡蓮を見たら、郊外ジヴェルニーにあるモネの庭へ、本物の睡蓮を見に行ってみましょう!

IMG_0266

△さすが印象派の巨匠!なんて可愛らしいモネの家。壁にたくさんの絵が飾られたアトリエや、明るい黄色のダイニングルーム、水色のキッチン・・・美しいパステルカラーが居心地よく調和して、訪れる人を温かく包み込んでくれます。また、部屋のあちらこちらに浮世絵が飾られていました。

IMG_0265

△造園師でもあったモネ自身が人生をかけて造り上げた理想の庭は、まるで彼の絵そのもののような素晴らしさ!日本にもとても興味を持っていたモネらしく、太鼓橋や竹林、もみじなど和を感じさせる部分も。そこからか日傘をさしたカミーユ夫人と息子さんの声までが聞こえてきそうです。その美しさは、間違いなく人生で目にしたなかで最も美しい風景のひとつでした。

なお、モスクワのプーシキン美術館でもモネの『白い睡蓮』を楽しむことができます。

 

番外編

〜パリにも!?カフェ・プーシキン〜

IMG_0267

△ロシア・モスクワで最も人気のあるカフェ・プーシキンが、実はフランス・パリにもある!というのは、以前ブログでご紹介しました。(→関連ブログ☆モスクワ通信『フランスにも!? カフェ・プーシキン』)残念ながら現在は閉業してしまったようですが、素敵な店内、メニューの様子をご覧ください。

IMG_0268 IMG_0269

△モーニングのブリヌイ・セット。スメタナとサーモン、たっぷりのホイップクリームと蜂蜜やジャムの小瓶

IMG_0270

IMG_0271

△サモワールのある美しい書斎風

IMG_0272

△ロシア式アフタヌーンティーもありました。

IMG_0274 IMG_0275

△カフェ・プーシキンとキリル文字で書かれたプリャニク(ロシアの伝統的なジンジャーブレッド)や、モスクワのカフェ・プーシキンと同じトリョーシカ・ケーキなどが味わえました。

 

新しい視点で街を探索してみたら、興味深い夏休みの自由研究が完成しそうですね。

ロシアでしか食べられない!?ロシアな味のアイスクリーム

水曜日, 7月 24th, 2024

夏本番!ロシアの定番アイスクリームをご紹介した前回にひきつづき、今回はロシアでしか食べられない⁉︎ユニークなアイスクリームをご紹介していきます。

【ロシアならではの味】

IMG_8943 IMG_8944

△ロシアの定番人気スイーツ、“鳥のミルク”味!

この世には存在しないはずの“鳥のミルク”というネーミングは、この世には存在しないほど美味しい!ということで、呼ばれるようになりました。(関連ブログ☆【モスクワ通信】鳥のミルク?チョコレートのじゃがいも?ロシアの定番人気ケーキを一挙ご紹介!〜前編〜

IMG_8945 IMG_8947

△夏といえば!スイカ×メロン味

楕円形の大きなスイカとメロンを売る屋台は、モスクワの街角で夏の風物詩。日本のスイカバーのようなチョコレートの種はありませんが、スイカアイスのなかにメロンの果肉が入っていて、こちらもなかなか美味しい!

IMG_8948 IMG_8949 IMG_9023

△ロシアでは、ジュースやガム、シャンプーや洗剤などにもスイカあるいはスイカ×メロンのフレーバーが人気でよく見かけます。

IMG_8950 IMG_8951

△真っ黒!竹墨味

チョコレートでコーティングされた竹墨の黒いアイスクリームコーンのなかには真っ黒のブルーベリーソース!食べ終わるとお歯黒のようにお口も真っ黒に。

IMG_8953

△スーパーでは、カラフルでお洒落なパッケージのロシア製ジェラートを発見!アルタイ地方の蜂蜜入りシーバックソーン味やホワイトチョコ入りのハルヴァ味などロシアらしい味もありました。

IMG_9011 IMG_9013

△(左)ベリーの一種でビタミンたっぷり!夏はジュースに、冬はフルーツティーにとロシアで愛されているシーバックソーンについては、ぜひ今後のブログでご紹介できたらと思っています。(右)ナッツ類とお砂糖で出来たハルヴァは、昔から愛されているお菓子のひとつ。ロシア語通訳・エッセイストとして活躍された故・米原万里さんの名著『旅行者の食卓』のなかでも、世にも美味しい忘れられない味として紹介されています。

 

【人気アイスクリームチェーン店のロシアな味】

IMG_8954

△コロナ前2020年頃、フードコートのバスキン・ロビンス(サーティワン・アイスクリーム)で見つけた、ロシアでしか味わえないお味もご紹介しましょう。

IMG_8955 IMG_9016

△皇帝アレクサンドル2世のために造られた王室御用達スパークリング・ワイン『アブラウ・ドュルソー』のフレーバー。老舗ワイナリーは温暖な気候の黒海沿岸にあります。

IMG_8956 IMG_8958

△ロシアの人気アニメ『フィクシキ』のフレーバー。主人公のネジの家族と一緒に、さまざまな電化製品や器具などの内部や構造を冒険しながらその仕組みや役割を楽しく学ぶことができます。2010年12月から、テレビ放映が開始され、 原作はチェブラーシカでお馴染みのウスペンスキー氏す。

 

【近年のロシアはヘルシー志向】

IMG_8965

△お砂糖が貴重だったソ連時代、たっぷりのお砂糖を使った甘いお菓子は最高のおもてなしでしたが、そのなごりなのか、日本に比べてロシアのお菓子は全般的にとっても甘いものが多いです。ところが近年、健康志向のお菓子が注目されています。写真は、ノンシュガーのバニラ味、バナナ味、チョコレート味。プロテイン入りや80キロカロリーなどの表示も。

IMG_8964 IMG_8963

△特に子ども向けのコーナーには、お砂糖控えめや添加物ゼロの表記が増えました。こちらの虹アイスは、ビーツのピンク色や人参のカロチンを使用した黄色、海藻スピルリナから抽出された水色、野菜のクロロフィル+ウコンの緑色など着色料のかわりに自然の食材を使っています。

【日本人気!抹茶味と餅アイス】

IMG_8969 IMG_8970

△日本ブームがきっかけでロシアにも広まった抹茶味!また、薄い求肥の中にアイスクリームが入っている餅アイスも日本食レストランのみならずスーパーマーケットでも売られているほどの人気ぶり。とろけるようななめらかさは日本が圧倒的に上手ですが、意外な味のバリエーションはロシアの方が豊富かも!?

IMG_8972 IMG_8971

△おまけ:ユニークな形といえば、まるでバターみたいに包まれた形のアイスクリームは定番スタイル。

IMG_8975 2 IMG_8974

△ソ連の詩人で数多くの児童文学が子どもたちに愛されつづけているサムイル・マルシャークの『アイスクリーム』は日本でも出版されて(マルシャーク文、レーベデフ絵、うちだりさこ訳、岩波書店)、現在は図書館で読むことができます。箱車を押してやってくるアイスクリーム屋さんが、長いさじですくって、まるいウェーファーに挟んでくれるアイスクリームは、いちご味にオレンジ味、パイン味!この作品が描かれた1925年頃には、モスクワの街にこんなアイスクリームを食べるモスクワっ子たちで溢れていたのでしょうか。

冷たいアイスクリームを食べて、暑い夏を元気に乗り切りたいですね。食べ過ぎにはくれぐれもご注意を・・・!

ロシアで食べたい!アイスクリーム定番3選&面白アイス大集合

火曜日, 6月 25th, 2024

初夏の街中にたくさんのアイスクリーム屋台を見かける季節です。

今回のブログでは、アイスクリームの美味しいロシアで昔から愛されているアイスや珍しいアイスで話題のスポットなどをまとめてみました。

【定番アイス3選!スタカンチク&エスキモー&ラジョック】

o0400035312406525455

△ファミリーに大人気!週末のモスクワ動物園の近くではアイスクリームの行列が。

 

ロシアでは昔から、このコップ型のアイス「スタカンチク」が人気です。

スタカンはロシア語でコップという意味。このアイスはコップ型のコーンが特徴で、愛情をこめて“コップちゃん” と呼んでいます。なかに入っているクリームは、こちらもロシア定番のプロムビール(生クリーム)味!ミルクともバニラともちょっと違う濃厚さが魅力です。

o0400030012406525456

△ほかにもよくあるのは、クリーム・ブリュレ味、チョコレート味、ストロベリー味やブルーベリー味、ピスタチオ味など。

IMG_8246

△季節やイベントごとに楽しいデコレーションで楽しませてくれる国営百貨店グムの噴水広場も、6月には巨大アイスクリームが出現してイベントも開催されます。

IMG_89321-600x450 IMG_8914-450x600

△以前のブログで、出来立てのスタカンチクを食べることができる天空のアイスクリーム工場もご紹介しました。(関連☆モスクワ通信『食べ放題!天空のアイスクリーム工場がある展望台PANORAMA360』

IMG_8251 IMG_5ABFDDB04E48-1

△こちらも定番人気「エスキモー」は、チョコレートでコーティングされた棒つきアイス。2000年頃からショッピングモール内などで人気になったお店 «O! эскимо »(オー!エスキモー)では、目の前でエスキモーにお好みのとろけるチョコレートをコーティングしてくれます。

△あの『チェブラーシカ』のお誕生日の歌のなかでも、“プレゼントに500個のエスキモー“という歌詞が出てきます。

IMG_8261

△傑作絵画とのコラボによるエスキモー。

IMG_8263 2

△ほかにも「ラジョック」と呼ばれる三角コーンの角形アイスも親しまれています。こちらは、子ども向けのTVアニメ «Три Богатыря »(3勇者)のキャラクターが描かれたもの。

IMG_8239 IMG_8240

△モスクワの街角でよく見かけるアイスクリームのキオスクでは、「スタカンチク」も「エスキモー」も「ラジョック」も、さまざまな種類があります。

 

【モスクワで話題の面白アイスクリーム、大集合!】

IMG_8254 IMG_8252

△まずは、ロシアの老舗ブランド«чистая линия»(チスタヤ・リニヤ)のアイスクリーム専門カフェは、クレムリンと赤の広場からのびるモスクワの目抜通りトヴェルスカヤ通りにあります。迷ってしまうほどの豊富な種類!なかには、ロシア語でも「Вата(ワタ)」と呼ぶ綿あめ味や生キャラメルのようなロシアのお菓子「Коровка(コロフカ)」味なども。お好みの味のアイスクリームを選んでコーンやカップでテイクアウトして、アイスクリームを舐めながらトヴェルスカヤ通りをお散歩する方も多いのですが、今日はシェフの一押しメニューに挑戦!

IMG_8253 IMG_8238

△店員さんが目の前でフタを開けるとドライアイスの煙の中からアイスクリームが・・・!そしてなんと陶器でなくホワイトチョコレートで出来たカップに入ったベリーパフェ!シェフのアイディアが詰まっています。

IMG_8267 2

△2020年頃に流行したのは、おしゃべりロボットが作ってくれるアイスクリーム!お金を入れると自動的にロボットアームが動きだし、カップにアイスを入れてくれます。こちらはショッピングモールのアヴィアパルクの最上階、キッザニアの目の前にあったので、「こんにちは!アイスはいかが?」の声に誘われてたくさんの子どもたちに囲まれていました。

IMG_9925

△モスクワ市民の憩いの場のひとつゴーリキー・パークで見つけたのは、ロシアの詩人マヤコフスキーの頭像アイス!ほかにもスターウォーズ、ミッキーマウス、ジェイソンにジャッキーに、チェ・ゲバラにマリリンモンロー!?ゴーリキー記念の公園ですが、ロシアの作家ゴーリキーはいないようですね。ちなみにマヤコフスキーはツルコケモモ味のシャーベットです。

IMG_8236 IMG_8235

△こちらも大流行したロールアイスクリーム «ЛЁД ‘n’ ROLL»(リョットゥンロール)

好きなフルーツを2、3種類選び、冷たい鉄板の上にアイスクリームと一緒にを流し込むと、両手に持ったへらで手早くつぶしながら混ぜます。よく混ざったら鉄板に押し付けるようにして薄く伸ばし、一列ずつ、へらで上手にくるくると巻いていきます。カップに刺すように立てて完成したら、なんだかばらの花束みたい。

IMG_8231 2 IMG_8269

△ «BLACK STAR BURGER »では、かき氷、アイスクリーム、フルーツ、焼き菓子、マシュマロ、ソースなど・・・カラフルにたっぷりと乗って雪崩の起きそうなアイスの雪山を、黒い手袋をはめて手づかみで食べるスタイルが当時インスタグラムで話題でした。

IMG_8249 IMG_8255

△ザリャージエでみつけた自動販売機で購入できるスタカンチク!

涼しげな «Русская Арктика »(ロシアの北極)味、同じく棒付きアイスのエスキモーには «Подмосковные вечера »(モスクワ郊外の夕べ)味などユニークな名前がついていました。(関連☆【モスクワ通信】現在進行形のモスクワ観光スポット!ザリャージエ

 

次回はロシアならではのユニークな味のアイスクリームをご紹介しますので、どうぞお楽しみに!

 

五感で味わう!ライラック満開のモスクワ散歩

金曜日, 5月 24th, 2024

日が長くなり、生き生きと緑が生い茂って夜鳴きウグイスの声が響き始める初夏。どこからともなく妖しく甘やかな香りが漂ってきます。白色から紫色へのグラデーションが美しいライラック(Сирень)の花がモスクワの街を彩り、そよ風に吹かれて輝く白樺の葉と爽やかに踊ったり、宵闇に溶けて幻想的に映えたり・・・モスクワの最も美しい季節のひとつです。

IMG_6693

IMG_7223

△ボリショイ劇場前もライラック満開!

△ラフマニノフ作曲『ライラック(Сирень)』は、ロシア文化フェスティバルのコンサートでも人気のある曲。こちらは貴重なラフマニノフ自身の演奏です。

movie

ラフマニノフの故郷イワノヴォの家の周りもライラックの美しい場所で、ラフマニノフの人生を描いたパーヴェル・ルンギン監督の映画『ラフマニノフ ある愛の調べ(原題はВетка сирени(ライラックの枝)』でもライラックの花は重要なモチーフになっていました。

△こちらはラフマニノフ作曲エカテリーナ・ベケトワ作詞のロシア歌曲『ライラック(Сирень)』エレーナ・オブラスツォワの歌声でどうぞ。

ロシアの芸術家たちを魅了するライラックは、音楽だけでなく絵画にも描かれています。

siren

△ボリス・クストージエフ『ライラック』

uploads7image044

△ミハイル・ヴルーベリ『ライラック』

IMG_7207 IMG_7289

△この季節にぴったり!ライラックが描かれたショップバックやポスター。

IMG_1589

△ロシアの老舗香水専門店ノーヴァヤ・ザリャー(Новая Заря  新しい夜明け)のライラックの香りシリーズ

IMG_7916

△スーパーマーケットの5月号冊子の特集は、卒業式。9月に入学式&新学期がはじまるロシアの学校では、ちょうど年度末を迎えています。入学式では最初の鐘を鳴らす儀式があるのですが、卒業式なので最後の鐘の音と書かれています。卒業式を祝うおすすめのケーキと一緒に満開のライラック。

ところでライラックの花びらは4枚ですが、“もし5枚の花びらを見つけたらその花を食べると幸せになれる”という言い伝えがロシアににはあるそうです。「え!?食べるの!?」と驚く私に友人が一言「幸せのためならね。」・・・四葉のクローバー伝説にもすこし似ていますね。

ライラックの花びらを味わってみたいというあなたにはこちら。

IMG_9546

△ロシアの昔ながらのお菓子パスチラのお店では、この時期限定!ライラックの花の砂糖漬けが飾られたパスチラも購入できます。( 過去関連ブログ☆モスクワ通信『乙女心をくすぐる町コロムナ ドストエフスキーも愛したお菓子!パスチラ博物館』

△春の花いっぱいのマトリョーシカのように、ライラックの花束を抱えている方も見かけます。

見て聴いて、香りや味で、手で触れて心で感じて・・・まさに五感で楽しめるロシアのライラック!5枚目の花びらを探しながら初夏のライラック散歩に出かけたいものです。

ロシアでもやっぱり春は桜?

火曜日, 4月 30th, 2024

サクラサク春!桜と言えばやっぱり日本ですが・・・ロシアでも春になると桜の一種であるチェリョームハ(Черёмуха)が咲きます。4月下旬〜5月上旬にかけて、白い可憐な花がふんわりと咲きほこる美しさは、若草の草原に映えてなんとも爽やか。 以前ブログで、モスクワでも日本の桜が楽しめる場所をご紹介しましたが(過去関連ブログ☆モスクワ通信『日本庭園の桜、満開!』)、ロシアの桜もいいものですね。

IMG_6370

IMG_6371

△こちらは、チェーホフの戯曲と同じ”桜の園”と名付けられたモスクワ北部の公園の散歩道。 この頃から明るい時間帯もぐんぐん長くなっていきます。4月後半のある日、日の出は4時50分、日の入りは20時3分でした。そして日本の鶯とはまた違う美声を響かせる夜鳴きウグイスの声が楽しめるようになります。陽射しも強くなり、真っ青な空をみあげると、ふわふわとポプラの綿毛が飛んでいたりも。

IMG_6372

△こちらは春を味わうチェリョームハのケーキ。最近は都心部のケーキ屋さんではあまり見かけませんが、昔はよく家庭で作られていたそうで、友人は“ソ連時代の懐かしいおばあちゃんの家の味”と話していました。茶色のスポンジ生地には混ぜ込まれたチェリョームハのぷつぷつとした食感があり、まわりは花のような真っ白なクリームに覆われています。

IMG_6373 IMG_6374

△スーパーに売られていたチェリョームハ粉の箱には、もちろんチェリョームハ・ケーキのレシピが載っていました。

1024px-Петров-Водкин_-_Черёмуха_в_стакане_(1932)

△その美しさはロシアの芸術家たちを惹きつけ、絵画にもよく描かれています。サンクトペテルブルグのロシア美術館にあるペトロフ・ヴォドキンの絵画『グラスに活けたチェリョームハ(Черёмуха в стакане)』 さて、“春は桜”のイメージはロシアでも定着してきているのか、モスクワではさまざまな場所で桜をイメージした演出も定番になってきました。

IMG_6379

△マヤコスフカヤ駅前。夜にはライトアップされます。

IMG_6380

 

△新アルバート通り。よくみると枝には白い鳥かごや小鳥を発見できたりも。

IMG_6378

△旧アルバート通り。桜の木の下は人気スポット!

IMG_6376

△もはや春恒例!桜の木でデコレーションされたグム百貨店の噴水。こんなふうに街中もショッピングモールのなかも、とにかく桜のディスプレイでいっぱいです。

IMG_6377

△なんと満開の桜の木をモチーフにしたロシア製のポストカードも発見!

「ああ、いつか日本の桜を見に行ってみたいものだわ!日本の桜はこんな感じなの?」モスクワの桜デコレーションでお花見しながらロシア人の友人に質問されましたが・・・はかなく繊細な日本の桜に比べて、華やかでダイナミック!やっぱりこれはロシア版の桜、ですよね。

春到来!ロシアのお花屋さん事情

水曜日, 3月 27th, 2024

都内でも待ちに待った桜の開花宣言!思いっきり春のお花を楽しめる季節がやってきました。

まだまだ寒いロシアでもひと足早く、街が春のお花でいっぱいになる日といえば、女性に花を贈る3月8日の国際婦人デーです。

IMG_4855

△国際婦人デーのアエロフロート機内では、女性たちに1本ずつバラが手渡される粋な演出

 

優しそうな男性の隣で1本のバラの花を手に歩く幸せそうな女性。
地下道の入り口には、ダーチャから摘んできた野花でお手製のブーケを売るおばあさん。
お目当ての女優にあげるのか、大きな花束を抱えて劇場へ急ぐ親子。
街にはいつも、花があります。

IMG_5490 IMG_5489

ソ連時代から、お祝いといえば「シャンパン・チョコレート・バラの花」は人気3点セット。

けれどそんな特別の日だけでなく、ちょっとしたデートや待ち合わせでも、さりげなく手に花を持って立っている男性が多いロシアです。

IMG_5491

△さて、一番人気のバラ以外によく花束にアレンジされるのは・・・なんと菊の花!

日本ではお彼岸やお盆など墓前に供える花としてイメージされがちですが、ロシアではバラと菊の組み合わせはもちろん、さまざまな色や種類の菊が主役の花束もあります。

では、ロシアで花束に関するエチケットといえば?

花の本数にはご注意あれ。偶数本はお葬式と決まっているんですよ。

 

【24時間営業のモスクワの花屋さんへ】

IMG_0434

24時間営業の花屋さんもよく見かけます。色あいや値段、ブーケやアレンジなどお好みで選ぶことが出来るスタイルは日本のお花屋さんと一緒ですね。

IMG_0431

△レジでお会計し、お好みのリボンやペーパーでラッピングしてもらいます。

IMG_0429

IMG_5495

△レストランなど花束をお渡しした外出先で、そのまま飾ることができるプラスチックのお水入り花瓶風のラッピングも人気でした。

 

【花市場に行ってみよう!】

一方、たくさんの花を購入するときにお得で便利なのは花市場。一年中、新鮮で綺麗な花で溢れています。

IMG_7048

△たくさんの小さなお店に分かれているので、お気に入りのお店を見つけて購入します。野菜や果物など食品もありますね。

IMG_5363

IMG_7055

都心の花屋さんでお花を1本購入する値段で、市場では新鮮な1束を購入できることも。

IMG_7064

△また、街のお花屋さんでは見かけないような種類の草花、大きな枝ものや実などにも出逢えます。

IMG_7063 IMG_7066

△アレンジメントもユニーク!こちらはビニール傘を逆さまにしたアレンジと、人気の動物アレンジ。

IMG_5494

△ラッピングやお値段なども、市場ですから値引き交渉で相談に乗ってもらえます。美人なお友達と歩いていたら、歩いているだけであっちでもこっちでも男性が売り物のお花をプレゼントしてくれるので、何も買っていないのに出口で花束が完成してしまったことも。

 

【よく見かける!お花の自動販売機】

“日本ではコンビニ、ロシアでは花屋” そのくらいモスクワの街中にはお花屋さんがあります。そして、空港や劇場にはお花の自動販売機も見かけます。

IMG_3159

△ロシアの飛び地カリーニングラードの空港にて

IMG_2453

△モスクワの空港にて

78aa2b9bc215e407b98e8f3205a01620

△トヴェルスカヤ通りの雑貨屋さんにて

IMG_5554 IMG_5556

△大型スーパーの入り口では、ドライフラワーの自動販売機まで見かけました。

 

さりげない1本のバラが、ちょっとしたプレゼントの定番になっているロシア。
大きな花束を贈るのには、その大きさ分の勇気やタイミングが必要でも、1本のバラなら誰でも気軽にいつでも手軽に気持ちを伝えることができます。
美しくラッピングされた大きなブーケもいいですが、まっすぐに手渡されるたった1本のバラも、またいいものです。