あなたはいくつご存知?フランスのなかのロシア
By russian-festival. Filed in いちのへ友里 |夏のオリンピック・パラリンピックで開催地フランスが注目を集めている2024年8月。
エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ通り、ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館・・・フランスを旅して魅力溢れる観光スポットを訪れたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回のブログでは、定番の旅では満足できない!あなたのために、とっておきの“フランスのなかのロシア”な場所を集めてみました。
☆〜パリ・マドレーヌ駅にロシア民話のステンドグラス!〜
まるで宮殿や美術館のように芸術的で人気の観光名所にもなっているモスクワ地下鉄。どの駅もそれぞれにテーマがありますが、ノヴォスラヴォツカヤ駅のステンドグラスで飾られたホームの美しさは有名で、映画『モスクワは涙を信じない』でのワンシーンも目に焼き付いています。一方、フランスにも、ロシアゆかりのステンドグラスが美しい地下鉄駅があります。
△パリの地下鉄マドレーヌ駅構内では、ステンドグラス作品『雌鶏リャーバ(Курочка Ряба)』を見ることができます。デザインしたのはベラルーシ生まれの人民芸術家イヴァン・ルベンニコフで、モスクワの地下鉄マヤコフスカヤ駅やスラビャンスキー・ブリバール駅などを手がけました。
△総重量は約2.5トン、大きさは約6×10メートル。ガラス部分はウラジーミル地方のグシ=フルスタリヌィの職人たちの手によって制作されました。(→関連ブログ☆モスクワ通信『クリスタル・ガラスの里グシ=フルスタリヌイの世にも美しい聖堂ガラス博物館!』)ロシア正教会の玉ねぎ屋根や十字架、サモワール、クレムリンの赤い星、マレーヴィチの『黒い正方形』などソ連&ロシアのモチーフが点在しています。
△民話『雌鶏リャーバ』は雌鶏が金の卵を産むが、最後にはちいさなネズミが割ってしまうというお話。ルベンニコフはインタビューのなかで、フランスを象徴するモチーフのひとつにガリア雄鶏があり、このふたつの鶏を関連づけてみることから着想を得たと話しています。
△2008年にモスクワ地下鉄からパリ地下鉄へ寄贈されたことが記されています。
△説明パネルによると、2007年にはフランス地下鉄からモスクワ地下鉄へ、フランスの建築家エクトル・ギマールの優美なアール・ヌーヴォー調デザインのエントランス装飾が贈られました。写真左はモスクワのヨーロッパ広場(現・ユーラシア広場)にあるキエフスカヤ駅入り口、写真右はパリのモンマルトルにある12号線のアベス駅入り口です。
☆〜アレクサンドル3世橋〜
モスクワ川の美しい橋と観光クルーズも大人気ですが(→関連ブログ☆モスクワ通信『モスクワ川クルーズへご案内!』 )、フランス・パリを流れるセーヌ川にも、やはりたくさんの美しい橋が架かっていて、クルーズ船が行き交っています。
△なかでも最も美しい橋とも称されるのはアレクサンドル3世橋。セーヌ河岸の一部としてユネスコ世界文化遺産になっています。
△この橋は1900年のパリ万博にあわせてロシアから寄贈されました。フランスとロシアの友好に寄与したロシア皇帝アレクサンドル3世の名前がつけられています。
△天使やペガサスの彫刻やレリーフなどで装飾されています。4本の柱には、芸術と農業と闘争と戦争をモチーフにした女神像が建っています。今回のパリ五輪ではトライアスロン競技などで使用されたようです。
☆〜パリ・オペラ座のシャガールの天井画とシャトレ座〜
モスクワのボリショイ劇場の美しい天井画とそこに描かれた女神の謎については以前ご紹介しましたが(→関連ブログ☆モスクワ通信『改装後のボリショイ劇場本館』をご紹介!)、パリのオペラ座でも素晴らしい天井画を見ることができます。
△豊かな色合いのバレエとオペラ作品に、パリの風景が溶け合った詩情あふれる大きな天井画は、まさに『夢の花束』というタイトルが示すとおり、シャガールから私たちへの贈り物です。今にも音楽が聞こえ、踊りだしそう・・・!1964年9月23日に完成した、シャガール78歳の作品です。
△1875年に完成したオペラ座(ガルニエ宮)は入場券を購入して自由に見学できるほか、“オペラ座の怪人“をテーマにした演劇仕立てのツアーも人気でした。
一方、フランス最古の劇場のひとつであるシャトレ座では、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス(Ballets Russes ロシア・バレエ団)が1909年に旗揚げ、パリを中心に一大ブームを巻き起こしました。また、シャンゼリゼ劇場では、ストラヴィンスキーのバレエ『春の祭典』の初演が行われ、あまりの前衛性で世界を震撼させました。
☆〜シャガールも!レーニンも!パリ老舗カフェのラ・ロトンド〜
△1903年創業の老舗カフェ、ラ・ロトンド(La Rotonde)。ピカソ、モディリアニ、ドビュッシー、コクトー、シャガール・・・!多くの作家や芸術家たちがここに集いました。トロツキーやレーニンといった亡命ロシア人政治家たちのたまり場でもあったそうです。
△シックで洒落た、赤の空間!
街歩きの途中でひと休み、天才芸術家たちがこよなく愛したカフェで美味しいカフェオレでもいかがでしょうか。
☆〜クスミティー 150周年!〜
ロシア生まれ、フランス育ちの紅茶ブランド、クスミティー。帝政ロシア時代にサンクトペテルブルクで、パーヴェル・クスミチョフ氏が創業し、ロシア国内でも大手の紅茶メーカーに成長するものの、ロシア革命後に一族でパリへ亡命。その後はフランス人オーナーの手によってフランスを代表する紅茶メーカーのひとつになりました。
△アナスタシア、サンクトペテルブルク、トロイカなどロシア・ブレンドは人気商品です。
△2017年の150周年記念商品。ロシアでも、海外ブランドと並んで高級スーパーなどで購入可能ですが、残念ながらモスクワで路面店はみたことがありません。
可愛いパッケージはお土産にもぴったりですね。
☆フランスのなかのロシア〜展覧会の絵に描かれたテュイルリー公園、モネと睡蓮〜
ロシア文化フェスティバルIN JAPANでは7月、作曲家ムソルグスキーの生誕185周年を記念して日本舞踊とバレエのコラボ作品『展覧会の絵』が上演されました!この組曲は、親友ガルトマンの遺作展からインスピレーションを得て作曲された親友に捧げる作品といわれています。プロムナードと呼ばれる間奏がそれぞれの曲をつなぎ、まるで、展覧会の部屋をひとつひとつ巡りながら、親友との日々に想いを馳せるような展開になっています。
△その『展覧会の絵』の第3曲に、パリのテュイルリー公園が登場します。ガルトマン遺作展の作品のなかにこのテュイルリー公園で遊んだり喧嘩したりする子どもたちの様子を描いた作品があったと言われています。当時は約400点も展示されたという遺作の多くを今は確認することが叶いません。ムソルグスキーの自筆楽譜には「遊びのあとの子供たちのけんか」と記されているそうです。
△さてテュイルリー公園には、印象派の画家クロード・モネの連作『睡蓮』を展示するために作られたオランジュリー美術館があります。「睡蓮の間」と呼ばれる2つの展示室はゆったりとした楕円形で、ぐるりと連作に抱かれて、まるで睡蓮の浮かぶ池のほとりに佇んでいるような気分に。人生でたくさんの睡蓮を描いたモネのこの晩年の大連作は、自身の死後にという約束で寄贈されたもの。オランジュリー(温室)を利用して自然光の差し込む空間での展示にこだわったのだそうです。
さて、せっかくですからモネの絵画で睡蓮を見たら、郊外ジヴェルニーにあるモネの庭へ、本物の睡蓮を見に行ってみましょう!
△さすが印象派の巨匠!なんて可愛らしいモネの家。壁にたくさんの絵が飾られたアトリエや、明るい黄色のダイニングルーム、水色のキッチン・・・美しいパステルカラーが居心地よく調和して、訪れる人を温かく包み込んでくれます。また、部屋のあちらこちらに浮世絵が飾られていました。
△造園師でもあったモネ自身が人生をかけて造り上げた理想の庭は、まるで彼の絵そのもののような素晴らしさ!日本にもとても興味を持っていたモネらしく、太鼓橋や竹林、もみじなど和を感じさせる部分も。そこからか日傘をさしたカミーユ夫人と息子さんの声までが聞こえてきそうです。その美しさは、間違いなく人生で目にしたなかで最も美しい風景のひとつでした。
なお、モスクワのプーシキン美術館でもモネの『白い睡蓮』を楽しむことができます。
番外編
☆〜パリにも!?カフェ・プーシキン〜
△ロシア・モスクワで最も人気のあるカフェ・プーシキンが、実はフランス・パリにもある!というのは、以前ブログでご紹介しました。(→関連ブログ☆モスクワ通信『フランスにも!? カフェ・プーシキン』)残念ながら現在は閉業してしまったようですが、素敵な店内、メニューの様子をご覧ください。
△モーニングのブリヌイ・セット。スメタナとサーモン、たっぷりのホイップクリームと蜂蜜やジャムの小瓶
△サモワールのある美しい書斎風
△ロシア式アフタヌーンティーもありました。
△カフェ・プーシキンとキリル文字で書かれたプリャニク(ロシアの伝統的なジンジャーブレッド)や、モスクワのカフェ・プーシキンと同じトリョーシカ・ケーキなどが味わえました。
新しい視点で街を探索してみたら、興味深い夏休みの自由研究が完成しそうですね。