さようなら、ズラブ・ツェレテリ!モスクワで出会う巨匠の人生 前編

By russian-festival. Filed in いちのへ友里  |  
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2025年4月22日、ロシア現代美術界を代表する彫刻家、ズラブ・ツェレテリ氏が91歳でこの世を去りました。ソビエト連邦から現代ロシアへ、その激動の時代を駆け抜け、彼の手から生まれた巨大な彫像群は、ロシア、そして世界各地にそびえ立ちます。圧倒的なスケールと情熱は、私たちの記憶に深く刻まれました。

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モスクワ中心部の救世主ハリストス大聖堂で葬儀が行われ、故郷ジョージア(グルジア)のトビリシでも追悼式が行われました。1980年モスクワ五輪ではチーフアーティストに任命されるなど、ロシア芸術界を象徴する存在でした。生涯で手がけた作品は、なんと5000点以上。「モスクワ中が彼のアトリエのようだ」と言われるほど、街のあちらこちらにその足跡が残されています。

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△1923年、ジョージアのトビリシに生まれたツェレテリは、画家としてキャリアをスタートし、やがて彫刻家、建築家、そして芸術教育者へと多彩な道を歩みました。彼の名を広く知らしめた代表作のひとつは、モスクワ川沿いに立つ高さ約100メートルの『ピョートル大帝像』です。

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△そのほかにも、改修の際にデザインや彫刻を手がけたモスクワ動物園、コスモス・ホテル前のシャルル・ドゴール像など、市内には多くのツェレテリ作品が点在しています。

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△以前ご紹介した『モスクワ噴水コレクション』に登場する噴水のなかにも、彼の手による作品があります。クレムリン近くのマネージ広場で躍動する4頭の馬の噴水や、ニクーリン・サーカス前のクラウンの噴水などです。(関連ブログ☆モスクワ通信『モスクワの宝石箱!夏空にきらめく噴水コレクション』

今回のブログでは、追悼の思いを込めて、モスクワにあるふたつのツェレテリ美術館をご紹介します。

 

ズラブ・ツェレテリ アート・ギャラリー

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△ロシア美術アカデミーの一部として運営され、ツェレテリの絵画や彫刻、ステンドグラスなどが展示されています。

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△この美術館のシンボルともいえる巨大なブロンズ製の『りんご Apple/Яблоко』は、アダムとイヴのりんごをテーマにした作品で、なかに入ることもできます。

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△壁一面のモザイクやレリーフ、所狭しと並ぶ彫刻の数々…!この空間に一歩足を踏み入れると、まるでツェレテリの思考の中に迷い込んだかのような不思議な感覚に包まれます。

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△人気の展示のひとつが「私の同時代人たち」シリーズ。ロシアの著名人のブロンズ肖像やレリーフがずらりと並びます。柔道着姿のプーチン大統領や、

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△伝説的なバス歌手シャリャーピン、吟遊詩人オクジャワ、詩人エセーニン、宇宙飛行士、作家、俳優、バレエダンサー、演出家、音楽家・・・その鋭い観察眼と温かなまなざしで個性を捉えた作品群は見応えがあります。巨匠でありながら、常に「今」と向き合っていた彼の姿勢が、空間全体から感じられます。

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△宗教や歴史、民族神話などをテーマにした作品も多く、ツェレテリらしい力強い色彩と圧倒的スケールで展開されています。

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△ツェレテリがこよなく愛した人物チャーリー・チャップリンをテーマにした作品が数多く展示されています。チャップリンのユーモア、哀愁、正義への姿勢、そしてその表現力と人間性は、ツェレテリの芸術感に重なります。

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△ピョートル大帝像をはじめ巨大モニュメントの縮小版も。

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△そして見逃せないのが、館内に併設されたレストラン「アーティスト・ギャラリー」。

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△ハチャプリと呼ばれるチーズのパンやくるみペーストを巻いたナスの前菜、独特のスパイス香る煮込み料理など、本格的なジョージア料理を楽しめます。

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△どこもかしこも見渡す限り、ツェレテリ作品で埋め尽くされた店内の装飾!パレットをイメージしたメニューも味わいがあります。

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後編では、モスクワにあるもうひとつのツェレテリ美術館と、世界各地や日本で出会える作品に焦点を当てていきます。どうぞお楽しみに!

 

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