ロシアの冬、恋しいものといえば——湯気のたつ熱々の紅茶です。長い冬の間、屋外で開催される年末年始のイベントやお祭りでは、紅茶や蜂蜜酒、そしてフルーツティーで体を温める人たちの姿をよく見かけます。紅茶のまわりには人が集まり、会話が生まれ、心も体も温めながら、長い冬を過ごしていきます。

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△「さあ、お嬢さん、無料だよ。あったまっていきな」たっぷりとお湯をたたえ、もくもくと湯気の立つ大きなサモワール(ロシア式湯沸かし器)は、見ているだけであたたかそう!

ロシアには、「Самовар кипит — разговор не молчит(サモワールが沸いていれば、会話は止まらない)」という表現があります。冬の長いロシアでは、あたたかい飲み物を囲む時間が、人と人をつなぎます。

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△「紅茶に浸して食べると、最高なんだよ」紅茶のお供に欠かせないのが、スーシキと呼ばれるドーナツ型の乾パンのようなお菓子です。

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△カリカリと硬い食感で、直径約3〜5cmのスーシキ、少し大きく、程よい硬さのバランキ、さらに大きく、パン感覚で食べられるブーブリク。また、プレーン味以外に、胡麻やケシの実のついたものや、ほんのり甘いバニラ味などもあります。

紐に通してサモワールに吊るしている光景もよく見かけますし、ベビーカーに乗った赤ちゃんが、歯固めがわりに手に持って舐めている姿に出会うこともあります。

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△甘党のロシア人たち。前に並んでいたおじさんは、角砂糖を5つ紅茶に入れ、さらにひとつはかじりながら、もうひとつは口に含んで、紅茶でゆっくり溶かしながら、美味しそうに紅茶を飲んでいます。肌寒い空の下、かじかんだ指先でカップを持ち、ふうふうと息を吹きかけながら一口飲む。甘い紅茶が、身体の内側から、心も体もじんわりとあたためてくれます。日本では紅茶は大人の飲み物という印象がありますが、ロシアでは子どもたちも甘い紅茶が大好き。給食にも出る、日常の味です。

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△紙コップの柄が、ロシアのグジェリ陶器の柄でした。

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△お店の店頭で、紅茶を出してくださることも。蜂蜜やヴァレーニエ(果物の形を残して煮込んだジャム)を試食して、気に入ったら、そのまま購入できます。

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△お祭りでは、蜂蜜を発酵させた蜂蜜酒(медовуха)の屋台もよく見かけます。寒さに寄り添ってくれるやさしい甘さは、日本の甘酒とどこか似ていますね。

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△こちらのカウンターでは、夏の間に収穫し、大切に保存してきたハーブや果実を使った温かい飲み物がおすすめとのこと。

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△ロシアの野草でつくる優しいお味のハーブティー”Иван чай(イワン・チャイ)“にお湯を注いでいた店員さんが、「アブレピーハを入れる?ビタミンたっぷり、風邪予防にもおすすめだよ!」と声をかけてくださり、持っていた棒で、実をとんとんとつぶして手渡してくれました。

ロシアで健康や美容に良いとされるアブレピーハ(облепиха)は、グミ科に属する果実で、日本ではサジーやシーバックソーンとも呼ばれています。

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△ビタミンCたっぷりのオレンジ色の実は、実がとても小さく、皮と種がしっかりしていて酸味が強いため、そのまま生で食べる果実というよりも、煮出したり、潰したり、甘みを加えたりとひと手間加えて、ジャムやモルス(ベリー類のジュース)してよく親しまれています。

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△「アブレピーハのお茶」は、乾燥した果実やフレーバーと紅茶の茶葉を合わせて香りを楽しむ、いわゆるフルーツティーとは少し趣が異なります。もちろん、そういう茶葉商品もたくさん売られていますが、ロシアでより一般的に好まれているのは、実をお湯に入れ、軽く潰したり煮出したりして、お好みで甘さを加えながら、果実を煎じる飲み方です。独特の香り、まろやかなこくと酸味が広がり、体の芯からぽかぽかになります。アナウンサーという仕事柄、喉や粘膜にいいのよと勧めてくれる友人もいました。

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△日本ではあまり見かけないこのフルーツですが、ロシアでは冷凍フルーツコーナーにもあり、自宅で気軽に煮出して、蜂蜜や生姜を合わせてフルーツティーが楽しめるほか、

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△ヨーグルトドリンクなどのフレーバーに使われたり、夏も冬もロシア人が大好きなコップ型アイスのスタカンチクにもアブレピーハ味があったり、

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△可愛らしい実が、紙ナプキンなどの柄に描かれることもあります。

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△シベリア発のナチュラルコスメブランドでも、このアブレピーハのシャンプーやハンドクリームは定番人気商品!こちらのブランドは、シベリアの過酷な環境でも生き抜く植物の生命力に注目して商品を展開していますが、まさに、アブレピーハは寒冷地や乾燥地でもたくましく根を張り実をつけ、ビタミンC、E、β-カロテン、鉄分、オメガ脂肪酸などを含んで栄養価も高いため、近年はスーパーフードとしても注目されています。

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△アブレピーハ味のマルメラード(果肉入りのゼリー状の保存菓子)や、

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△アブレピーハ味のパスチラなど、ロシア土産にも。

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△モスクワ大学のなかの茶室『清露庵』では、ダーチャ(ロシアの菜園つき別荘)で穫れたアブレピーハの実、寒天とお砂糖で作ったお干菓子もいただきましたが、抹茶にもよく合いました。

アブレピーハとスーシキ

灰色の空が続くロシアの冬。北国の短い夏をぎゅっと凝縮したようなアブレピーハの鮮やかなオレンジ色は、まるで“冬の太陽”のようで気持ちまで明るく元気になります。大寒を迎え、日本では寒中見舞いを出したり、寒仕込みをしたりする時期ですが、日本でもロシアでも、冬を温める一杯で元気に過ごしたいですね。

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森の民とも言われるロシア人は、きのこが大好き。旬の季節になると、森へきのこ狩りに出かけ、採れたてを味わい、それから保存して、長い冬に備えます。きのこを使った美味しいロシア料理もたくさんあります。

日本のきのこ売り場の定番といえば、しいたけ、舞茸、しめじ、えのき茸、なめこ、エリンギでしょうか?

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△ロシアのスーパーの生鮮食品コーナーでは、実はそれほど多くの種類のきのこは並びません。そのなかで圧倒的な存在感を放つのが、マッシュルーム。日本よりも大きく肉厚で、お値段も手頃です。生でスライスしてサラダに、ポタージュスープに、チーズをかけてグラタン風の料理ジュリエンに。お肉やスメタナ(サワークリーム)と合わせてビーフストロガノフにしたり、ピロシキの具にしたりと、まさに万能選手。以前は、中国市場やアジア食材店でしか見かけなかった日本お馴染みのきのこも、日本食ブームの影響で、モスクワの高級スーパーに『シイタケ』『エリンギ』『エノキ』と、日本語そのままの名前で並んでいたこともありました。

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△充実しているのは、瓶詰めコーナー。ロシア人の友人はこう話します。「きのこはスーパーではほとんど買わないの。旬の時期に森でたくさん採って、あとはダーチャで瓶詰めにしておくのよ。食べたい時は、それを使うの。」(関連☆モスクワ通信『郊外の菜園付きの別荘ダーチャでくつろぐ初夏の一日』

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△市場やお惣菜コーナーには、塩漬けきのこがずらり。つぎつぎに味見させてくれるので、お好みのきのこを量り売りで購入でき、ポルチーニ(Белые грибы)をはじめ、乳茸(Грузди)、ヌメリイグチ(Маслята)など種類も豊富です。「ウォッカには、これがなくちゃね。」隣に並んでいた男性が嬉しそうに教えてくれました。

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△冷凍食品コーナーでは、なめこのようにぬめりのあるナラタケ(Опята)や、黄色が綺麗なアンズタケ(Лисички)など。

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△きのこ味の加工食品も大人気。アンズタケ入りの塗るチーズや、

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△きのこ&スメタナ(サワークリーム)味のポテトチップスは定番中の定番です。

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△ロシアのきのこ料理で、私のおすすめは、きのこのグラタンЖюльен(ジュリエン)。日本でもおなじみのマギーのブイヨンですが、ロシアには「簡単ボルシチ」や「簡単ジュリエン」の素も売られています。

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△軽くて日持ちのする乾燥きのこは、お土産としても人気。戻してパスタやスープに加えると旨味がぎゅっと広がります。なかでも一番人気は、ポルチーニ(Белые грибы)。おとぎ話に出てきそうな、まさにザ・きのこ!の形ですね。

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△こちらはチャーガ(手前)。以前ご紹介しましたが、民間療法ではロシアでも日本でも、さまざまな効用が語られてきました。主に白樺に寄生するきのこで、かつては白樺の栄養分を奪う“白樺の癌”と恐れられていましたが、研究が進むにつれ「幻のきのこ」と呼ばれるようになりました。

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細かく砕いて煮出して飲むほか、最近ではお洒落パッケージのチャーガ茶としてお土産にも人気。癖がなく飲みやすいのも特徴です。(関連☆【モスクワ通信】新型コロナウイルスで再注目!チャーガ茶で免疫力アップ!?

ほかにも、採れたてでなければ食べられず、お店では出会えないベニタケ属のきのこ(Сыроежка)などもあります。まずは、きのこの「かさ」ではなく、「あし」の裏をみて、虫がついていないか確認するのがポイントなのだそう。「小さな頃からママに教わって、森で採っていたから、きのこのことなら任せて!」そう誇らしげに語る友人たちと、きのこシーズンになったら、カゴを手に森へきのこ狩りに出かけたいものです。

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△ところで、ロシアではきのこはモチーフとしても大人気。ケーキの飾りにもきのこをよく見かけますし、

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△ハリネズミときのこの組み合わせも。

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△日本ではあまりないセンスですが、お皿の柄としてきのこが描かれていたり、

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△マトリョーシカや民芸品にもきのこ型やきのこ柄を見かけます。

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△今の季節なら、クリスマスツリーのオーナメントにも。

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△そしてこちらは、日本の子どもたちに愛され続ける、あのきのこ菓子のロシア版⁉︎ 黒と白、2色のきのこが楽しめます。

日本ではほかほかのお鍋に入れる冬野菜や、クリスマスに向けたカラフルなサラダが店頭を彩る季節になりました。それでは今日は、モスクワのスーパーマーケットの青果コーナーを覗いてみましょう。

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△キロ単位の大きな袋で売られているじゃがいも(Картофель)をはじめ、人参(Морковь)、玉ねぎ(Лук)、ニンニク(Чеснок)、生姜(Имбирь)、ブロッコリ(Капуста брокколи)、カリフラワー(Цветная капуста)、アスパラ(Спаржа)、セロリ(Сельдерей)、アボカド(Авокадо)、インゲン(Фасоль)、サヤインゲン(Горошек сладкий)、とうもろこし(Кукуруза)など日本でもお馴染みの野菜がずらりと並びます。

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△こちらはウズベキスタン産のトマト(Помидор)。太陽の恵みをたっぷり浴びたウズベキスタンの野菜は、味が濃く、とっても美味しいのが特徴です。枝付きのものも多く、赤やオレンジ、黄色などカラフルなヴァリエーションも楽しめます。

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△キュウリ(Огурец)は日本よりも小ぶりで太め。Бакинскийなど表面がつるりとしたタイプも人気です。関連☆モスクワ通信『黄金の輪スーズダリの国際キュウリ祭り』

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△葉物野菜(салат)は、苗から育てたものをそのまま販売するスタイルも人気!ハーブの種類も豊富で、雪に閉ざされた長い冬の間には、たっぷりの新鮮ハーブでビタミン補給するロシア人も多いです。ロシア料理に欠かせないディル(Укроп)をはじめ、イタリアンパセリ(Петрушка)、パクチー(Кинза)、ミント(Мята )、レタス(айсберг)、バジル(Базилик)、ルッコラ(Руккола) 、ケール(Кейл)などが並びます。

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△日本ではあまり見かけない野菜では、酸味のあるスープに入れると美味しいスイバ(Щавель)や、昔ながらの緑色の炭酸飲料にも使われるエストラゴン(Эстрагон またはтархун)、コールラビ(Кольраби)、アーティチョーク(Артишоки)やフェンネル(Фенхель)、西洋わさび(Хрен)、ラディッキオ(Радичио)、ロマノ(Романо)、コルン(Корн)なども見かけました。関連☆【モスクワ通信】寒い国だからこそ美味しい!ロシアで味わっていただきたいスープ

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△日本でもジャガイモ&人参&玉ねぎの「カレー用野菜セット」を見かけますが、ロシアの高級スーパーでは当時流行していたトムヤムクン・ミックス、ロシアの夏定番スープのオクローシカ・ミックスなども売られていました。(関連☆ )

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△洗わずそのまま食べられるサラダ用ミックスリーフ(Салатная смесь)には、なんと水菜入りのものも。ロシア語でも「ミズナ(мизуна)」と書かれているので、日本食の影響を感じます。

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△日本が恋しくなる野菜といえば、キャベツ。春先には柔らかな緑のキャベツ(Капуста)も出回りますが、普段は白くずっしりと硬いものが主流です。茹でてスープにすると美味しいのですが、千切りなど生食にはお勧めできません。ちなみに、白菜は「中国のキャベツ (Капуста Китайская)」と呼ばれています。

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△太ネギや大根(こちらも、ロシア語でもダイコン(Дайкон))も、見かけることはありますが、やや小ぶり。一方、細ネギ(Лук зелённый)やハツカダイコン(Редис)は、比較的いつでも手に入ります。

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△ナス(Баклажан)やピーマン(Перец)は、日本とは対照的に大ぶりなものが主流。緑、赤、黄色、オレンジと、どれもパプリカサイズです。大きなズッキーニのようなカバチョク(Кабачок )も、定番野菜のひとつ。

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△ロシアのスーパーに欠かせないのが、ボルシチやサラダに使われるビーツ(Свёкла)。生のものも、茹でたものも並んでいます。ホウレンソウ科の植物なので、実は茎もとても美味しいんです。日本のような立派なホウレンソウが少ないロシアでは、ビーツの茎をホウレンソウ代わりに調理することもありました。食卓が鮮やかに!関連☆モスクワ通信『ロシアで味わいたい!ビーツいろいろ』

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△甘くてホクホクの南瓜やさつまいもは、残念ながら一般的なロシアのスーパーではほとんど見かけません。。

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△日本でお馴染みの栗や南瓜、さつまいも、他にもニラ、青梗菜、かぶ、ゴーヤ、山芋、レンコン、紫蘇、もやし、オクラなどは、中国市場やベトナム市場、また一部のスーパーで購入することができます。新鮮な野菜を求めて、地元の市場へ足を運ぶ人も多いようです。(関連☆【モスクワ通信】あなたはどっち派!?昔ながらの市場から食のテーマパークへ

なお、今回の写真は、品揃えに定評のあるスーパーで撮影したもの。日本のようにいつでも新鮮な食材が揃っているわけではないロシアの普段使いのスーパーでは、季節や日によって、並ぶ野菜の種類や品質がぐっと落ちることもあります。そのため「レシピを考えてから買い物へ」ではなく、「今日はどんな野菜があるかしら?どの野菜が新鮮かしら?」と、スーパーを歩きながら献立を考えるのが日常でした。

そうそう、ロシアに来たばかりの頃、野菜売り場を見て息子が一言。「ロシアなのに“大きなかぶ”はないんだね」……確かに!絵本で見ていたような大きなかぶは、どこを探しても、見当たりませんでした。

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焼き立ての香ばしい香りに誘われて、ついつい立ち寄ってしまう街角ベーカリー。

地下鉄の入り口には、行列のできる小さなパンのキオスク。

スーパーマーケットの棚には見たことのない菓子パンが並びます。

クロワッサンやマフィン、ドーナツなど日本でもお馴染みの菓子パンが並ぶ一方で、
ロシアならではの素朴でどこか懐かしい甘い菓子パンたちが、「おいで」と誘惑してきます。

これまでこの連載では、ロシアを代表する黒パン「ボロディンスキー」の七変化や、伝統的な白パン「カラチ」についてはご紹介してきました。今回は“甘い誘惑”ロシアの菓子パンの世界を歩いてみましょう。

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【トヴォロークを味わう幸せ:ヴァトルーシカとソチニク】

ロシア人の大好きなカッテージチーズ「トヴォローク」。もちろん、菓子パンでもその存在感は主役級。素朴な小麦の香りに、濃くて酸味のあるトヴォロークが広がります。

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△「トヴォローク」をのせた丸いパンのヴァトルーシカ(ватрушка)は、ロシア菓子パン界の王道。ほのかな甘みと酸味、しっとりとしたチーズの層が、焼きたての生地と絶妙にマッチして、まるでチーズケーキがそのままパンに乗っているような味わいです。

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△一方、ソチニク(сочник)は、トヴォロークを生地で半月型に包み込んで焼きあげます。ほろっと崩れるスコーンのような生地と、レアチーズのようなフィリングのバランスが絶妙で、優しい甘さの“ ロシア版スコーン”とも言える存在です。

【ロシアのあんぱん!?ポピーシードのパン】

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△日本では「あんぱん」が話題ですが、ロシア版「あんぱん」にあたるのが、ケシの実(ポピーシード)の餡が入ったパン。ぷつぷつとした食感とごまのような独特の香ばしさがクセになる味で、ねじりパンや渦巻き状など、見た目もさまざまです。日本では主に花屋さんで見かける印象のポピーですが、ロシアの製菓コーナーには、黒いケシの実が売られています。

赤いパッケージはケシの実フィリング、青はトヴォローク入り。旧ソ連時代から愛されてきた味はもちろん、どこか懐かしいレトロなデザインも魅力です。

 

【ジャム&ヴァレーニエを味わう!スロイカ】

以前ご紹介した、ロシアの果実の砂糖煮「ヴァレーニエ」を閉じ込めたのが、パイ生地のスロイカ(слойка)です。

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△スロイカは、パイ生地にりんごやさくらんぼ、ブルーベリーなどのヴァレーニエを挟んで焼き上げます。
パン屋さんの焼き立てサクサクのものがベストですが、パッケージされた菓子パンのしっとりしたものもまた美味しい。地下鉄の入り口に並ぶキオスクでも定番で、温めてもらったスロイカを頬張りながら歩く人をよく見かけました。

ハムやチーズ入りのお惣菜系や、ソーセージ入りのサシスカ(сосиска)も人気です。

 

【しっとり大人の味:ババ・ラム】

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△ババ・ラム(баба ромовая)は、コップ型のブリオッシュパンにラム酒シロップをたっぷり染み込ませた大人の味です。しっとりとした食感と芳醇な香りが広がり、まるで洋酒の香るケーキのよう。

 

【懐かしい子どものおやつ:コルジクとプリュシカ】

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△コルジク(коржик)は、外はクッキーのようにサクッ、中はスコーンのようにふんわりの薄型パンです。アーモンドプードルを使ったミンダーリヌィ・コルジク(Миндальный коржик)も人気。

プリュシカ(плюшка)は、ハート型やうずまき型の砂糖パン。どちらも学校の給食や子どものころのおやつ時間を思いだすロシア人も多いそう。

以前ご紹介した、蜂蜜とスパイスを練り込んだトゥーラ名物「プリャニク」も、パンとクッキーの中間のような食感で紅茶にピッタリです。

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【素朴な甘さが止まらない:ポンチク】

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△揚げドーナツ系の菓子パン「ポンチク(пончик)」は、表面は軽くカリッと、中はもちもち。粉砂糖をかけただけのシンプルなものが多く、一口食べると、ふんわりと油と粉の香ばしさが広がり、心がほっと温まります。サンクトペテルブルクではピシュカ(пышка)とも呼ばれ、味・形も店や地域によってさまざまですが、いずれにしても揚げたての香りに誘われて、見つけるとついつい並んでしまいます。

 

【日本にも“シベリア”があった!?】

ところで、日本にも“ロシアの香り”を感じる菓子パンがあります。その名も「シベリア」。

「昭和のこどもたべたいお菓子No.1」に選ばれたというこのお菓子は、カステラに羊羹を挟んだ日本生まれの菓子パンです。

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△お店自慢のシベリアを食べ比べるのも楽しい!左は京都・村岡総本舗のシベリア。右は青森・工藤パンのシベリア

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△シベリアの種類の多さは日本一!いえ世界一⁉︎?と噂の、埼玉県岩槻・関根製菓

こし餡をカステラではさんだ「昔なつかしシベリア」以外にも、小倉、柚子、抹茶、黒糖、味噌、よもぎなど和菓子屋さんの自慢の味。さらに、モカ、ミルクコーヒー、キャラメル、マロン、いちご、オレンジ&マンゴー、ココアなどケーキ屋さん風のお味。また、春のさくらや青梅、夏のラムネや紫いもなど季節を感じる珍しい味まであります。

羊羹部分をシベリアの永久凍土に見立てた説、カステラに挟まれた羊羹をシベリア鉄道の線路に見立てた説、シベリア出兵や従軍した菓子職人が考案したという説まで――。なぜ“シベリア”と名付けられたのかは諸説あり謎に包まれています

ただし、ロシアで「シベリアをください」と注文しても出てきませんのでご注意を!

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焼きたての香り、ほんのりとした甘み、そして紅茶の湯気。
ロシアの菓子パンには、その国の人々のやさしさと日々の物語が詰まっています。

「今日はどれにする?」――そんな小さな幸せの選択から、
あなたのロシア菓子パン図鑑が始まります。

 

前編では、モスクワの街角で出会ったユニークな自動販売機をご紹介しました。後編では、少し時間を巻き戻して、ロシアにおける自販機の歴史と進化、そして近年の日本ブームまでをまとめてみます。

帝政ロシアに現れた「チョコレート自販機」

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実はその歴史は意外と古く、帝政時代の1898年にサンクトペテルブルクの「ジョルジュ・ボーマン(Жорж Борман)」菓子店が、サンクトペテルブルクのネフスキー大通り(Невский проспект)とナジェジンスカヤ通り(Надеждинская улица)の角に、ロシア初のチョコレート自販機を設置しました。現地の新聞『Петербургский листок』にも掲載され、通行人の注目を集め、大きな話題になったそうです。

 

ソ連時代に花開いた「Автоматторг」時代

1950年代〜1960年代には、ソ連で自販機が一気に普及しました。1960年に設立された国営の「Автоматторг(アフトマトトルグ)」は、自販機による販売を一手に担い、炭酸水やコーヒー、サンドイッチ、ビール、タバコ、雑誌など、多彩な商品を扱っていました。モスクワ市内だけで数千台規模まで広がり、ソ連市民の生活に溶け込んでいきました。

 

夏の風物詩だった炭酸水マシン

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特に象徴的だったのが炭酸水(газированная вода)自販機。初期モデルは赤を基調として丸みのあるデザインと大きなロゴが特徴。コイン投入口とレバー、そして共用のガラスコップがセットされたスタイルだったそうです。共用グラスを洗浄して使い回すという仕組みは今ではちょっと考えられないですが、当時は当たり前で、多くの人に愛されました。

1970年代に入ると、炭酸水マシンは大量生産されるようになり、自動的にシロップを混ぜるタイプなど進化していきました。「1コペイカで炭酸水」「2コペイカでシロップ入り」という安さで、当時の夏の風物詩として人々に親しまれていました。

今でも一部の街角には復刻版が設置され、「レトロ可愛い」スポットとして観光客に人気です。

 

幻の香りの自販機!?

そんな自販機ブームの中でも、ひときわ異彩を放っていたのが香水自販機(одеколономат)。1950年代に西側のアイディアを参考に導入されたもので、1回の使用料は当時15コペイカで、スイッチを押すと木製のボックスから香水が噴き出す仕組みでした。 理髪店やホテル、VDNKH(全ロシア博覧センター)、ギフトショップなどにも設置されましたが、機械の故障や維持コストの高さから数は限られ、1980年代までにほぼ姿を消してしまった幻の自販機です。

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△当時人気のあった香水専門店「Новая Заря(ノーヴァヤ・ザリャ)」の「Красная Москва(クラースナヤ・モスクワ)」だったそうで、1864年からのお店の看板商品として、現在も人気があります。写真はアルバート通り店にて。ロシア正教の教会屋根のような赤い香水瓶キャップが可愛いですね。

 

未来を先取りした無人販売店「Прогресс」

さらに1962年、モスクワ中心部チェーホフ通り3番地に開店したのが「プログレス(Прогресс)」という名の、ソ連初の完全自動化無人販売店でした。店内の壁一面にずらりと並ぶ自販機から、乳製品やジュース、缶詰、パンなど約60種類の食品を購入できる仕組みは、まるで未来を先取りしたようなショッピング体験。

ただし、商品補充や故障対応の課題も多く、70年代半ばには惜しまれつつも閉店してしまったそうです。

 

日本から!DyDo自販機の進出

さて、ロシアの自販機ブームに日本から参入したのが、飲料メーカーのDyDo DRINCO(ダイドードリンコ)でした。

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モスクワ上陸は2013年で、当初は「日本の飲料がそのまま買える!」と話題になり、モスクワの地下歩道や空港に次々と設置されました。

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ホット飲料も貴重でしたし、梅ジュースやゼリーソーダなど日本限定の飲み物がロシアで買えるのは特別な体験でした。

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△購入後に「ありがとうござました〜!」と日本語で挨拶が流れるマシンは、礼儀を重んじるハイテクの国ならではだね、とロシア人の感想。

 

ロシアではすでに定番!フレッシュジュース自販機

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△一方、最近日本でも見かけるようになった自販機といえば、目の前で絞ってくれるフレッシュジュースの自動販売機。ロシアでは、レストランなどでジュースを注文すると、「フレッシュ?それとも普通の?」と確認されることも多いのですが、生搾りのジュースが人気で、2017年のモスクワ生活時もスーパーや空港などで生搾りジュースの自販機をよく利用していました。

 

観光地で人気!記念コイン自販機

 最近の自動販売機では、液晶画面でコインを作るもの。

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△モスクワ・シティの展望台では、記念コインを作る自動販売機。お金を入れたらまずは、コインの片面に描かれるお好みのモスクワの景色を選びます。もちろんモスクワ・シティを選択し次へ。つぎにマグネットのコイン台紙を選びます。ロシア国旗カラーの宇宙飛行士ユーリー・ガガーリン柄を選択。コインには自筆サインなどお絵描きもできました。

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△コイン完成までは、なんともぐらたたきで遊べるサービス!!ここも盛り上がります。

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△完成したのがこちら!ガガーリンの顔部分をあけて、なかに記念コインをいれます。

関連ブログ☆モスクワ通信『食べ放題!天空のアイスクリーム工場がある展望台PANORAMA360』

 

ロボットが活躍する最新の自販機

ロボットが作ってくれる自販機も話題になりました。
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△ザリャージエ公園では、ロボットが作ってくれるコーヒー自動販売機

関連ブログ☆【モスクワ通信】現在進行形のモスクワ観光スポット!ザリャージエ

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△ショッピングモールのなかには、おしゃべりロボットが作ってくれるアイスクリーム!アヴィアパルクの最上階、キッザニアの目の前にあるため、「こんにちは!アイスはいかが?」の声に誘われていつも子どもたちに囲まれています。

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△お金を入れると自動的にロボットアームが動きだして、カップにアイスを入れてくれます。

 

旅先で出会う自販機は、単なる便利な機械ではなく、その国の文化や暮らしを映す“小さなショーケース”のような存在です。

次回モスクワを訪れたら、キャビアや宇宙食から炭酸水マシンまで、ぜひ“自販機ウォッチング”を旅の楽しみのひとつに加えてみてください。そして面白い自販機を見つけたら、ぜひ教えてくださいね!

 

 

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キャビアとイクラ、チューブ入り宇宙食、そしてレトロな炭酸飲料・・・モスクワの街を歩いていると、つい足を止めたくなる“ちょっと変わった自動販売機”に出会うことがあります。

日本では見かけないラインナップばかりで、思わず写真に収めたくなることもしばしば。

 

キャビア&イクラの自販機

空港や鉄道駅で見つけたのは、なんとキャビアとイクラの自販機!さすがロシア、高級食材がこんなに気軽に手に入るなんて驚きです。お土産にはもちろん、長い列車旅の車内でちょっとした贅沢を味わうこともできますね。

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△パヴェレツカヤ駅構内で

関連ブログ☆モスクワ通信『あなたはどちら?寝台特急レッド・アロー号それとも高速鉄道サプサン?』

 

生花・ドライフラワーの自販機

ロシアでは、記念日やお祝いごとにお花を贈る文化が根付いています。だからこそ、生花の自販機は街のあちこちで見かけます。空港や劇場、ショッピングモールなどで、急なお呼ばれのときにも大活躍!

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△ロシアの飛び地カリーニングラードの空港にて

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△モスクワの空港にて

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△トヴェルスカヤ通りの雑貨屋さんにて

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△大型スーパーの入り口ではドライフラワーの自動販売機も見かけました!

関連ブログ

春到来!ロシアのお花屋さん事情

モスクワ通信『中世ドイツ、ソ連、そしてロシア!融合の飛び地カリーニングラード』

モスクワ通信『琥珀、防空壕、マジパン!カリーニングラードでおすすめの博物館3選』

 

 

コンタクトレンズの自販機

コンタクトを使う方には、ちょっと感動モノかもしれません。私も一時帰国が延期になったとき、ロシアで見つけたコンタクトレンズの自販機に救われました。旅行中にレンズを忘れても安心です。

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△最寄りスーパーの入り口にあるこちらの自販機では、日本でもお馴染みのメーカー、ワンデーアキュビュー のTRUE EYEとMOIST、OASYSを扱っていました。

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△レンズの度数(PWR)とベースカーブ(BC)を選択して、カード支払い、すると・・・

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ストッキング、宇宙食、世界のチューインガム

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△地下鉄入り口近くで見かけたのは、ストッキングの自販機!サイズも豊富で、品質はやはり日本製には及びませんが、足の長いロシア人女性の体型に合わせたバリエーション。

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△こちらもロシアならでは!?宇宙食の自販機です。お土産に人気で、 ザリャージエ公園で見かけました。

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△チューブ入り宇宙食ボルシチ味などユニークなラインナップも。


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△子供デパートで見つけた「世界のチューインガム」自販機では、アメリカ、スペイン、カナダ、ハンガリー、デンマーク、フランス、メキシコ・・・ブロックになっていたり、チューブに入っていたり、ユニークなガムがたくさん!

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△日本代表として、『ふーせんの実』と『スーパーソーダガム』、『スーパーコーラガム』がエントリーしていました。

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△他にも100ルーブルを入れると、水槽のなかのお魚に餌をあげることが出来るWWF世界自然保護基金のプロジェクト«Море желаний»(希望の海)の自販機も素敵なアイディアですね。

他にも2018年のFIFAワールドカップロシア大会では、公式グッズ専用の自販機も登場。会場や空港で人気を集め、公式キャラクターのキーホルダーやトロフィーの置物などの記念品を購入する観光客で賑わいました。

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後半では、実は長い歴史があるロシアの自販機ストーリーと日本ブームについてもご紹介します!

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モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』

 

前編ではロシアの入学&卒業シーズンについてご紹介しましたが、 学校生活のもうひとつの楽しみといえば、学用品。毎日手にする文房具などもその国の文化や価値観が表れやすいアイテムです。

ロシアで子育てをしていた私は、日本との違いにたびたび驚かされました。今回は、ロシアの「学びの道具」たちをご紹介します。

実はロシアでもランドセルが大人気!

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私がモスクワで暮らしていた2017〜2020年、日本ではお馴染みの“あるもの”がロシアで大流行していました。それがなんと…日本のランドセル!

赤や黒のランドセルが、中央子どもデパートをはじめ、百貨店「グム」のショーウィンドーを飾り、まるで日本の新学期がそのままロシアにやって来たかのよう。人気の背景には「日本の高級品」というイメージに加え、耐久性・機能性・美しさへの憧れがあるようでした。

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△ブログ前編でもご紹介したロシア人美少女モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんも、Instagram(@knyazeva_anastasiya_official)のなかで、ロシアのランドセルショップで購入したお気に入りのランドセルを紹介!またランドセルを背負ったお洒落なファッションをたくさん披露して、当時の子どもたちの注目の的に!

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△街中でも実際にランドセルを背負った学生さんとすれ違うこともありました。

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△店員さんによると、2015年頃から少しずつ見かけるようになり、2017年に人気が一気に高まったとのこと。

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△中央子どもデパートのなかのランドセル店(2022年)日本同様、定番の赤や黒だけでなく、水色やラベンダーなどカラーバリエーションも豊富です。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』

青いボールペンが基本です

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ロシアの文房具売り場でまず目に入るのが、青いボールペンの豊富なラインナップ。日本では公式書類には黒が一般的ですが、ロシアでは青インクが主流です。理由は、「印刷部分と直筆部分が見分けやすいからでは?」という説も。

学校でも、日本では鉛筆でノートを取り間違えたら消しゴムで消すのが普通ですが、ロシアの子どもたちは青いボールペンで書き、間違えても線で訂正。
「間違いも学びの一部だから、残すんだよ」という考えが印象的でした。

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△私のお気に入りは、グジェリ柄やホフロマ風の青ペン。文具コーナーでも青インクは目立つ存在でした。

 

ノートはA5サイズが定番。

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△ロシアのノートは、日本のB5より一回り小さいA5サイズが主流。△ソ連時代から変わらぬこちらのノート(2ルーブル50コペイカ)。先日訪れた『子ども時代ミュージアム』にも展示されていました。(関連☆モスクワ通信『60周年を迎えたルビャンカの中央子どもデパート』)・・・

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△中身は「横罫(в линию)」と「方眼罫(в клетку)」の2種類があります。

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△表紙には「教科・学年・クラス・学校名・名前」をロシア語でしっかり書き込む欄が。記入の仕方をロシア人のお友達に見せてもらいました。日本では固有名詞や人の名前は変化せず、“て、に、を、は”などの助詞を使って活用しますが、ロシア語では名詞そのものの末尾を変化させて活用するため、なんと人の名前まで変わってしまいます・・・!

△裏表紙にはよく筆記体の練習見本がついています。

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新学期シーズンには、カラフルなデザインのノートが並び、あれもこれも欲しくなってしまいます。表紙にはプーシキンやレフ・トルストイなどの文学者、宇宙飛行士や科学者など、子どもたちが尊敬する人物たちが描かれていることも多く、「憧れとともに学ぶ」文化が根付いているように感じます。

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△たとえば、プーシキンと学ぶ“文学“のノート

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△文学、ロシア語、歴史、化学、こんなシリーズで揃えるのも素敵ですね!

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△「外国語学習ノート」には日本の国旗も発見!語学ノートの中身は、単語・意味・用例が書ける仕様で、ロシア語学習にもピッタリでした。

ちなみに教科書の多くは伝統的に、学校から支給されたり図書館から借りたりして、先輩のお下がりを大切に使い、また学年末には次の学年のために返却していました。ここは日本でも取り入れてみたら良いかもしれませんね。

 

ソ連時代の定番文具も健在

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さきほどのノートも「ソ連時代からの定番」ですが、ほかにも印象的だったのが、ハリネズミの鉛筆立て。鉛筆を立てるだけでなく、定規や消しゴムを挟んだりもできる実用性と可愛らしさを兼ね備えた一品です。とっても便利で可愛らしいのに、少しずつ見かけなくなってきました。緑豊かなロシアでは、森の中などでよくハリネズミをみかけるため、ロシア人には親しまれていて、子ども向けのグッズにもイラストが描かれています。

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△こちらは、レストランで見つけた子ども向けの塗り絵のサービス

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△もうひとつの定番が、カラフルな本立て。アニメ「ミーミーミーシュキ」のキャラクター入りなど、今も子どもたちに愛されています。

 

学用品以外にも、ロシアの学校や学校生活には日本とは違う面白い発見が詰まっています。たとえば、ソ連時代の名残りでたくさんの学校名が番号で呼ばれていたり(例:810番学校、1239番学校のように)、登校したら学校で朝ごはんを食べることとか、挙手の仕方とか、

勉強も遊びも、子どもたちにとっては「世界を広げる冒険」。道具の形は違っても、「学ぶことの楽しさ」は万国共通。ロシアの文房具売り場には、そんな世界共通のまなざしと、ちょっとした異文化のトキメキが詰まっていました。

 

6月、日本の子どもたちは1学期を終え、夏休みに向けて勉強と遊びの計画を立て始める季節。

一方、ロシアでは6〜7月は学校生活の一区切りの時期。欧米と同様に9月に新学期が始まるため、長い夏休みを前に、学年末、そして卒業式をむかえます。日本とは異なる年間サイクルのなかで、子どもたちは春から夏へと移っていきます。(関連 ロシアの子どもたちの音楽教育をのぞいてみよう〜ロシアの新星コンサート2024特集!

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△ロシアの四季の移り変わりや旬の食べ物を知ることが出来るスーパーマーケットの広告チェックは、生活の楽しみのひとつ!5月号にはよく、卒業式のテーブルに並ぶごちそうやパーティメニューが紹介されていました。

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入学式は「最初の鐘」、卒業式は「最後の鐘」

ロシアの入学式では、「最初の鐘」という伝統的なセレモニーがあります。

息子が通っていた学校でも、立派に成長した頼もしい最上級生が、まだ幼さの残る初々しい新入生の女の子と手を繋いで、全校生徒のまわりを1周しました。お兄さんに手を引かれながら一歩ずつ歩く姿に、見ているこちらも胸が熱くなったものでした。この「最初の鐘」は、ロシアの子どもたちにとって学びの始まりを告げる特別な瞬間です。

一方、学年末や卒業式では「最後の鐘」が鳴らされます。これは新たな人生の節目を象徴する儀式で、1年間の努力を讃え、未来へ向けたエールのようにも感じられます。

また、日本の卒業式には桜がつきものですが、ロシアでは5〜6月にライラックが満開を迎えます。卒業式の広告やパーティメニューの案内にも、香り高いライラックが描かれていて、まさにロシアらしい季節の彩りです。(関連 ライラック)

卒業パーティでは、子どもたちが先生に花束や贈り物を渡し、学びの締めくくりに感謝を伝えます。

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△こちらは同じスーパーの9月の広告です。ロシアの新学期は「勉強の秋」という雰囲気ですね。「最初の鐘」を鳴らすので、新学期を象徴するモチーフとして鐘も描かれています。

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△9月の新学期、学校の黒板にチョークで書かれていた可愛らしい絵。先生たちから「たくさんの新しい知識を得て、素晴らしい一年にしましょう!」のメッセージが添えられていました。

花束を手に、先生へ「ありがとう」を届ける日々

ロシアの学校では、大切な日に子どもたちが先生へ花束やプレゼントを贈る習慣があります。9月1日の「知識の日(День знаний)」や、10月5日の「教師の日」はその代表例。

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△9月1日は 「知識の日(День знаний)」とも呼ばれています。

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△スーパーの広告の表紙に特集された「教師の日」

子どもたちはきちんとした服を着て登校(女の子はよく、頭にふわふわの大きな白いリボンをつけます)。そして、先生へ感謝の気持ちを込めた花やプレゼントを手渡します。これは日本にはあまり見られない光景ですが、こどもたちやその保護者から先生たちへ、さらに教育への敬意を社会全体で表しているように思えます。

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△世界的に人気のロシア人子役モデル、アナスタシヤ・クニャゼワちゃんもInstagram(@knyazeva_anastasiya_official)でも、「教師の日」の様子が紹介されていました。

このように「教師の日」以外にも、ロシアには職業を祝う日が決められていて、「宇宙飛行士の日」などは特に盛大に祝われます。国営国際ラジオに勤務していたときには、5月7日のラジオの日は、社長が各部屋を周り皆に挨拶や差し入れをしてくださったり、局内みんなでおめでとう!を言い合ってミニパーティをしたりして祝っていました。消防士の日、エコノミストの日、警察官の日、法律家の日・・・ほかにもたくさんあります。

 

「新しい1年を迎える喜び」や「先生への感謝」、「学びへの敬意」――こうした気持ちは、国や文化を越えて響き合うものでしょう。

後編では、ロシアの文房具やノートの違いから見えてくる、「学びの道具たち」の文化をご紹介します。

 

ジョージアとロシアを代表する芸術家であり、ロシア美術アカデミー総裁を務めたズラブ・ツェレテリを悼んで、前編では彼の作品が彩るモスクワの街並みや、壮麗なアート・ギャラリーをご紹介しました。

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△芸術家ズラブ・ツェレテリをテーマに自ら制作した作品

後編では、ジョージアの名のついた通り(ボリシャヤ・グルジンスカヤ通り)にあるもうひとつのツェレテリ美術館をご紹介。さらに世界各地や日本で出会える作品にも注目していきます。

 

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△ツェレテリのアトリエを改装した美術館は、「もうひとつの顔」に触れることができる場所です。

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△エントランスでは、国民的歌手アーラ・プガチョワが両手を広げて来館者を迎えてくれます。

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△アート・ギャラリーと同じく圧倒的なスケール感がありながら、どこか実験的で、遊び心を感じさせる空間が広がっています。

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△国際的な活動も盛んだったツェレテリは、“世界中に巨大な彫刻作品を贈る芸術家”としても知られていました。館内には、ツェレテリが参加した国際展の記録や、各国での活動もパネルで紹介されています。

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△ こちらは、アメリカ同時多発テロ事件の犠牲者を追悼して制作されたモニュメント『悲しみの涙(Слеза скорби/Tear of Grief)』の縮小版。高さ約30メートルの実物は、ニュージャージー州のハドソン川沿いに設置されています。中央には涙を象徴するしずく型のモチーフを配し、悲しみと連帯の想いを表しています。

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△『善は悪に勝る(Good Defeats Evil)』は、1990年の国連創設45周年を記念し、ソ連からニューヨークの国連本部に贈られた作品です。聖ゲオルギウスがドラゴンを倒す構図で、このドラゴンの部分は実際のミサイルの破片で制作されました。これは、1987年の中距離核戦力全廃条約(INF条約)に基づき廃棄されたソ連とアメリカのミサイルを用いたもので、核軍縮と平和の象徴として位置づけられています。(国連のHPより写真転載)

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△コロンブスが卵の殻の中から現れる姿を表現した『新しい人間の誕生』の縮小版。1995年のアメリカ大陸発見500周年を記念して、モスクワ市からスペイン・セビリア市へ贈られました。

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△ 屋外には、カラフルな彫刻が溢れる彫刻庭園も見どころのひとつ。

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△こんなふうに作品に入り込んで・・・

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△気に入った作品と一緒に写真撮影することもできます。

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△敷地内にはジョージア正教の教会や、

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△ジョージアの食堂やジョージアのパン屋さんも併殺されており文化を五感で味わうことが出来ます。

 

ツェレテリと日本

さて、ツェレテリ作品は、日本国内でも鑑賞することができます。

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△東京・港区の在日ロシア連邦大使館の絢爛豪華なシャンデリアがきらめく大レセプションホールには、

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△ツェレテリの銅版画『首都モスクワ、我がモスクワ』が圧倒的な存在感で展示されています。式典やコンサートを荘厳に華やかに演出しています。

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△また、ホールへ続く大階段を鮮やかに彩るステンドグラス作品『旗』もツェレテリの作品です。

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△こちらは、日ロ国交回復50周年を記念して制作された鳩山一郎元総理の銅像。モスクワ市から鳩山家に寄贈され、東京・文京区の鳩山会館に設置されています。

 

芸術に国境はない。

そう信じ、情熱と愛にあふれた創作活動をつづけたツェレテリの生涯は、多くの人々に刺激を与えました。

彼の手がけた力強い作品とエネルギーは、モスクワで、東京で、そして世界の街で、これからも生きつづけていくでしょう。

 

2025年4月22日、ロシア現代美術界を代表する彫刻家、ズラブ・ツェレテリ氏が91歳でこの世を去りました。ソビエト連邦から現代ロシアへ、その激動の時代を駆け抜け、彼の手から生まれた巨大な彫像群は、ロシア、そして世界各地にそびえ立ちます。圧倒的なスケールと情熱は、私たちの記憶に深く刻まれました。

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モスクワ中心部の救世主ハリストス大聖堂で葬儀が行われ、故郷ジョージア(グルジア)のトビリシでも追悼式が行われました。1980年モスクワ五輪ではチーフアーティストに任命されるなど、ロシア芸術界を象徴する存在でした。生涯で手がけた作品は、なんと5000点以上。「モスクワ中が彼のアトリエのようだ」と言われるほど、街のあちらこちらにその足跡が残されています。

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△1923年、ジョージアのトビリシに生まれたツェレテリは、画家としてキャリアをスタートし、やがて彫刻家、建築家、そして芸術教育者へと多彩な道を歩みました。彼の名を広く知らしめた代表作のひとつは、モスクワ川沿いに立つ高さ約100メートルの『ピョートル大帝像』です。

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△そのほかにも、改修の際にデザインや彫刻を手がけたモスクワ動物園、コスモス・ホテル前のシャルル・ドゴール像など、市内には多くのツェレテリ作品が点在しています。

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△以前ご紹介した『モスクワ噴水コレクション』に登場する噴水のなかにも、彼の手による作品があります。クレムリン近くのマネージ広場で躍動する4頭の馬の噴水や、ニクーリン・サーカス前のクラウンの噴水などです。(関連ブログ☆モスクワ通信『モスクワの宝石箱!夏空にきらめく噴水コレクション』

今回のブログでは、追悼の思いを込めて、モスクワにあるふたつのツェレテリ美術館をご紹介します。

 

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△ロシア美術アカデミーの一部として運営され、ツェレテリの絵画や彫刻、ステンドグラスなどが展示されています。

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△この美術館のシンボルともいえる巨大なブロンズ製の『りんご Apple/Яблоко』は、アダムとイヴのりんごをテーマにした作品で、なかに入ることもできます。

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△壁一面のモザイクやレリーフ、所狭しと並ぶ彫刻の数々…!この空間に一歩足を踏み入れると、まるでツェレテリの思考の中に迷い込んだかのような不思議な感覚に包まれます。

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△人気の展示のひとつが「私の同時代人たち」シリーズ。ロシアの著名人のブロンズ肖像やレリーフがずらりと並びます。柔道着姿のプーチン大統領や、

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△伝説的なバス歌手シャリャーピン、吟遊詩人オクジャワ、詩人エセーニン、宇宙飛行士、作家、俳優、バレエダンサー、演出家、音楽家・・・その鋭い観察眼と温かなまなざしで個性を捉えた作品群は見応えがあります。巨匠でありながら、常に「今」と向き合っていた彼の姿勢が、空間全体から感じられます。

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△宗教や歴史、民族神話などをテーマにした作品も多く、ツェレテリらしい力強い色彩と圧倒的スケールで展開されています。

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△ツェレテリがこよなく愛した人物チャーリー・チャップリンをテーマにした作品が数多く展示されています。チャップリンのユーモア、哀愁、正義への姿勢、そしてその表現力と人間性は、ツェレテリの芸術感に重なります。

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△ピョートル大帝像をはじめ巨大モニュメントの縮小版も。

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△そして見逃せないのが、館内に併設されたレストラン「アーティスト・ギャラリー」。

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△ハチャプリと呼ばれるチーズのパンやくるみペーストを巻いたナスの前菜、独特のスパイス香る煮込み料理など、本格的なジョージア料理を楽しめます。

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△どこもかしこも見渡す限り、ツェレテリ作品で埋め尽くされた店内の装飾!パレットをイメージしたメニューも味わいがあります。

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後編では、モスクワにあるもうひとつのツェレテリ美術館と、世界各地や日本で出会える作品に焦点を当てていきます。どうぞお楽しみに!