ロシアでは9月に新しい学年がスタートします。季節の変わり目、たっぷり睡眠をとってしっかり朝食をとって、素敵な1日のはじまりを迎えたいものですね。
さて、ロシアではどんな朝食が人気なのでしょうか?
△ロシアの朝ごはんの定番はいくつかありますが、卵やロシアのクレープ「ブリヌイ」、そして右下に見えるロシアのお粥「カーシャ」もそのひとつ。
「カーシャ」とは、お粥と翻訳されますが、日本人がイメージするような生米をたっぷりのお水でやわらかくなるまで炊いたものとは違い、セモリナ粉(ひきわり小麦)やお米、オーツ麦、カラス麦、キビ、蕎麦の実などのさまざまな穀物をミルクや水でとろみが出るまで煮たものです。
△ロシアではホテルの朝食でもよく見かけます。バターを乗せて、お砂糖や蜂蜜、ヴァレーニエというジャムをかけたりして食べる甘いカーシャは幼い子どもにも好まれます。(関連ブログ☆【モスクワ通信】ジャム<ヴァレーニエ<コンポート)
ロシアでは幼稚園や学校給食で、朝ごはんも提供されるのですが、「子ども時代はカーシャばかり食べていたなあ」と思い出を語ってくれるロシア人も。
△お洒落なカフェのブランチメニューでも、このとおりお好みのカーシャを選ぶようになっていました。手前の黄色いカーシャはキビのカーシャ。右上がお米のカーシャ、そして左上が「マンナヤ・カーシャ」と呼ばれるセモリナ粉を使ったカーシャです。
「マンナヤ・カーシャ」の作り方は、セモリナ粉1に対しミルク10くらいの分量でたっぷりのミルクを温め、セモリナ粉を入れて、ゆっくりとかき混ぜながら煮込みます。ロシアでも「ミルクが逃げた(Молоко убежало)」と表現したりしますが、ミルクはちょっと目を離すと吹きこぼれてしまうのでご注意を。最後にバターを落とし、蓋をして、数分蒸らしたら完成です。
この最後にバターを落とすのがポイントで、「バターでカーシャを台無しにすることはない=カーシャにバターを入れれば入れるほど美味しくなる(К кашу маслом не испортишь)」という言い回しがあるほど。
ソ連時代もロシアでも、忙しい朝に手軽に栄養がとれるカーシャは定番の朝食で、スーパーにはさまざまなレトルト商品も並んでいます。
ところで、日本では蕎麦=麺類ですが、ロシアでは脱穀した蕎麦の実を茹でていただくのが主流です。
△ソ連時代からあるレストランのランチ。
△蕎麦の実をミルクと煮てお粥状態(蕎麦の実は煮ても粒が感じられるためスープ状態という方が適切?)にして朝食でもいただきますが、一般的にはお湯で煮て、水分が飛ぶまで蒸らし、スプーンで掬うとポロポロと崩れる状態で、こんなふうに朝食以外の食事でもメインの付け合わせとしてよく登場します。
△ファーストフード店のメニューにある「蕎麦の実のカーシャ」(関連☆【ロシアのファーストフード事情】2017 〜ТЕРЕМОК テレモーク〜)安くて栄養があるので手軽な食事にぴったり。どどんとソーセージやハム&チーズとの組み合わせ!
シンプルな「蕎麦の実のカーシャ」の作り方は、蕎麦の実1カップに対して、お水を2カップほど鍋に入れて、ひとつまみの塩と一緒に煮ます。水気がなくなったら上にバターを乗せ、蓋をして数分間蒸らします。バターが溶け、全体を軽く混ぜたら出来上がり。
△モスクワのロシア料理店のビーフストロガノフ。付け合わせは「蕎麦の実のカーシャ」です。香りがよく滋味豊かで、病みつきになりそう。
この「蕎麦の実のカーシャ」と「付け合わせの蕎麦の実」の呼び方の厳密な違いはないようで、友人たちに尋ねてみても、感覚的に朝にお粥がわりに食べるならカーシャ、メインの付け合わせとして食べるなら「蕎麦の実」と呼んでいる方が多いようです。「どっちがどっち⁉︎ 頭が混乱する〜!」という私に友人が笑って一言「頭が混乱するとき、ロシア人は、頭の中がカーシャっていうのよ。」
△付け合わせの「蕎麦の実」には、玉ねぎやきのこ、オリーブオイルを合わせたりして、ボリュームや旨みを加えたものも人気です。
△スーパーの陳列棚にはずらりと蕎麦の実が並んでいます。コロナ禍のステイホーム前に一時期スーパーの食材が買い占め⁉︎とニュースになったときに、がらりとしていたのは蕎麦の実のコーナーでした。長持ちして栄養豊富、しかも安いので、ロシア人にとって欠かせない食材なんでしょうね。
△日本の朝市で、スーパーフードとして売られていた蕎麦の実。国産のものはロシアで食べていたものよりも少し色が薄い印象です。蕎麦の実は、レジスタントプロテインやレジスタントスターチと呼ばれる体内で消化されにくい成分が含まれており、脂肪やコレステロールの吸収を防いでくれるほか、低GIでグルテンフリーの穀物のため、食後の血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。ミネラル豊富で栄養価が高いため、海外ではダイエット食としても人気があります。
日本でも近年オートミールが人気で、和風に味つけしてご飯がわりに食べるなど工夫されたメニューがたくさん登場していますが、もともとお蕎麦が大好きな日本人ですから、そのうち蕎麦の実のカーシャもブームが来るでしょうか?
△ドイツのグリム兄弟の童話「あまいカーシャ」のロシア語版。
日本では甘いお粥はあまり馴染みがありませんが、ロシアだけでなくヨーロッパでは昔から甘いお粥は朝ごはんの定番のようです。