■2020年12月23日■ |
イリア・イーチン ピアノリサイタル
オールショパン。美しいトリル、多彩な音色、心地よく引き込まれる
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2020年12月23日、東京文化会館小ホールにおいて、武蔵野音楽大学客員教授でもあるイリア・イーティン ピアノリサイタルが行われました。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、観客を座席数の1/2の300人に、客席扉を演奏中も開けたままにして、ピアニストのトークをもって休憩時間とし、ロビーにはクラスター発生時の連絡のためのQRコードが張り出されたりと、万全の感染防止対策の中の開催でした。そのような状況にもかかわらずほぼ満席でした。プログラムはオールショパン。嬰ハ短調の遺作のノクターンから始まる。美しいトリル、多彩な音色、弱音の響きが印象的。続く3曲のワルツ(op.70-2,op.64-3,op.64-2)は、軽やかで明るい音色と、ふと影を落とす響きのコントラストが美しい。ワルツのリズムというよりメロディー重視で、即興的でしゃれた感じが、ショパンがパリにいたことを思い起こさせます。この後、換気のためにトークが入り、続いてはバラード第3番。クリアな音色で始まり、メロディーを中心とした個性的な演奏スタイル。次のノクターン16番が素晴らしい演奏で、たゆとうような響きに身をまかせて聞き入ってしまいました。この後2度目のトークがあり、最後はソナタ第3番。第1楽章は霧の中にメロディーが浮かび上がるような幻想的な感じ。第2楽章は全体を通して何かがうごめいているような印象。第3楽章は音が溶け合うというよりは、メロディーの強弱が絡み合う感じ。そして第4楽章は大胆に心地よく音楽が流れショパンの世界に引き込まれました。長年ショパンを演奏してきたからこその余裕と、自身の音楽を融合させたショパンを堪能させてもらいました。アンコールは、2020年がベートーヴェン生誕250年ということなのでと話し、アンダンテ・ファヴォリを演奏しました。(文=佐野真澄)
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