ダニエル・ハリトーノフピアノリサイタル2023は、11月23日午後5時から東京オペラシテイコンサートホールにおいてオールラフマニノフプログラムで開催されました。第一部は6つの楽興の時作品6、第二部は幻想的小品集作品3、リラの花作品21-5、前奏曲作品23より第4番、第5番、第7番、第10番、練習曲「音の絵」作品39第8番、 最後を飾ったのは練習曲「音の絵」作品39第1番で盛り上げて会場は高揚しました。インプレサリオ東京が主催。(撮影=丸山英樹)
ラフマニノフの魅力たっぷりに――佐野真澄(ピアノ教育)
ラフマニノフ生誕150年を祈念したダニエル・ハリトーノフ、ピアノリサイタルが行なわれました。オール・ラフマニノフプログラム、第1部は6つの楽興の時作品6。第1番はロシア的な響きに包まれた切ないメロディーが印象的。カデンツァ部分も極めて繊細なレースのようで、続く変奏部分のメロディーの浮き上がらせ方も素晴らしい。第2番は常に音が動いていて心がざわつく感じ。第3番は語りかけるような重音のメロディーが胸をえぐる。第4番は連続する下行音型の、いかにもラフマニノフという曲。高度な技術を要する曲を壮大に弾き切りました。第5番はゆったりとしたリズムにのせて、じわじわと登りつめていくメロディーが美しい。第6番は厚みのある響きの中メロディーが動いていく。左手のバスもよく鳴っていて、温かな高揚感に会場全体が包まれました。第2部は幻想的小品集作品3から始まりました。第1番悲歌は暗いアルペジオからメロディーが熱を帯びていき、ラフマニノフの新しい手法も感じられました。第2曲前奏曲(鐘)はテクニックも構成力もしっかりとしていてホール中にロシア正教の鐘の音が鳴り響きました。第3曲メロディは明るい希望を感じさせました。第4曲は道化師。ラフマニノフはどんな道化師を見たのだろうか?飛んだり跳ねたり、もう大騒ぎの道化師をハリトーノフは熱演しました。それにしても、どんな道化師を思い描いて弾いていたのか?とても気になりました。第5曲セレナードは改訂版で演奏し、自由で動きがあってとても心惹かれました。全曲続けて演奏しましたが、5曲とも思わず拍手をしたくなりました。続いてのリラの花はとても愛らしい小品。優しい音が耳に残りました。前奏曲集作品23第4番はロマンチックな曲。第5番は最初から勢いにのって自由自在に演奏。ハリトーノフとラフマニノフが重なって見えるようでした。第10番は左手がメロディーの優しい感じの曲。息をするように自然に弾いていました。第7番は音数の多い技巧的な曲を、不安を掻き立てるように一気に演奏。練習曲「音の絵」作品33第8番は、繊細な高音と力強い低音、そして絡み合うメロディーといったラフマニノフの魅力をたっぷり聴かせてくれました。断片変イ長調はラフマニノフの心情にも思いを馳せてしまうような作品。前奏曲二短調は、聴く機会の少ない曲。耳に留めました。練習曲「音の絵」作品39第1番は最後を飾るにふさわしい曲。シンコペーションのリズムに乗せて右手が素早く鍵盤の上を動き回る。ピアニスト、ラフマニノフならではのピアニスティックな曲。ハリトーノフがこの上なく盛り上げて演奏して、会場内が高揚しました。アンコールはまどろむようなF・ブルーメンフェルトのプレリュードop.12-4と、ハリトーノフ自身作曲のタイニー・エチュードという超難曲を好演しました。
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