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■2024年10月4日■

 国境を越えた夢舞台、スーパースター・ガラ2024
スヴェトラーナ・ザハロワ(ボリショイ)、ナターリア・オシポワ(英国ロイヤル)ら
「瀕死の白鳥」「Wind Games」「海賊」「チャイコフスキー・パ・ド・ドウ」など豪華に

 ことし最大に豪華なバレエ・イベントである「スーパースター・ガラ2024」が10月4日・5日・6日に東京文化会館大ホールで開催されました。「戦争」や地球温暖化による気候危機のなかで、国境を越えた豪華大スターたちの、夢と感動の舞台が実現しました。ボリショイバレエ団プリンシパルのスヴェトラーナ・ザハロワ、、ミハイロフスキーバレエ団から英国ロイヤルバレエ団プリンシパルのナタリア・オシポワ、ペルミ出身で英国ロイヤルバレエ団プリンシパルのワディム・ムンタギロフ、マリンスキーバレエ団プリンシパルのウラジーミル・シクリャローフら各国バレエ団精鋭による、「瀕死の白鳥」「Wind Games」「海賊」「チャイコフスキー・パ・ド・ドウ」「ジゼルより2幕のパ・ド・ドウ」など魅惑の舞台が繰り広げられ、満員の聴衆に感動と興奮を届けました。主催は朝日新聞社、サンライズプロモーション東京、MIYAZAWAカンパニー。撮影=瀬戸秀美
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■2024年8月31日■

ユーゴザーパド劇場&劇団東演提携公演=築地小劇場開場100周年
ゴーリキー作「どん底」 演出=ベリャコーヴィチ&レウシン
ナグレジノフ、ボロジノフ来日・出演、音響=ロブロフ、衣装=プーシキン
エネルギッシュな身体表現、光と音楽のステージ、「人間賛歌」の美しいシーン

 8月31日から9月8日まで東京都世田谷区のシアタートラム「三軒茶屋」で、ユーゴザーパド劇場&劇団東演合同公演が行われました。この公演は築地小劇場開場100周年・劇団東演創立65周年記念公演として企画されたものです。ゴーリキー原作でモスクワ芸術座が1902年に公演されてから122年が過ぎ去りしも感動を与える「生命力」がある舞台だけに大いに注目され、観客に新たな感動をあたえて閉幕しました。
 吹き溜まりの様な地下の安宿。そこには行き場のない人間たちがうごめいている。男爵と呼ばれる男、イカサマ賭博師のサーチン、アル中の役者、帽子屋ブブノーフ、小説の恋物語に陶酔しきっている娼婦のナースチャ、敵意むき出しのクㇾ―シチ、病弱で今にも死にそうなその妻アンナ、この木賃宿の主人コストゥリョフ、その妻ワシリーサといい仲になっているコソドロのペーベル。人間丸出しの住人たちが繰り広げる騒動・・。
 ベリャコーヴィチ演出の光と音楽の舞台は、重たいテーマにもかかわらず、歴史空間と民族を超えて観る人々の心を常に揺さぶり続けています。
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■2024年8月26日■

“芸術文化には人の心を変える力がある”
イリーナ・ぺレン、マラト・シェミウノフの夢コンサート
「ドガと踊り子」「ロミオとジュリェット」「ドン・キホーテ」―鳴りやまない拍手

 8月28日午後6時30分から東京都渋谷区のさくらホールにおいて、イリーナ・ぺレン、マラト・シェミウノフ教育プロジェクトin japan by K&A10周年記念 ジャパンプレミアム「ドガと踊り子」夢コンサート2024が開催されました。また、四日市他でのワークショップ、駐日ロシア連邦大使館他でのコンサートが行われました。

成長した踊りで観客を楽しませるーー仙場真理(バレエ評論家)
 会場に入るとロシア人の観客が多く、本格的なクラシックバレエのコンサートへの期待の大きさがうかがわれました。第1部はRBSバレエカンパニーの滑稽なキャラクター要素たっぷりのバレエ「Funny Waltz」(ショパン曲)他5曲のヴァリエーションで会場を魅了していました。続いては、エドガー・ドガの彫刻作品「14歳の小さな踊り子」がスクリーンに映し出され、舞台にはイリーナがその小さな踊り子と同じポーズで立っているところから第2部が始まりました。音楽によって彫刻に生命が吹き込まれたかのように踊り始めます。素朴ではありますが、夢と期待と不安の交錯する14歳の動きを見事に表現していました。「オペラ座の夜」「アートスタジオ」「キャバレー」では、踊り子演じるイリーナとドガ役のシュミウノフの芝居を一層華やかに盛り上げたのは、ニコライ・ヴィユウジャーニン、フィダン・ダミネフ、グジェレフ・瞭舞、薮内利庵、柴山万里奈、太田陽子、小仲夏月、横田香里奈、清水理央、薮内里愛奈でした。第3部では、更にクラシックバレエのヴァリエーションが14曲演じられました。中でもプロコフィエフ曲「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥを踊った井関エレナとグジェレフ・瞭舞は、ため息が出るほどの表現力とプロダンサーとして海外で活躍している安定のテクニックで物語を牽引していました。チャイコフスキー曲「くるみ割り人形」よりパ・ド・ドゥをフィダン・ダミネフと踊った柴山万里奈は2014年にイリーナ&マラトのコンサートを開始した年に高校生で出演した言わばプロジェクト第1期生です。成長した踊りで観客を楽しませてくれました。ミンクス曲「ドン・キホーテ」第3幕よりを踊った阪本絵利奈と刑部星矢の華やかなグランパ・ド・ドゥにはブラボーの掛け声が鳴り止まないほどでした。そして最後の演目は、イリーナとマラトによるアルビノーニ曲「アルビノーニのアダージオ」です。白と黒、静と動、生と死、男と女のコントラストをアクロバティックなバレエで表現していました。彼らはますます活動の場を広げていて、地方の学校とのオンライン交流やエルミタージュ美術館の作品をテーマとしたバレエ公演などを行っています。企画・プロデュースの川島佳子が「芸術文化には人の心を変える力がある」と語る通りに戦争から平和へと世界が向かって行くことを切に願うコンサートでした。(8月28日渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール)
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■2024年8月18日■

ボリショイ劇場バレエダンサー来日しワークショップ
ファーストソリストの千野マルク、エカテリーナ・クリャーヴリナ
基礎レッスンからヴァリエーションクラスまで指導

 NPO法人立川日露文化交流協会主催で、町田市の谷口バレエ研究所において、夏休みバレエワークショップ2024が開かれました。このイベントには、モスクワのボリショイ劇場バレエ団からファーストソリストの千野マルク、エカテリーナ・クリャーヴリナの2名が来日し、基礎レッスンからヴァリエーションクラスまで多面的に指導が行われました。このワークショップには約150名の小学生から大人までが熱心に参加しました。

「戦争」よりバレエの夢をもって生きる子供たちーー仙場真理(バレ評論家)
 NPO法人立川日露文化交流協会主催のボリショイバレエ団ファーストソリスト千野マルクとパートナーのエカチェリーナ・クリャヴリナのワークショップを取材しました。マルクの祖母である谷口登美子が主宰を務めていた東京都町田市にある谷口バレエ研究所のホールは70年の歴史ある木の床、マルクの母である千野真沙美もここでバレエを始めました。
 7月27日から8月18日までの期間に小学4年生から大人までバレエ学習者が基礎レッスンからヴァリエーション、そして今年はキャラクターレッスンクラスもあります。上級クラスではボリショイのクラスレッスンメニューを取り入れたハイレベルな指導、小学生クラスでは床での柔軟をメインに楽しいレッスンと緩急ある指導です。参加者たちに感想を聞きましたが、「難しいけど、やりがいのあるレッスン」「ロシアに留学したい」など2人の丁寧な指導に精一杯ついてゆこうとする姿がありました。第一線で活躍する2人の足、腕、首すべてが美しく、それを直ぐ目の前で見てのレッスンは新鮮で、夢のような、憧れた時間です。ウクライナへの軍事作戦が始まって以来、日本にとってロシアは受け入れがたい国と認識されている昨今ですが、そのことについて参加者に質問してみました。「ご両親はロシア人からバレエを習うことに心配していませんか。」「ロシアに留学したいと思っていることに対して親は反対したり、心配したりしませんか。」に対して「全くそんな心配はしていません」と口々に答えていました。マルク自身も「ボリショイバレエアカデミー、ボリショイバレエ団で得た知識や経験をバレエダンサーになる夢を持つ人達に伝えられることが光栄であり、教えることで自分にも新たな発見がたくさんあります。自身の向上のためにも大切な経験」と話しています。両者の瞳に明るい希望の灯が小さくともはっきりと見てとることができました。マルクとカーチャには日露の真の懸け橋となってもらいたいと心から思いました。(7月31日谷口バレエ研究所)
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■2024年8月10日■

セルゲイ・ドレンスキー教授記念カワイ・マスタークラス2024
アンドレイ・ピサレフ、パーヴェル・ネルセシアン両教授来日・指導

 ロシアン・ピアノスクールin東京の音楽監督を長年務められた故セルゲイ・ドレンスキー教授を記念して、今年もモスクワ音楽院からアンドレイ・ピサレフ教授、パーヴェル・ネルセシアン教授の2人を招聘し、ピアノマスタークラスを8月10日から14日まで開催しました。バッハから古典、ロマン、近現代と幅広い作品に精通するピサレフ教授、ピアノ作品のみならずオペラにも造詣の深いネルセシアン教授が熱心に指導しました。受講生は全国から審査で選ばれた中学生、高校生、一般の15名が参加しました。8月11日ネルセシアン教授、8月12日ピサレフ教授の模範演奏会が開かれました。
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■2024年7月10日■

ロシア民族楽器の巨匠、モスクワカルテット日本公演
招聘・共演の天野加代子(メゾソプラノ)と楽しいショータイム
大阪・京都・東京・八ヶ岳・横浜でコンサートとマスタークラス

 モスクワカルテット=アレクサンドル・ツィガンコフ(ドムラ、全ロシア作曲家協会会長)、ヴァレリー・ザジーギン(バラライカ、ロシア人民芸術家)、ラリーサ・ゴトリブ(ピアノ、ロシア功労芸術家)、インナ・シェフチェンコ(ピアノ&グースㇼ、ロシア功労芸術家)は、7月2日羽田空港に来日、5日大阪でマスタークラス、6日在大阪ロシア総領事館にてコンサート、7日京都・レストラン・キエフにてコンサート、9日東京でマスタークラス、、10日在日ロシア連邦大使館ホールにてコンサート、11日東京・マスタークラス、13日山梨県八ヶ岳やまびこホールにてコンサート、15日ヨコハマでマスタークラス、16日羽田空港から帰国しました。このコンサートはメゾソプラノの天野加代子が招聘・共演したもので、各会場とも満員の盛況で民族楽器演奏とロシアオペラ・ロマンスの楽しいひとときとなりました。
 7月10日の在日ロシア連邦大使館ホールでのコンサートでは、ロッシー二「セビリアの理髪師」序曲がモスクワカルテットの演奏でスタート、ビゼー「カルメン」より「ハバネラ」を天野加代子が、古謡「さくら、さくら」をザジーギンが、宮城道雄「春の海」をツィガンコフが、娘道成寺をテーマにした歌曲「舞」を天野加代子が、そしてラフマニノフ「エレジー」&「イタリアンポルカ」をモスクワカルテットが演奏して第一部を嵐のような感動の拍手で閉じました。第二部は、天野加代子とモスクワカルテットによる新井満「千の風になって」で始まり、ツィガンコフ編曲「長い道」、アンドレイエフ「バラライカ」、ジャ―ル「ドクトルジバゴ」よりララのテーマ、ツィガンコフ「序奏とチャールダッッ」が連続して演奏され、ルービンシュテイン「夜」、ロシアンタンゴ「太陽に灼かれて」、バカレイ二コフ「トロイカの鈴」、ジプシーソング「黒い瞳」を天野加代子が、最後に久保田孝編曲「二つのギター」をモスクワカルテットが演奏して終演となりました。本コンサートにはユーリー・コジェヴァートフ(ピアノ)、吉田和子(ピアノ)、瀬野美和子(パーカッション)が出演、MCは白石純一でした。(撮影=丸山英樹)
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■2024年7月1日■

ムソルグスキー生誕185周年記念コンサート開く
カンディンスキー、オーケストラ版をピアノ版に編集し初演「禿山の一夜」
ユシュマノフ、「ボリス・ゴドノフ」、「死の歌と踊り」5曲熱唱
「展覧会の絵」、木曽真奈美の演奏で日本舞踊とクラシツクバレエが融合
藤間蘭黄と山本隆之がムソルグスキーとガルトマンを見事に演じ切る

 7月1日午後6時30分から、銀座・王子ホールでモデスト・ムソルグスキー生誕185周年記念コンサートが開かれました。コンサートはムソルグスキーの現代的魅力を解明するために、様々な試みが行われました。まず、ミハイル・カンディンスキーは「禿山の一夜」をオーケストラ版からピアノ版へと編集しなおした作品の初演で、聴衆も驚く技巧で演奏し拍手を浴びました。バリトンのヴィタリ・ユシュマノフは歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」より3曲、歌曲集「死の歌と踊り」より2曲を披露し、声楽の迫力ある高度の質量に感動しました。メインは「展覧会の絵」をムソルグスキーとガルトマンの物語として、藤間蘭黄(日本舞踊)、山本隆之(バレエ)、木曽真奈美(ピアノ)で舞台を構成、ロシア文化フェスティバルの独創的オリジナル作品として披露され、終演後何度も割れるような拍手が送られました。舞台全体をリードしたMCのいちのへ友里から、同じ王子ホールでのプーシキン生誕225周年記念コンサート(10月)にロシアの人気テレビ番組司会者・女優のマリヤ・カルポワが詩の朗読で出演することが発表され注目されました。(撮影=丸山英樹)

圧巻のパワー、テクニックで演奏――佐野真澄(ピアノ教育・音楽学)
 第1部の最初は、ピアノのミハイル・カンディンスキー。1曲目のムソルグスキーの若い時の思い出の作品「村にて」は、ロシア民謡のような単旋律の素朴なメロディーに始まり、のどかな明るいメロディーや、踊りのリズムも出てきて、清々しい空気が会場を包みました。2曲目は、この記念コンサートが初演となった、ムソルグスキーのオリジナル版をカンディンスキー自らピアノ独奏用に編曲した「禿山の一夜」。冒頭から荒々しい響きで始まり、ムソルグスキー独特の不協和音が耳に入ってきました。コルサコフ版のような整った形や響きではないけれど、ムソルグスキーの表現したかったものが、変拍子や和音などによって感じられ、だんだんと恐怖感も増して、強い興味を持って聞き入りました。荒々しさによって、かえって異様な世界の想像力を掻き立てられる感じがしました。フルオーケストラの曲を、ピアノソロで弾くパワーも圧巻でした。ピアノのあらゆるテクニックや表現方法を駆使し、緊張感とエネルギーを最後の音まで持ち続けた演奏は、凄まじいほどの迫力がありました。
 続いて、バリトンのヴィタリ・ユシュマノフが、歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」より、「我が魂は悲しむ」を、ボリスの矛盾した複雑な心境を見事に歌い上げ、ピアノの山田剛史もスケールの大きい演奏で盛り上げました。「私は最高権力を手にした」は、皇帝の内面の世界を開いて聞かせてくれました。ムソルグスキーの言葉とメロディーにこだわった作品に、ユシュマノフの気持ちも加わった素晴らしい歌声でした。「さらば我が子よ」は、様々な感情がこみ上げてきて、胸が熱くなりました。歌曲集「死の歌と踊り」より、「トレパーク」は、死神が老いた農民と踊るという不思議な世界を歌い、ピアノの背景の描写も心に残りました。「司令官」は、戦いや死者の現れる不気味なテーマの作品を、じっくり聞かせてくれました。ムソルグスキーの生きた時代、おかれた環境、大切にしてきたテーマなどが、残された作品と音楽家たちの気迫のこもった演奏で感じることができました。

ムソルグスキーとガルトマン、藤間蘭黄と山本隆之の世界――仙場真理(バレエ評論家)
 2部では、演出・振付・日本舞踊藤間蘭黄、振付・バレエ山本隆之、ピアノ木曽真奈美で『展覧会の絵』を大いに楽しませてくれました。藤間蘭黄がムソルグスキー役を、山本隆之が親友ガルトマン役を見事に演じ切りました。舞台上に日本舞踊とクラシックバレエの境は一切存在せず、そこにあるのは誰もが共感することのできる共通の言語とでも言うべきものでした。藤間と山本の踊りを曲が後押しして、一音一音が台詞の様に感じられ、観客は一気にムソルグスキーとガルトマン、藤間蘭黄と山本隆之の世界に引き込まれて行きました。それだけではなく、グランドピアノがあるだけの舞台上で、見えるものと見えないもの、生と死の世界までもが表現されていました。親友ガルトマンを失くしたムソルグスキーの悲しみ、若くしてこの世を去らなければならなかったガルトマンの虚しさを観客が同時に自分事として体験し、涙するほどの高度な表現力に終始圧倒されました。日本舞踊が面で表現する舞踊だとしたなら、バレエはアラベスクの線で面を包み込むような表現の舞踊だと感じられました。主人公の心中の奥深い思いは、舞台上に何もないからこそ明確に浮かび上がって来るものなのかもしれません。終には藤間蘭黄の顔がレーピンの描いたムソルグスキーの肖像画に見えてくるほどでした。木曽真奈美は『展覧会の絵』との運命的な出会いから始まり、この曲の根底に秘められている何かを探求し続けているピアニストです。そんな彼女の演奏だからこそ日本舞踊とクラシックバレエが一つに溶け合い、観客の心に同化し、引き込んでいったのだと思います。最後は一気に暗転となり舞台が終わったのですが、拍手は鳴り止みませんでした。ロシアと日本の芸術の見事な融合に感動し、心からの拍手を送ったコンサートでした。
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■2024年6月21日■

ムソルグスキー生誕185周年記念オペラ映画祭開く
ヴェラ・ストロエワ監督「ホヴァンシチナ」「ボリス・ゴドゥノフ」上映

 6月21日午後1時からM・ムソルグスキー生誕185周年記念オペラ映画祭が東京中央区の浜離宮朝日ホール小ホールで行われました。ヴェラ・ストロエワ監督の「ホヴァンシチナ」「ボリス・ゴドゥノフ」が懐かしい35ミリフィルムで上映され、ロシア革命以前のツアーリ帝国、ロシア帝国を題材にしたオペラでムソルグスキーの音楽を堪能しました。(撮影=丸山英樹)

ロシアの魂の象徴、重厚な史劇―――杉浦かおり(映画評論家)
 ムソルグスキーが手掛けるオペラは、興味を抱いた題材に関する資料集めに始まり、自ら台本を書く手間も厭わず、前例や慣習に囚われず、大胆自由に構築された音楽劇の新世界だ。旋律の美しさを追求しながら物語性を重視し、語り口の明瞭な朗唱を主軸に据えている。そんな超人的な作業に役所勤めの無理も重なり、有名な歌曲を残しながら未完成に終わった大作も多い中、唯一『ボリス・ゴドゥノフ』が数度の改稿を経て完成、その高評価を経て構想した遺作『ホヴァーンシチナ』と共に、ロシアの過去と未来に思いを馳せる重厚な史劇である。
 モスフィルム制作の二本の映画は、ボリショイ劇場全面協力のもと、戦後復興期の国力を注いで作られた、これぞロシアの魂、民衆と君主の姿の象徴とも言える作品で、雄大な屋外ロケや大群衆による暴動、炎上する教会のシーンなど、舞台ではかなわない迫力に満ちている。殊にヴェラ・ストローエワが演出した『ボリス・ゴドゥノフ』は、壮麗な宮廷と衣裳の豪華さ、眩しいまでの富と権力を握った皇帝の孤独と陰鬱など、映画ならではのスケール感と細やかな描写の対比が素晴らしく、どの場面を切り取ってもレーピンが描く歴史画のような見事さだ。ところで、新作映画はもちろんリバイバル上映の旧作もデジタル素材で投影される昨今、今回上映された二本の作品が日本公開当時の35㎜フィルムであるのも貴重な機会で、8㎜や16㎜よりも重く大きなリールが回転する音やフィルムチェンジのタイミングなど、会場全体に懐古的な通奏低音が響いたことも、映画祭という特別な場の雰囲気を盛り上げた。色褪せが少ないボリス…に比べると『ホヴァーンシチナ』の上映素材はすっかり褪色し、全篇赤く染色したモノクロ映像のようだったが、それでも画面にキズは無く美しく、何より音飛びが殆どなかったのも小さな奇跡かもしれない。なるほどこういった大作史劇の成功があって、ボンダルチュクの『戦争と平和』が撮られたのだ…と納得するモスフィルム史上の名作である。
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■2024年6月13日■

プーシキン生誕225周年記念映画祭を開催
モスフィルム提供で、「サルタン王物語」「ルスランとリュドミラ」上映

 6月13日午後1時から浜離宮朝日ホール小ホールにおいて、プーシキン生誕225周年記念映画祭が行われました。作品はモスフィルムの提供でアレクサンドル・プトゥシコ監督の「サルタン王物語」(1966年作)、「ルスランとリュドミラ」(1972年作)が上映され、ほぼ満員の観客(300名)は「楽しかった」と感想をのべていました。(撮影=丸山英樹)

CGもAIもない時代の特撮技術に脱帽―――杉浦かおり(映画評論家)
 プーシキンほど世界にその名が知られ、また実のところ読まれていない作家がいるだろうか。現代ロシア語の祖とされ、ロシア人なら誰でも学校で暗誦させられた詩の幾つかを憶えているものだが、詩は翻訳に馴染まない。韻を踏んだ音の響きや言葉遊びを丸ごと楽しめる映像化作品は、ロシア語が第一言語ではない文芸ファンには有り難いもの。ましてその演出を手掛けたのが、映像の魔術師プトゥシコともなれば…!
 『ルスランとリュドミラ』はプーシキンが21歳で発表した直後から大人気の物語詩。200年後の現代でも新作アニメが評判になるほどの魅力に満ちた冒険譚だ。古代キエフ公国を舞台に、陰謀や嫉妬の渦巻く世界で、侵略者を斥けて仲間と団結し、誘拐された姫を救い出して王の信任を得て明るい未来を思い描く勇者の振る舞いは、幼い読者の行動規範であり、タタールの軛(くびき)を脱してスラヴ民族主導の国家を建てたロシアの創世物語でもある。
 『ルスランとリュドミラ』の大成功から11年、プーシキンが最初に刊行した詩集に収めた『サルタン王物語』は、民話をもとにした純然たるファンタジー。運命の出会い、愛と信頼、強欲と妬みが引き起こす悲劇、別離と冒険…煌めく宝石や超人的な力の出現、思いがけない展開で夢心地にさせるだけでなく、知恵と勇気を讃え、問題解決後の寛容を説く道徳的な側面も強く、なるほどこれは最強の児童文学だと再認識。二つの物語は、ドキドキハラハラする展開と共に、おとぎ話の祝祭感にあふれていて、映画祭の会場も笑い声が湧き起こる明るい空気に包まれていた。歌いながら、踊りながら、金の木の実を割ってエメラルドを出して見せるリス。白鳥が変身する王女。産まれ落ちるや成長して母を支える王子。勇者を待ち受ける巨人。凍りついた異国…。CGもAIも無い時代に職人技で作られた夢の特撮技術に脱帽しながら拍手喝采の一日を過ごした。
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■2024年6月6日■

アレクセイ・ナイデョーノフ=ヴァシュメット室内楽オケコンマス(チェロ)を迎えて
ドミトリー・フェイギン夫妻と室内楽の夕べ
カサド、オッフェンバック、レスピーギ、プロコフィエフで詩情豊かな一夜

 ヴァシュメット、グッドマン、レーピン、トレチャコフらと共演し、ヴァシュメット室内楽オーケストラ・コンサートマスター、モスクワ音楽院教師として活動しているアレクセイ・ナイデョーノフ(チェリスト)を日本に招待して、ドミトリー・フェイギン(チェリスト、東京音楽大学教授)と新見フェイギン浩子(ピアノ)の室内楽の夕べが開かれました。6月4日茅ケ崎MKホール、6月6日東京・サロンドパッサージュで開催され、ガスパール・カサドの「無伴奏チェロ組曲」(ナイデョーノフ)、ジャック・オッフェンバックの「2台のチェロのためのデユオOP54」(ナイデョーノフ&フェイギン)、オットリーノ・レスピーギの「チェロとピアノ アダ―ジョと変奏曲」(ナイデョーノフ&新見フェイギン浩子)、プロコフィエフの「チェロとピアノのソナタOP119」(ナイデョ―ノフ&新見浩子)を詩情豊かに演奏、アンコールでショスタコヴィチの「プレリュード」を演奏し、アットホームな楽しい一夜に幕を閉じました。(撮影=丸山英樹)

温みのある音色で滑らかにーー佐野真澄(ピアノ教育・音楽学)
 東京サロン・ド・パッサージュにおいて、チェリストのドミトリー・フェイギンとピアニストの新見フェイギン浩子の「室内楽の夕べ」が行なわれました。最初に、新見フェイギン浩子から、今回はドミトリー・フェイギンの子供時代からの大親友で、共に学び、兵役にも一緒に行った、チェリストのアレクセイ・ナイデョーノフをモスクワから招き、再会し演奏できることは大変嬉しく、一日も早く平和な日が来るように心を込めて演奏します、という挨拶がありました。1曲目は、そのナイデョーノフのカサド作曲「無伴奏チェロ組曲」。Ⅰ:温かみのある音色で滑らかにメロディーが奏でられ、低音は深く響きました。Ⅱ:民族調のメロディーが生き生きと演奏されました。Ⅲ:スペイン情緒漂うリズムや、魂の込められた音が心の叫びのように感じられました。2曲目は、オッフェンバック作曲「2台のチェロのためのデュオop.54」。明るく輝かしく優雅な雰囲気のフェイギンと、力強く深い音を持つナイデョーノフとの2人のハーモニーは美しく、よく響き合っていました。とても気持ちよさそうに弾いていたところも印象的。もう少し広い会場で聞いてみたかったです。後半は、ナイデョーノフと新見フェイギン浩子の演奏。3曲目は、レスピーギ作曲「チェロとピアノ アダージョと変奏曲」伸びやかなメロディーで始まり、チェロとピアノの様々なテクニックと、多彩な表現の中、会話したり、寄り添ったりしながら、優しく華やかにどっしりと終りました。今日の最後の曲は、プロコフィエフ作曲「チェロとピアノのソナタop.119」。Ⅰ:静かに始まり、次第に緊張感が高まり、明るいメロディーは、深呼吸したくなるような気分になりました。Ⅱ:ピアノの不協和音、チェロのリズミカルでユーモラスなメロディーが耳に残りました。互いのメロディーが絡み合いながら高揚して、一緒に私の気持ちも高まっていくのを感じました。Ⅲ:軽やかに生き生きと演奏が始まり、いかにもプロコフィエフといったチェロの響きはもちろん、音楽の背景を表すピアノも素晴らしかったです。アンコールは、ショスタコーヴィッチ作曲「プレリュード」。2台のチェロとピアノの美しいハーモニーで終わりました。
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■2024年5月28日■

チェーホフ記念モスクワ芸術座来日、チェーホフ原作「決闘」日本公演実現
連日満員、嵐の拍手とスタンデングオベーションの盛りあがり
イヤホンガイド同時通訳は栗原小巻さん、若い世代の観客目立つ

 モスクワ芸術座一行34名は、5月25日に成田空港に到着、26日に歓迎パーティ―に臨み、都内観光も行いました。27日に舞台設営、リハーサルを夜遅くまで行い、28日に初日公演、29日、30日、31日に最終公演を行い、6月1日にGR807便で成田空港から帰国しました。公演は連日満員、嵐のような拍手とスタンディングオベーションで大きく盛り上がりました。
 上演作品は、ァントン・チェーホフの「決闘」で、脚本・演出はアントン・ヤコブレフ、翻訳は安達紀子、イヤホンガイド同時通訳は栗原小巻、日本側舞台監督は広瀬雷光、キャストはラエフスキー役=アレクサンドル・ウソフ、フォン・コーレン役=エドゥアルド・チェクマゾフ、サモイレンコ役=イーゴリ・ゾロトヴィツ゚キイ、ナジェージダ・フョードロヴナ役=マリヤ・カルポヴァでした。
 観客は、ロシア語を学ぶ若い世代も多く、また、1958年の初来日公演や1988年の3回目の公演に参加した熟年の人々、特徴的だったのはかつてなく在日ロシア人の参加が目立ったことです。「「決闘」とても感激しました!!日本にいながら、ロシアの藝術文化を体感できて幸せです。」(60代、女性)、「モスクワ芸術座「決闘」はさすがスタニスラフスキーのシステムに基づいた厚みのある存在感、演出を最後まで堪能させていただきました。本物のロシア演劇を拝見するのは初めてでした。とても楽しく面白く感じ入りました。」(50代、女性)、「素晴らしかったです。俳優の方がたはもちろん、美術や音楽、道具の使い方など洗練されていて効果的で、さすがだなーと思いました。「決闘」という作品は知らなかったけど、チェ-ホフらしくて、笑いつつ、涙が出ました。」(50代、女性)、「面白くて素敵なパフォーマンスでした。舞台装置や演出がとても気に入りました。特に決闘の場面です。俳優たちがお互いにではなく、会場に銃を向けたことが印象に残りました。モスクワ芸術座のファンになりました。」(20代、学生)――観客は口々に「感動した」「素晴らしかった」と笑顔で語りながら帰宅の途についていました。(撮影=丸山英樹)

みごとな舞台化、人物たちは舞台で躍動!
――モスクワ芸術座の『決闘』を観て 矢沢英一(ロシア文学者)

 モスクワ芸術座の過去三回の日本公演の演目には必ずチェーホフ劇が含まれていた。今回も唯一の演目がチェーホフの『決闘』である。これにはおそらく、日本人が抱くチェーホフへの独特の親近感というものが考慮されているのだろう。ただし今回はチェー ホフの戯曲ではなく、小説の舞台化(2010年初演)である。チェーホフの中期以降の小説では量的に最も大きく、人物の内面描写が多い『決闘』(1891年)がどのように舞台化され得るのか。観る前は期待と、正直危惧も抱いたが、それは杞憂に終わった。脚本も手掛けたアントン・ヤーコヴレフの演出は全体を2幕18場にまとめ、簡素な装置を駆使しながらテンポよくドラマを展開させる。人物たちは、まるで小説の世界から解き放たれたかのように舞台で躍動し、ときおりチェーホフ特有の噛み合わない会話で観客の笑いを誘う。ロシア語に馴染みの薄い日本人観客には、簡潔で生彩に富む邦訳(安達紀子)の、栗原小巻氏による絶妙なイヤホンガイドが有難い。
 舞台はコーカサスの海に面したリゾート地。海辺の茶亭に集まる常連客の一人、ラエーフスキイ(アレクサンドル・ウソフ)は、2年前に首都ペテルブルグでの「空虚な」生活に嫌気がさし、人妻のナジェージダ(マリヤ・カルポヴァ)と駆け落ちしてこの地にやってきた。額に汗して働くために。だが葡萄園を作るという計画は早々に破綻し、今は気乗りのしない役所勤めをしながら、懶惰な日々を送っている。しかもナジェージダへの愛も冷め、彼女との関係に「けりをつける」ために当座の費用を親友サモイレンコ(イーゴリ・ゾロトヴィツキイ)に無心する始末。そんな彼を動物学者のフォン・コーレン(エドゥアルド・チェクマゾフ)は痛烈に批判し、社会から抹殺すべきだと主張する。二人はことあるごとに対立し、最後は決闘をする破目になる。
 芸術座の名優たちが演じる彼らのドラマを追っていくと、思わぬ発見がある。例えば絶えず舞台を激しく動き回るラエーフスキイには軽佻浮薄な一面が垣間見え、その分フォン・コーレンの批判がまっとうに思えたりする。それに、小説ではさほど目立たないポベードフ輔祭(ヴァレーリイ・トロシン)の存在感。周囲の人物たちを誰より冷静に観察しているのも、決闘の場面で物陰から「彼、殺される!」と叫んでフォン・コーレンの手元を狂わせ、ラエーフスキイ殺害を阻止するのも輔祭である。
 その決闘の前夜、ナジェージダの不倫の現場を目撃してしまったラエーフスキイは、不意に彼女が自分の犠牲者であったことに気づき、これまでの「嘘に嘘を重ねた」己れの過去に慄然とする。この劇のクライマックスともいうべきラエーフスキイの覚醒は、モノローグという形でじかに観客に伝わる。ここからドラマは急転する。決闘は、ラエーフスキイが銃を上に向けて撃ち、フォン・コーレンが撃ち損じたことで終わる。三か月後、この地を去るフォン・コーレンは、ナジェージダと正式に結婚したラエーフスキイの仕事に没頭する姿を目の当たりにし、自分の判断が間違っていたことを喜ぶ。二人は和解して別れる。
 最終場面。フォン・コーレンの乗ったボートが波に弄ばれるのを眺めながら、ラエーフスキイはつぶやく――「大丈夫…。一歩下がって二歩進む…。たどりつけるよ…たどりつくはずだ…」。観客はさらにこれに続く小説末尾の彼の内面の独白(「人生もこれと同じだ…。真実を求めて、人は二歩前進しては一歩後退する。(略)そして誰が知ろう、彼らはまことの真実に泳ぎつけるかもしれないのだ…」)を思い浮かべることだろう。
 モスクワ芸術座の『決闘』は、チェーホフの晩年の四大劇につながる豊饒な世界にわれわれを誘ってくれた。
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■2024年5月26日■

モスクワ芸術座37年ぶりの来日、歓迎パーティ―開く
栗原小巻、N・ノズドレフ大使、M・リアイサン団長が挨拶
藤間蘭黄、I・ゾロトヴィツキィが乾杯

 5月25日QR806便で成田空港に到着したモスクワ藝術座一行34名は、疲れも見せず元気に都内ホテルにチェックイン、翌26日正午から歓迎パーティ―が行われました。最初に栗原小巻=ロシア文化フェスティバル日本組織委員会副委員長・女優が歓迎の挨拶、続いてニコライ・ノズドレフ駐日ロシア連邦大使が祝辞をのべました。モスクワ芸術座34名を代表して団長・劇団副支配人のミシャリナ・リアイサンが日本への公演招待に感謝の言葉をのべました。栗原小巻からリアイサンに花束が贈呈されました。
 この間、MC=いちのへ友里、通訳=鍋谷真理子&K・ヴィノグラ―ドフで運営・進行されましたが、日本公演随行の通訳―鍋谷真理子・上世博及・岩岡博信・荒井雅子が俳優・スタッフの皆さんに紹介されました。乾杯の音頭を日本舞踊家の藤間蘭黄、モスクワ芸術座演劇学校校長イーゴリ・ゾロトヴィツ゚キィによって行われました。記念撮影なども行われ友好に満ちた歓談・交流と食事を楽しみました。芸術座全員に日本組織委員会より日本民芸品のプレゼントが渡されました。
 27日は舞台設営とリハーサルがおこなわれ、イヤホンガイドの準備と当日配布のカタログがセットされ、翌28日の本番体制が完了しました。(写真撮影=福井学)
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■2024年4月26日■

イーゴリ・コルプ、アレクサンドル・ヴォルチコフを迎えて
第10回BALLET TRADITIONで「カルメン」上演
プロデユ―ス・演出は田北志のぶ

 田北志のぶによる第10回BALLET TORADITIONは、4月26日午後6時30分より東京都品川区のきゅりあん大ホールで開催されました。マリインスキー劇場プリンシパル(元)・現・ベラルーシ国立ボリショイ劇場芸術監督のイーゴリ・コルプ、ボリショイ劇場プリンシパルのアレクサンドル・ヴォルチコフを招いて、「カルメン」、「海賊」より「花園の場」、「ショピニアーナ」を上演、高度なテクニっクと表現力を楽しみました。コロナウイルスとウクライナ戦争など困難な情勢を乗り越えてたくましく舞台を創り上げてゆく田北志のぶのバレエの創造と教育への情熱に心うたれます。(撮影=丸山英樹)

自然な演技と巧みなテクニックーー仙場真理(バレエ評論家)
 2015年から始まったBALLET TRADITIONは、今回の公演で10回目となりました。第1部の『海賊』より「花園の場」は第3回目の公演、『ショピニアーナ』は第1回目の公演の再演となります。第2部の『カルメン』は第5回目の上演演目でもあります。今回の『カルメン』ではゲストに田北志のぶのキエフ時代からの友人であるボリショイ劇場のアレクサンドル・ヴォルチコフと元マリインスキー劇場のイーゴリ・コルプを迎えました。ヴォルチコフと言えば『スパルタクス』のクラッスを思い浮かべる人も多いことでしょう。しかし、ドン・ホセ伍長役もボリショイ劇場で2012年に初演しています。彼の高度な表現力によってホセの心の弱さと狂気の演じ分けを存分に楽しむことができました。また、コルプのバレエには心憎いほどに自然な演技と巧みなテクニックを感じました。
 『海賊』と『ショピニアーナ』の両方で魅せていたのは、華やかさと正統性でした。正しい振付による正統派クラシックバレエを正しく学び観客を喜ばせていました。乗りやすいリズムや自分も踊ってみたいと観客の体が動き出してしまうようなコンサートもたくさんある昨今ですが、クラシックバレエは、作曲家、振付家、指導者たちが歴史の混沌の中で生み出した作品を現代において正しく理解し、表現し、観客を楽しませる物であるとするなら、今日は子ども達からベテランアーティストまでが一斉にその点を目指し頑張ったコンサートだったと思います。メドーラ役の石津紫帆、ギュルナラ役の大城美汐、オダリスク役の古川茉帆、荒木彩、冨士原凜乃の踊りはクラシックバレエの様式美を十分に表現しており、美しさの中にも私たちさえ背筋を伸ばしてしまうほどのノーブルな感じが溢れていました。子ども達も厳しいレッスンを頑張ってきた成果が表れており、今後が楽しみです。川島麻美子と厚地康雄の演技はどこか夢の中に迷い込んだような現実離れした景色を醸し出していました。ソリストも群舞も重さを全く感じさせない表現には終演後も酔いしれるほどでした。バレエコンサートを観客に楽しんでもらいたいという気持ちだけでなく、正しいバレエを正しく次世代に伝えようとする田北志のぶの譲れない主張を強く感じる公演でした。
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■2024年4月23日■

ロシア新星コンサート2024を開催
レフ・ジュラフスキー(クラリネット)―抒情豊かに、そして詩的に
エリザヴェ―タ・クリュチェリョーヴァ(ピアノ)―高いテクニック、親しみやすい音色
アンドレイ・タラヌハ(パーカッション)―シロフォン、スネアドラム、トンバクで多彩な表現
横浜(Aプログラム)・市川&さいたま(Bプログラム)で聴衆に感銘あたえる

 サンクトペテルブルク音楽会館と提携するロシア新星コンサート2024は、4月23日横浜市・神奈川県民ホール小ホール、24日市川市・市文化会館小ホール、25日さいたま市・市文化センター小ホールで開かれました。第17回チャイコフスキー国際コンクールで第3位入賞のレフ・ジュラフスキーは、シューマン「3つのロマンス」、ガーシュイン&コン「3つの前奏曲」などを抒情性豊かなクラリネット演奏で拍手を浴びました。エリザヴェ―タ・クリュチェリョーヴァ(ピアノ)は、ショパン「幻想ポロネーズ変イ長調」、ムソルグスキー「展覧会の絵」などを高度な技術で親しみやすい音色で奏でました。アンドレイ・タラヌハは、シロフォン、スネアドラム、ドンバクによるショパン「幻想即興曲嬰ハ短調」、アぺルギス&ハロン「Le Corps aCorps」などを多彩に創造性豊かに演奏し注目されました。ロシア音楽界の新しい動向としてのチャイコフスキー国際コンクール「ゲルギエフ時代」に導入された木管楽器、金管楽器の重用で今後一層の活躍が期待されます。(撮影=丸山英樹)

3人の若き才能に惜しみない拍手ーー佐野真澄(ピアノ教育・音楽学)
クラリネットの繊細なメロディーが美しい・横浜公演
 神奈川県民ホール小ホール(4月23日・横浜)におけるロシアの新星コンサート2024は、クラリネットのレフ・ジュラフスキー、ピアノのエリザヴェータ・クリュチェリョーヴァ、パーカッションのアンドレイ・タラヌハの3人が出演。まず1曲目はジュラフスキー(Cl)、クリュチェリョーヴァ(P)によるシューマン作曲3つのロマンスop.94。第1曲、切ないメロディーで静かかに始まり、ピアノと絡み合うクラリネットの繊細なメロディーが美しい。第2曲、穏やかで温かなメロディーを、まるで語りかけているかのように演奏。第3曲、リズミカルなメロディーに優しく寄り添うピアノ。シューマンらしさの感じられる好演でした。2曲目は、タラヌハ(木琴)、クリュチェリョーヴァ(P)のショパン作曲幻想即興曲。この曲を木琴で聞くのは初めて。2本のバチで高速のパッセージを見事に演奏。アレンジも良く、ピアノのオブリガートも心に残りました。3曲目もタラヌハで、ゲラシメツ作曲スネアドラムのための「Asventuras」。2本のスティックを打ち鳴らしながら登場。歯切れのいいリズム、2つ打ちからのロールの美しさは言葉に出来ないほど。全くブレない体幹を持っている。4曲目はクリュチェリョーヴァ(P)で、ショパン作曲幻想ポロネーズ。彼女は何といっても柔らかい音が魅力的。何かを秘めた前奏で始まり、自然に流れるメロディーに導かれていく感じ。ここぞというところの輝きのある音が耳に残る。最後の和音も静かな光のようでした。第2部は、ジュラフスキー(Cl)で、コヴァーチ作曲クラリネットソロのためのR・シュトラウスのへのオマージュ、から始まりました。「ティルオイレンシュピールの愉快ないたずら」のモチーフが見え隠れする楽しい曲。リズミカルでカラフルな音色は、まるでお話を聞いているかのようでした。続いて、ジュラフスキー(Cl)とクリュチェリョーヴァ(P)で、ガーシュイン作曲コン編曲3つの前奏曲。第1曲は、切れの良いリズムとメロディーに乗せられて、第2曲は、クラリネットを持ちかえてアンニュイな雰囲気で、第3曲は、強烈なシンコペーションが印象的。ピアノとのハーモニーも絶妙でした。後半3曲目は、クリュチェリョーヴァ(P)の、リスト作曲メフィストワルツ第1番。黒のドレスで登場。高度な技術を見せるというより、内面の表現を大切にしていて、次々に出てくる様々な情景を多彩な音色で弾き分けて演奏。夜鳴きウグイスの声から、一気に盛り上がりを見せた最後は会場を熱気で包み込みました。もう1曲ピアノで、チャイコフスキー作曲プレトニョフ編曲「くるみ割り人形」よりアンダンテ・マエスト―ソ。装飾的なアルペジオが散りばめられた伴奏の中に、優雅で上品なメロディーが奏でられて、バレエの情景が思い浮かぶような壮大な演奏でした。最後は、タラヌハ(トンバク)で、アペルギス作曲ハロン編曲「Le Corps à Corps」。何かつぶやいている所から始まり、イランの太鼓トンバクを左脇に抱えて、両手と10本の指だけでなく、かなりの早口で言葉でもリズムを刻む。会場に何か生き物がいるかのように目線を走らせたり、体の向きを急に変えて止まったりする。気配や恐怖みたいなものも感じました。トンバクで無数の音を叩きだす技術は目を見張るものがありました。いずれも、とても興味深いプログラムでした。

輝きのある鐘の響きに満たされた・市川公演
 市川市文化会館小ホール(4月24日・千葉)において、ロシアの新星コンサート2日目が行なわれました。1曲目はジュラフスキー(Cl)とクリュチェリョーヴァによる、ヴィドール作曲序奏とロンドop.72。澄んだピアノの音で始まる洒落た序奏、伸びやかな音色のクラリネットが様々な表情を見せるフランスの華やかな作品を、若さあふれる2人が生き生きと演奏しました。2曲目は、タラヌハ(木琴)とクリュチェリョーヴァ(P)の、ショパン作曲幻想即興曲。ピアノの右手5本の指で弾くのも大変なメロディーを、2本のバチを交互に動かして、ピアノよりずっと大きい音板(鍵盤)の木琴で弾くのは、とっても大変なことなのに、更に音もまろやか。原曲にはないピアノのメロディーとの二重奏が印象的でした。3曲目もタラヌハで、ゲラシメツ作曲スネアドラムのための「Asventyurs」。木製のスティック2組と、ソフトなマレットやブラシを使って、スネアドラムのいろいろな部分を叩いたり、手でなでたりしてリズミカルに演奏。ドラムの上で頬杖をついたり、スティックを立てて音を止める休符も忘れられない。前半の最後はクリュチェリョーヴァ(P)の、ムソルグスキー作曲「展覧会の絵」より。Ⅲ、子どもたちの声をマットな響きで表現。Ⅴ、ひよこの鳴き声がなんともかわいらしい。プロムナード、和音の響きのバランスが取れていて、ピアノを良く鳴らしていました。Ⅶ、街の喧騒が聞こえてきました。Ⅷ、音の重ね方、ペダルの使い方に工夫が見られて、不思議な響きが聞こえました。Ⅸ、鬼気迫るものを感じ、内声、低音の深い音が耳に残りました。Ⅹ、厳かに始まり、流れるように音楽が進み、コラールの音色も一種独特。高低様々な鐘の音が次第に壮大になっていき、会場内は輝きのある鐘の響きに満たされました。第2部もピアノソロからで、チャイコフスキー作曲主題と変奏op.19-6。6つの小品の中の6曲目とは思えないほど、内容の充実した作品。チャイコフスキー独自のテクニックで書かれた12曲の変奏を、1曲ずつ丁寧に演奏して魅力的でした。続いてタラヌハ(木琴)、クリュチェリョーヴァ(P)によるヴェルレ作曲ラグタイムメドレー「Golden Age」。前奏からワクワク。ピアノのラグタイムの伴奏にのって、愉快なメロディーが次々に出てくるおもちゃ箱のような曲で、木琴の楽しさが存分に伝わってきました。後半3曲目は、ジュラフスキー(Cl)とクリュチェリョーヴァ(P)の、サラサーテ作曲バルダー編曲ビゼーの歌劇「カルメン」の主題による幻想曲。おなじみのピアノの前奏に続いて、クラリネットのテクニック満載のメロディーと多彩な音色を自在に使った間奏曲。リズムに身を委ねて、どんどん装飾されていくメロディーを楽しんだハバネラ。様々な音型を軽やかに演奏して引き込まれたセギディ。最後のジプシーの歌は、ピアノとの息もぴったりで、テンポが速くなって演奏者も会場も熱くなって大いに盛り上がって、ブラボーの声が上がりました。最後はタラヌハ(トンバク)の、アペルギス作曲ハロン編曲「Le Corps à Corps」。トゥン、トゥトゥンという言葉からはじまり、声の音程を変えたり、舌を鳴らしたり、思い切り息を吸う音、ささやく声も出して、ある種弾き語りともいえる作品。もちろん手も10本の指も最大限に使いつつ、その上に演劇の要素も入った複雑な曲。会場全体を一瞬止めてしまうようなエネルギーも持ち合わせていて、今日の聴衆の方々は、タラヌハの声とトンバクの音とリズムは深く心に残ったことと思います。

気迫のこもった演奏、並々ならぬエネルギーの衝動・さいたま公演
 さいたま市文化センター小ホール(4月25日・埼玉)において、ロシアの新星コンサート最終日が行なわれました。1曲目は、ジュラフスキー(Cl)とクリュチェリョーヴァ(P)の、ヴィドール作曲序奏とロンドop.72。クラリネットが自由に即興的に序奏を奏で、さわやかなメロディーを気持ちよさそうに吹き、フランス的な和声の色彩をピアノと鮮やかに表現していました。2曲目はタラヌハ(木琴)、クリュチェリョーヴァ(P)で、ショパン作曲幻想即興曲。木琴で、メロディーに表情を付けて、音階も滑るように演奏。中間部のしっとりとしたトレモロも心に響き、ピアノとは違った魅力がありました。ピアノパートの編曲が素晴らしいのに、編曲者はわからないそうで残念でした。3曲目もタラヌハで、ゲラシメツ作曲スネアドラムのための「Asventuras」。スティックを打ち鳴らしながら登場して、今日はそのまま曲に入っていきました。4日間聞きましたが、日々進化していくのを感じました。はじけるリズム、間の取り方はもちろん、特にロールの美しさは格別。正確さの中に自然のゆらぎがあり、砂がザーッと流れ落ちているような音にも聞こえてきました。ドラムマーチあり、ボレロのリズムあり、聴きどころ見どころ満載の楽しい演奏でした。続いてクリュチェリョーヴァ(P)の、ムソルグスキー作曲「展覧会の絵」より。淡いピンクベージュの星の刺しゅうが散りばめられたロマンチックなドレスで登場。確かな技術を持ちながら、かっちりしすぎないところがいい。彼女のほど良いルバートが胸の奥の琴線に触れる。一瞬の煌めきと音楽を支えるずっしりとした低音の響きは印象に残りました。第2部は、チャイコフスキー作曲「主題と変奏」op.19-6、のピアノソロから始まりました。ロシア的な、しみじみとした3拍子のテーマが美しい。変奏曲ですが、練習曲と言っていいほど技術的に様々なものを要求される曲を、歌心をもって、それぞれの特徴を生かして表現していました。テンポ感もとても良かったです。後半2曲目はタラヌハ(木琴)、クリュチェリョーヴァ(P)の、ヴェルレ作曲ラグタイムメドレー「Golden Age」。前奏から木琴の音がポンポン会場に飛び出していき、ラグタイムのリズムに乗せて、速いパッセージあり、グリッサンドあり、ゆったりとしたメロディーはトレモロで、楽しいメロディーが次から次へと出てきてあっという間に終わってしまいました。メロディーの木琴とリズムパートのピアノのハーモニーも聞かせてくれて、最後もバッチリ決まりました。続いてジュラフスキー(Cl)、クリュチェリョーヴァ(P)の、サラサーテ作曲バルダー編曲ビゼーの歌劇「カルメン」の主題による幻想曲。華やかな前奏に続き、確認「カルメン」の有名なメロディーが次々に現れる中、クラリネットはずっと高い技術を求められて、装飾されたメロディーを息を吸う間もないくらい、たたみかける様に演奏して吹き切って、会場中を熱くしました。今回のコンサートの一番最後はタラヌハ(トンバク)で、アペルギス作曲ハロン編曲「Le Corps à Corps」。この曲も4日間披露して、どんどん気迫のこもった演奏になっていったことは驚きました。「取っ組み合い」というタイトルですが、内容は、馬車とカーレーサーの言い合いから、観客なども登場してきて、(最初から太鼓の気持ちというものも表現していて、)次第にエスカレートして取っ組み合いになって、最後はレーサーが気を失う、といったようなストーリーがあるそうです。言語も何語でもいいという指示があるそうですが、タラヌハは英語だったそうです。会場の観客の気持ちを、?⇒興味⇒期待、へと動かしていったエネルギーは並々ならぬものを感じました。今年も、若さあふれる3人の演奏にどの会場も惜しみない拍手が送られました。これからの活躍を見守りたいと思います。
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■2024年4月22日■

ロシア文化フェスティバル2024オープニングコンサート開催
サンクトペテルブルク音楽会館からジュラフスキーらソリスト3名参加
中村初恵(ソプラノ)松田華音(ピアノ)前橋汀子(ヴァイオリン)が熱演
ニコライ・ノズドレフ新ロシア連邦大使、栗原小巻が代表あいさつ

 2006年から開催されてきたロシア文化フェスティバルIN JAPANは18回目を迎えましたが、クラシツクコンサートとしては異例の開幕でした。メールによる不当な誹謗中傷と爆破予告のために、警察署とホールなどとの協議相談のうえ、特別な警備体制を敷き、入場に際しては手荷物検査を行うなど厳重警戒のなかで開演されましたが、満員の聴衆の皆様のご協力により、整然と演奏が行われ、感動のコンサートとなり終演しました。
 冒頭、ニコライ・ノズドレフ駐日ロシア連邦大使と栗原小巻ロシア文化フェスティバル日本組織委員会副委員長の挨拶があり、フェスティバル開催の祝賀と日ロ文化交流の前進を祈念しました(全文別項)。ピアニストの木曽真奈美さん、メゾソプラノのワレンチナ・パンチェンコさんからお二人に花束の贈呈が行われました。
 最初にソプラノの中村初恵(ピアノ=長尾洋史)がロシアの国民的詩人プーシキン生誕225周年を記念して「ツアールスコエセローの彫像」「私は憶えている、あの美しい瞬間を」など5曲を演奏、松田華音(ピアノ)はムソルグスキー生誕185周年・リムスキー=コルサコフ生誕180周年を記念して、「古典様式による間奏曲」「熊蜂の飛行」など4曲を演奏しました。続いて、サンクトペテルブルク音楽会館から派遣された3人のソリストが登場、レフ・ジュラフスキー(クラリネット)はリムスキー=コルサコフ/V・ゲートマン「歌劇・金鶏の主題による幻想曲」を、アンドレイ・タラヌハ(パーカッション)はスネアドラム、トンバクの演奏を、エリザヴェータ・クりュチェリョーヴァ(ピアノ)はチャイコフスキー/プレトニョフの「くるみ割り人形」組曲より「アンダンテ・マエストーン」をそれぞれ演奏しました。最後に前端汀子(ヴァイオリン、ピアノ=松本和将)がプロコフィエフ「ヴァイオリンソナタNO2、OP94第一楽章・第2楽章、チャイコフスキー「感傷的なワルツ」、ヴィエニャフスキ「モスクワの思い出」を演奏しました。厳重警戒のなかで開かれた日ロ合同コンサートでしたが、演奏者の感動的な熱演で大きな拍手で盛り上がったオープニングとなりました。コンサートの成功のために尽力いただいたヒラサ・オフィス、ジャパンアーツ、中村初恵事務所、紀尾井ホール、警視庁麹町警察署・立川警察署、アーバンセキュリティ、フラワートップ、ヴォートル、サンクトぺテルブルク音楽会館、駐日ロシア連邦大使館、ロシア連邦文化協力庁駐日代表部に感謝申し上げます、(撮影=丸山英樹)

栗原小巻・ロシア文化フェスティバル副委員長の挨拶
 ロシア文化フェスティバル2024オープニングコンサートにお出でいただきました観客の皆様。ご出演下さるロシアと日本の素晴らしい芸術家の皆様。ご挨拶いただきましたニコライ・ノズドレフ大使閣下。当フェスティバルに関わって下さいました全ての皆様に、日本組織委員会として深く感謝いたします。
 サンクトペテルブルク音楽会館より派遣され来日されました3人のソリストの方がたには心より感謝申し上げます。
 Дорогие Елизавета Ключерёва, Лев Журавский и Андрей Тарануха!
 Мы очень рады приветствовать молодых виртуозов из России!
 Мы хотели бы выразить сердечное уважение и глубокое признание вашего творчества.
 Мы очень благодарны за возможность насладиться ностоящей музыкой!
 ロシアで研鑚を積み、実績を重ねる中村初恵さん。松田華音さんはモスクワで学び、優秀な成績でモスクワ音楽院を卒業、世界を舞台に活動。尊敬する前端汀子さん、ロシアとのかかわりも深く、17歳で現サンクトペテルブルクの音楽院に留学、輝かしい実績で、日本を代表するヴァイオリニスト。皆様の真の芸術、心から嬉しく思っております。
 芸術文化交流、今はとても厳しく、難しい時代です。この長い夜が、明ける時にー。私達は芸術の中に、真実と愛情を見つけたい。そのような思いで、本年のロシア文化フェスティバル実現しました。
 一つ一つの音色、その思いが、紀尾井ホールの会場全体に、お一人お一人のお心に、深く、染み入ると信じています。皆様、最後までどうぞごゆっくり、ご鑑賞下さい。スパシーバ

ニコライ・ノズドレフ駐日ロシア連邦大使の挨拶
 尊敬する芸術ファンの皆様!親愛なる友人の皆様!
 毎年恒例のロシア文化フェスティバルのオープニングにあたり、心からのご挨拶を申し上げます。ここ日本で2006年から実施されているロシア文化フェスティバルは伝統的に人気を博し、観客数は18年間で2千3百万人以上になっております。私達はフェスティバルを準備する時、できる限り規模の大きなものにしたい、文化・芸術を熟知している日本のファンの多彩なニーズに合ったものにしたいと努力して参りました。今年のプログラムの構成は、映画祭、代表的なバレエダンサーの公演、演劇、クラシック音楽の名手によるコンサートなどです。本年のプログラムでは、かねてよりロシアでの音楽教育、あるいは合同コンサートという共通項で結ばれ、既に日本の目の肥えた観客に愛されているロシアと日本の若手アーチストが特別重要なポジションを占めております。ここで、フェスティバルの組織運営に携わっている方々に、ご支援とご協力に対し心から御礼申し上げます。私達は準備の全ての段階で、このご支援とご協力を常にひしひしと感じておりました。思えば、フェスティバルは新型コロナウイルスの困難な時期を生き抜きました。私達は現在の世界政治・経済における乱気流をも共に乗り越え、フェスティバルは今後も、相互の尊敬・信頼促進という自らの大切な役割を果たすだろうと、私は確信しております。有り難うございました。

盛り上がった日ロ音楽家合同のコンサートーー佐野真澄(ピアノ教育・音楽学)
 オープニングコンサートでは、最初にソプラノの中村初恵が、全てプーシキン作詞で、キュイ作曲「ツァールスコエセローの彫像」、グリンカ作曲「私は憶えている、あの美しい瞬間を」、リムスキー=コルサコフ作曲「高みから舞う風のように」、「たなびく雲はまばらになり…」、ラフマニノフ作曲「歌うな、美しい人よ」を情感込めて歌い、聞く機会の少ないロシアロマンスをたっぷり楽しませてもらいました。情景が思い浮かぶような長尾洋史のピアノも心に残りました。次に、ピアニスト松田華音がムソルグスキー作曲「古典様式による間奏曲」を、力強さと、透明な美しさにあふれた演奏をして、若き日の作曲家の音楽を感じることができました。スクリャービン作曲「2つの詩曲」op.32は、対照的な2曲の奥行きのある表現力に、心動かされました。ラフマニノフ作曲「リラの花」は、清々しく、花の香りが漂ってくるかのようでした。ロシアの人々が、今頃この花が咲くのを待ち望んでいるだろうなぁ…と想いを馳せました。リムスキー=コルサコフ作曲ラフマニノフ編曲「熊蜂の飛行」は、推進力と緩急のある演奏で会場を大いに沸かせました。
 続いてサンクトペテルブルクからの新星3人の演奏。まずはクラリネットのレフ・ジュラフスキーがリムスキー=コルサコフ作曲V・ゲートマン編曲歌劇「金鶏」の主題による幻想曲を披露。金鶏の鳴き声で始まり、鮮やかなテクニックと透明感のある軽快な音色に魅了されました。ピアノのクリュチェリョーヴァとの息もぴったりでした。2人目はパーカッションのアンドレイ・タラヌハが、A・ゲラシメツ作曲スネアドラムのための「Aventuras」を演奏。躍動感のあるリズムを様々なバチと奏法で打ち出して、スネアドラムの魅力を堪能させてもらいました。響線をオフにして手の指でこする音が忘れられないです。イランの太鼓トンバクのJ・アぺルギス作曲D・ハロン編曲「Le Corps à Corps」は、奏者とトンバクが同化していて、物凄いスピードで、自在に身体と手のひらと10本の指と言葉で、リズムと音の高低を刻み、すっかりタラヌハの世界に引き込まれました。3人目はピアノのエリザヴェータ・クリュチェリョーヴァが、チャイコフスキー作曲M・プレトニョフ編曲「くるみ割り人形」より「アンダンテ・マエスト―ソ」を演奏。聞こえてくるのは優雅なメロディーですが、フルオーケストラの音を1人で演奏するような、とてつもない難曲を、余裕の感じられる美しさで会場に響かせました。柔らかく、しなやかな音の中の、輝きのあるパッセージが印象的でした。
 コンサートの最後はヴァイオリンの前橋汀子で、プロコフィエフ作曲「ヴァイオリンソナタ第2番第1・2楽章」。心なごむメロディーや、ヴァイオリンとピアノのおどけた対話など、これぞプロコフィエフといった曲を披露し、熱演しました。松本和将のピアノも美しく寄り添っていました。チャイコフスキー作曲「感傷的なワルツ」は、心にしみ入るメロディーを情感たっぷりに演奏し、ヴィニャフスキー作曲「モスクワの思い出」は、大変技巧的な作品を見事に弾き切り、赤いサラファンのヴァイオリンの気持ちのこもったメロディーに、ロシアへの思いが募りました。最後は音楽的にも盛り上がって、会場全体が熱い拍手に包まれました。
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■2024年3月29日■

スプリングバレエインテンシブ2024in東京
大勢の子どもたちがロシアバレエを研修

 日本ワガノワバレエ協会(アンドレイ・オルロフ理事長)主催のスプリングバレエインテンシブ2024in東京は3月29日から31日まで3日間、東京都新宿区 芸能花伝舎を会場に開催されました。マスタークラスで、7~9歳のAグループ、10~12歳のBグループの2つに分かれて行われました。教師は、グルナラ・サファロワ(バクー国立音楽大学大学院准教授)、アレクサンダー・ミシューチン(モスクワ藝術大学バレエ講師)、ビクトル・ニジェリスコイ(スタニスラフスキーシステム専門家)、アレクサンダー・アントノフ(マリインスキー劇場舞台デザイナー)、アレヴディナ・KAGIYA(ワガノワバレエアカデミー講師)、アンドレイ・オルロフ(ワガノワバレエアカデミー日本校代表)、エレーナ・グラドコフスヤ(ワガノワバレエ・振付家)、KOIKE SAORI(クレムリンバレエ劇場プリンシパル)。
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■2024年3月1日■

タルコフスキーの名作「ストーカー」上映
東京・ラプタ阿佐ヶ谷

 アンドレイ・タルコフアスキーの名作「ストーカー」が3月1日から7日まで、東京・ラプタ阿佐ヶ谷で上映されました。
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■2024年2月24日■

レオニード・アニシモフ演出「かもめ」オンライン公演
湖畔の田舎屋敷を舞台に様々な人々の群像劇

 アントン・チェーホフ作、レオニード・アニシモフ演出のTOKYO NOVYI ARTによる「かもめ」オンライン公演は2月24日・25日におこなわれました。「チェーホフが伝えたかった“考え、思い、感情”だけを俳優が生き生きと表現する」ことをめざして制作された「かもめ」公演は大勢の視聴者に感銘をあたえました。
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■2024年2月12日■

ミハイル・カンディンスキーピアノリサイタル
SENZOKU GAKUEN 100TH ANNIVERSARY
ラフマニノフ、バラキレフら7曲を演奏、感銘の拍手

 2月12日14時より、洗足学園大学シルバーマウンテン1Fでミハイル・カンディンスキー ピアノリサイタルがラフマニノフ生誕150年記念の続編として開催されました。
 演奏された曲目は、リスト=「なぐさめ」第3番変ニ長調、バラキレフ=ポルカ嬰へ短調、ソナタ第2番変ロ短調、シューベルト=ラフマニノフ「せせらぎ(どこへ)」、ビゼー=ラフマニノフ=メヌエット、チャイコフスキー=ラフマニノフ=子守歌、ラフマニノフ=コレルリの主題による変奏曲OP42の7曲でした。ロシアの自然、抒情―ラフマニノフの音楽世界に引き込まれ楽しいひとときとなりました。
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■2024年1月19日■

第6回現代ロシア絵画展開会中
石井現代ロシア美術館

 東京・吉祥寺の石井現代ロシア美術館では、第6回現代ロシア絵画展を開催中で、1月19日から12月15日まで金・土・日曜日に10時30分から17時まで開館です。
 芸術至上主義の現代ロシア写実主義絵画をテーマに感動的な風景画、「青い霧」S・ネシチィームスイ、「モスクワ郊外の冬」F・シャパーエフ、「山の冬」O/アヴァキシャンなどが展示されています。
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■2024年1月12日■

「戦争と平和」4部作一挙上映!
トルストイ原作、ボンダルチュク監督、6時間半を超す超大作
東京・Morc阿佐ヶ谷で開催

 1月12日~25日に東京都杉並区のMorc阿佐ヶ谷において、レフ・トルストイ原作、監督・脚本・主演がセルゲイ・ボンダルチュクの「戦争と平和」4武作が上映されました。最初に公開されたのは1965年で、モスクワ国際映画祭最優秀作品賞を受賞、第41回米国アカデミー賞外国映画賞など多くの映画賞を受賞している作品です。日本においても何度上映しても大勢の人々に感銘をあたえている名画です。
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