12月29日午後3時から銀座ヤマハホールで、ヴィタリ・ユシュマノフ バリトンリサイタルが開かれました。プログラムは、シャルル・グノーの歌劇「ファウスト」より「祖国を離れる前に」、ヴェルディの歌劇「リゴレット」より「悪魔め、鬼め」、「仮面舞踏会」より「お前こそ心を汚すもの」、「ドン・カルロ」より「私の最後の日が参りました」、チャイコフスキーの歌劇「スペードの女王」よりエレツキー公爵のアリア、ラフマニノフの歌劇「アレコ」よりアレコのカヴァティーナ、の6曲で一部を終了しました。二部は、レハールのオペレッタ「メリー・ウイドウ」よりダニロ登場の歌、「ロシア皇太子」よりヴォルガの歌、「パガニーニ」より「女たちに口づけするのが好きだッた」、「ほほえみの国」より「君はわが心のすべて」、ロルツ゚イングの歌劇「密猟者」より「ほがらかで陽気」、コルンゴルトの歌劇「死の都」よりピエロの歌、カールマンの「サーカスの女王」より「夢物語のような二つの瞳」を演奏しました。ピアノはマエストロでピアニストの園田隆一郎。(写真撮影=丸山英樹)
会場に響き渡る熱い歌声に感動――佐野真澄(ピアノ教育)
銀座ヤマハホールにおけるヴィタリ・ユシュマノフ バリトン・リサイタル。にこやかに登場して、1曲目は、グノー作曲歌劇「ファウスト」より「祖国を離れる前に」を、表情豊かにソフトで伸びのある声で歌いました。続いて流暢な日本語で、今日のコンサートは「ドイツやオーストリアのジルベスタコンサートのような名曲のプログラムにしたいと思って、前半はオペラ中心、後半はオペレッタを中心にしました。そして、マエストロでもある園田隆一郎さんの、オーケストラのようなピアノ伴奏でお届けします。」と話しました。銀座ヤマハホールのデビューでもあるそうです。次にヴェルディ作曲の、歌劇「リゴレット」より「悪魔め、鬼め」という激しい曲を険しい表情で歌い、迫力があってオペラを観ているようでした。歌劇「仮面舞踏会」より「お前こそ心を汚すもの」は、ドラマチックな、厚みのあるピアノの響きにのせて気持ちよさそうに歌っていました。リリカルなピアノの高音も印象的でした。
ここでユシュマノフは退場し、ヴェルディ作曲3曲目は、歌劇「「ドン・カルロ」より「私の最後の日が参りました」。ピアノで始まり、音楽の流れる中で登場するという演出で、友情のアリアを最後まで切なく、熱く歌い、声量も素晴らしく、会場に響き渡りました。次に、チャイコフスキー作曲歌劇「スペードの女王」よりエレツキー公爵のアリア「貴女を愛しています」の美しいメロディーを、張りのある美声で歌いました。ラフマニノフ作曲歌劇「アレコ」よりアレコのカヴァティーナの、出だしの声にはしびれました。どこまでも伸びやかな声がラフマニノフの曲想にのって登りつめていく感じ。寄り添うピアノの響きも心に残りました。
第2部は、レハール作曲オペレッタ「メリー・ウィドウ」よりタニロ登場、から始まり、ジルベスタコンサートにふさわしい、女好きのタニロの楽しい歌でした。次のロルツィングはドイツの作曲家で、俳優でもあって19世紀前半大人気だった人。歌劇「密猟者」より「朗らかで陽気」は、劇中では、ずるくて抜けてる伯爵が誕生日に陽気に歌います。ピアノとの掛け合いも楽しく、耳にも心にも優しく響く、ずっと聞いていたい声で、明るい気持ちになりました。続くレハール作曲オペレッタ「ロシアの皇太子」よりヴォルガの歌は、独特の響きとリズムが興味深かったです。コルンゴルト作曲歌劇「死の都」よりピエロの歌は、甘い声質がロマンチックなメロディーに合っていて、ユシュマノフにぴったりな曲だと思いました。ピアノの音もキラキラしていました。カールマン作曲オペレッタ「サーカスの王女」より「夢物語のような二つの瞳」は、少しもの悲しいメロディーが心に響きました。レハール作曲オペレッタ「パガニーニ」より「女たちに口づけするのが好きだった」は、リズミカルで盛り上がる素敵な一曲。最後は、レハール作曲オペレッタ「ほほえみの国」より「君はわが心のすべて」。私に歌ってくれているような錯覚に陥り、夢のような気持になりました。アンコールは、レオンカバッロ作曲「歌劇「ザザ」からと、小椋佳作曲「愛燦燦」の2曲。ユシュマノフの、心温まる歌声をたっぷりと味わうことのできた、素晴らしいリサイタルでした。満席の会場も熱気にあふれていました。
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