Archive for 3月, 2020

モスクワ通信『川と緑と廃墟と・・・宿場町トルジョクを歩く!』

日曜日, 3月 15th, 2020

ポジャルスキー・カツレツ発祥の地であり、エレガントな金の糸刺繍で有名な、宿場町トルジョク。モスクワとサンクトペテルブルクを繋ぐ古都は、川の流れる緑豊かな美しい町です。散策してみましょう。

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△トルジョクのプーシキン広場のプーシキン像。

国民的詩人プーシキンも、何度もこのトルジョクを訪れ、ポジャルスキーの宿屋のポジャルスキー・カツレツが大好物だったと聞いて、トルジョクのプーシキン博物館を訪れてみました。

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△トルジョクのプーシキン博物館(入場券は大人1人100ルーブル)

プーシキンが初めてトルジョクに立ち寄ったのは、1811年6月。サンクトペテルブルクのリツェイに入学することになった甥をモスクワから送って行ったときでした。その後、1826年からは毎年のように、時には1年に複数回も立ち寄ったようで、合計23回もここを訪れたという記録が残っています。

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△プーシキンは、妻に宛てた手紙のなかでもご馳走になった美味しいポジャルスキー・カツレツやクワスについて書き綴った他、たくさんの手紙を書いて何度となくトルジョクの郵便局へ足を運びました。

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△当時のトルジョクの町での人々の暮らしが再現されていました。

さらに時代をさかのぼり、12世紀のトルジョクのクレムリンへ向かいました。

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△トルジョクのクレムリン (Новоторжский кремль 入場券は大人1人50ルーブル)

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△クレムリン内の高台からトルジョクの町を一望できます。

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△クレムリンのすぐ隣にあるボリソグレプスコイ男子修道院(Борисоглебской мужской монастырь)。

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△▽教会の中を見学した後、横にある小さな博物館へ。トルジョクの歴史をさらに深く知ることができます。

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△この修道院の敷地内の聖堂は、トルジョクの近くの村で生まれ帝政ロシア時代に活躍した建築家ニコライ・リボフ(Николай Александрович Львов 1819−1853)の作品です。トルジョクをはじめ、サンクトペテルブルクやモスクワにもたくさんの優れた建築作品を残しました。トルジョクの近くにあるお屋敷(Усадьба Знаменское-Раёк・写真右上、右下は屋敷内の客間)や、丸石の橋(Валунный мост・写真左中央)などもぜひ見てみたくなり、足を伸ばすことにしました。

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△町を流れるトヴェルツァ川にかかる橋のたもとで見つけたリボフ像。

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△トルジョクの町の北、建築民俗野外博物館ヴォシリョヴォ(Архитектурно-этнографический музей под открытым небом “Василево”)のなかにある、リボフ設計の丸石の橋(Валунный мост)

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△建築家としてだけでなく、植物学者で園芸家、また詩人や音楽家としての顔も持つリボフの作品は、まさに総合芸術!この橋も“石のシンフォニー”と称されています。

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△さらに車を走らせ、次はズナメンスコエ・ラヨクの邸宅(Усадьба Знаменское-Раёк)へ。

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△今はすっかり廃墟のようになってしまっていますが、目を閉じると舞踏会の音楽や人々のざわめきが風に乗って聞こえてきそうな。当時の栄華を感じさせるとても美しい場所でした。

トルジョクの町のなかにも、廃墟と化した美しい建物がたくさんありました。

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△例えば、町の中心部にあるこちらの聖堂(Спасо-Преображенский собор)。しかし一歩なかへ入ると・・・

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△宗教弾圧によりソ連時代には内部が工場として使われましたが、現在は再び十字架とイコンが置かれ祈りの場所になっています。資金不足で修復が難しいまま今日に至っているとのことでした。

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かつて栄え、そして廃れ、歴史が凝縮された味わい深い町です。

モスクワ通信『本物の金が織り込まれたトルジョクの金の糸刺繍』

火曜日, 3月 10th, 2020

宿場町トルジョクといえば、ポジャルスキー・カツレツの他にもう一つ忘れてはならないのが、金を混ぜ込んだ糸で縫った刺繍製品 Торжокские золотошвеиです。9〜10世紀頃にはじまったと言われ、12世紀からトルジョクの伝統手工芸として受け継がれてきました。

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本物の金(や銀)が縫い込まれているのでその輝きはとてもエレガント!

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クレムリンをはじめ、ロシアのさまざまな場所・職業の制服で伝統的に使用されている刺繍ワッペンもトルジョク製が多いのだそうです。

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△トルジョク市内のお土産ショップではどこでも素晴らしいコレクションを見ることができました。

次はこの金の刺繍の博物館を訪れてみましょう。金の糸刺繍を深く知るためには4つの文化センターがあり、トルジョクにあるのはそのなかの2つ。

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△ひとつめは、金の糸刺繍で祈りの言葉が施された12mの帯が展示されている帯の家(Дом пояса)

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△そしてこちらの金の糸刺繍の博物館(Музей Золотного шитья)です。

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△入り口を入るとまずは、トルジョクの街の地図や観光名所、伝統的な四季の暮らしを描いた大作が飾られていました。

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△プーチン大統領をはじめ数々の著名人がここを訪れ、また素晴らしい作品が贈られたことがわかります。

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△大クレムリン宮殿のアンドレーエフスキー・ホールにも。

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△トルジョクはモスクワとペテルブルクの間の宿場町として発展してきました。両都市を象徴する建物を刺繍にした傑作も数多く保管されています。

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△この展示室では、古く貴重な初期の刺繍作品をみることができます。

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△古都トルジョクには美しい教会や修道院もあり、金の糸が神々しく輝く教会やイコンにまつわる刺繍作品も多くみられます。

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△16世紀の裁縫道具セットやこんな可愛らしい16世紀ヨーロッパ製の指貫入れも展示されていました。

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△刺繍に使われている糸には5〜8%の金が入っているため、しなやかですがしっかりとして硬い糸です。そのため通常の刺繍のように刺して布地を傷めないように、図柄に合わせて金の糸を布地の表面に固定し、それを絹の金糸で縫い付けるという独特の手法が使われています。

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△金の糸刺繍を体験してみたい方には、マスタークラスもあります。

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△次の展示室には、歴代の傑作が展示されていました。

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△『豊穣』

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△『石の花』しばらくうっとりと眺めていると、案内の方がサプライズで電気を消しました。するとどうでしょう・・・!暗い中で金色が光りだしました。

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△モスクワからトルジョク、そしてサンクトペテルブルクまで馬車で向かう様子が描かれている『モスクワからサンクト・ペテルブルクへの旅(Путешествие из Москвы в Санкт-Петербург)』。エレーナさんのお話では、プーチン 大統領はこの作品を大変気に入り、サンクトペテルブルク出身でロシアの大統領としてモスクワで執務する自らの人生に重ね合わせてイメージされたのか、ぺテルブルクからモスクワへ向かう逆のバージョンのものをお持ちなのだとか。 ご自宅に?それとも執務室に?この素敵な作品をどこに飾っていらっしゃるんでしょう。

建物内にはショップも併設されています。

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ベルベットの布に映える金刺繍のポーチは種類も豊富!どれも素敵で迷ってしまいます。美しいクッションカバーも記念に購入しました。

 

золотошвеи https://zolotoshveya.com/museum

モスクワ通信『ポジャルスキー・カツレツ発祥の地で伝統レシピのお料理教室』

木曜日, 3月 5th, 2020

ロシア料理のメイン料理で人気のカツレツ!よく知られているのは、カリカリの衣とジューシーなチキンのなかから、とろーりとバターが溶け出してくる“キエフ風カツレツ”です。日本ではカツレツといえば、パン粉の衣をつけて揚げているものを想像しますが、ロシアでは、ハンバーグのように丸めて油で焼いているものもカツレツと呼んでいます。でも、もうひとつ、私の大好きなカツレツは・・・ “ポジャルスキー・カツレツ”!

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△右がシンプルな“カツレツ”、左が“ポジャルスキー・カツレツ”です。

カリカリの衣の中には、ミンチしてバターと混ぜたふわふわトロトロの鶏肉が入っているカツレツです。多くのお店では、キエフ風カツレツと見た目でも区別するために、“キエフ風カツレツ”は目の細かいパン粉で、“ポジャルスキー・カツレツ”は、衣がわりにクルトンをつけて揚げたりしています。

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そんな“ポジャルスキー・カツレツ”の発祥の地をご存知でしょうか?モスクワとサンクトペテルブルクの間にある美しい町トルジョクのある宿屋で誕生したと言われています。かつては馬車で行き来していた二大都市の間に位置し、ここで馬を休ませたのです。現在はモスクワ都心部から車で約2時間半〜3時間です。ここで名物“ポジャルスキー・カツレツ”の楽しいお料理教室があると聞いてやってきました。

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△待ち合わせの場所カフェ・リラ(КАФЕ «ЛИРА»)へ到着すると、美しい民族衣装姿の女性が“パンと塩”で迎えてくださいました。

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ロシアでは伝統的に、大切なお客様をお迎えする際にはこの“パンと塩”の儀式を行います。カラバイと呼ばれる飾りをつけたふわふわの白いパンの真ん中には塩をのせた小皿があり、お客様は順番にパンをちぎって塩につけていただきます。

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△美しい飾りパンを食べてしまうのが惜しいような気がして、恐る恐るパンをとろうとすると「もっと大きくたっぷりお取り!出会えた幸せを喜ぶ儀式なんだから、たっぷりとね!!」一口頬張るとふんわりとしてまだ焼きたて!(最後にはお土産に持たせてくれます。)横にいる女性は「こちらもどうぞ!」と、ロシアの夏の風物詩クワス(黒パンを発酵させて作った炭酸飲料)を差し出してくれました。

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パンと塩の儀式が終わると建物のなかへ。続けて女性は自己紹介をはじめます。「皆様ようこそ!私の名前はダリヤ・ポジャルスカヤ。ここトルジョクにあった宿屋の女主人よ。」そう、この女性がかつてポジャルスキー・カツレツを考案した人物になりきって、私たちにこの宿場町や宿屋の歴史、ポジャルスキーカツレツが誕生するまでのストーリーを語ってくれる劇場風お料理教室なのです。

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一角にクッキング・スペースが作られており、ダリヤさんの説明に合わせてもう一人の女性が調理を始めました。レシピは1853年当時のまま。まずは丸ごとの鶏肉から骨を丁寧に取り除きます。それから包丁でトントンと挽肉状になるまで細かくしていきます。

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△「細かくすればするほど、おいしくなるのよ!そして、ここが大事なポイント!お肉が1キロなら、バターは500g入れるの。そう、恐れずにお肉の半分の量のバターを入れること!」

細かくしたお肉と溶かしたバターしっかりとよく混ぜ合わせたら塩胡椒で味付けをします。(ロシアのバターは無塩バターが主流なので、塩を加えます)お肉の準備ができたら今度はパン粉作り。

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△各面に違う用途のおろし金が付いているチョルカでパンを削っていきます。野菜をスライスしたり細切りにするのにも便利で、ボルシチに使うビーツなどお野菜を細くするときなどもよく使われるロシアではポピュラーなキッチン用品です。

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ここで私もお肉を丸めて成形してみることに。ちゃんとコック帽とナイロン手袋も用意されていました。お肉を丸めて、溶き卵を水で薄めた液に浸し、最後にパン粉をふんわりとつけていきます。「なんて上手なのかしら!あなた才能あるわ」優しいダリヤさんが優しく太鼓判を押してくれます。

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あとはこんがりときつね色になるまで油(バターも少し)で揚げて出来上がり!

さっそく揚げたてを試食しながら、ランチの始まりです。

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△サラダとボルシチ、そしてメインはもちろん、котлеты «Пожарские» ポジャルスキー・カツレツ!デザートのリンゴケーキも優しいお味で気に入りました。

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△ポジャルスキーの宿屋の評判を聞きつけて国内外の著名人が宿泊し、なかでも詩人プーシキンはポジャルスキー・カツレツが大好物だったとか。ニコライ1世もその味を称賛し、ペテルブルクの都へ呼んでカツレツを作らせたという説も。

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△こちらが本物のダリヤ・ポジャルスカヤさんの肖像画。お衣装だけでなく顔の雰囲気も、ちょっぴり今日のダリヤさんに似ていますね。

さて、ポジャルスキーの宿屋の建物は現在も残っていると聞いて、こちらも訪れました。

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△ミュージアム複合施設『ポジャルスキーの宿』Музейный комплекс «Гостиница Пожарских»

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△現在は宿屋ではなく素敵なカフェになっていました。

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そして、なんとこちらのカフェの名物は・・・

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△ポジャルスキー・カツレツ!いえ、ポジャルスキー・カツレツそっくりのケーキ!(150ルーブル)

カフェの奥は、ギャラリーとコンサートも出来そうなホールがあり、一角が小さなトルジョク陶器ミュージアムになっていました。

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△ポジャルスキーの宿屋を描いたお土産用の陶器がカフェ店内にも飾られていました。

ポジャルスキー・カツレツのお料理教室に参加したカフェ・リラや、かつてポジャルスキーの宿屋だった建物でポジャルスキー・カツレツ・ケーキが食べられるカフェ以外にも、トルジョクの街はどのレストランも食堂もその店自慢のポジャルスキー・カツレツがあるようです。

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△例えばこちらユルベスは、1992年にユーラとヴェーラとサーシャの3人で創業。3人の頭文字が店名になっています。こちらのレシピは革命前の料理本をベースにしており、変わらぬ味を提供しているのだそう。

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△自慢のポジャルスキー・カツレツ2種!油で揚げるかわりにオーブンで焼いているので、カリッとヘルシーな衣です。

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△ナイフを入れると熱々の肉汁とバターがとろ〜り!

他にも、トルジョク駅のビュッフェでも・・・

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△もちろんあります“ポジャルスキー・カツレツ”!

伝統レシピの“ポジャルスキー・カツレツ”を伝授していただいたので、ぜひお家で再現してみたいと思います。