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ロシアのワーレンキ、その歴史と進化! 後編

日曜日, 3月 16th, 2025

ブログ前編では、ワーレンキ博物館のツアーに参加して、伝統的な冬のフェルトブーツ「ワーレンキ」の作り方について学び、昔ながらのスラブの生活を体験しました。後編ではワーレンキの歴史をたどりながら、進化するワーレンキを追いかけます。

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△ロシアにおけるワーレンキの生産地を示した地図。1917年以前(赤)と1917年以降(緑)で色分けされています。

ロシア革命前は、伝統的な手工業が地方都市に集中していましたが、革命後はソビエトの工業化政策の影響で、生産地が広範囲に拡大していきます。

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△「祖先のワーレンキ」コーナーでは、さまざまな貴重な昔のワーレンキが展示されていました。こちらは100年以上前の礼装用のワーレンキ。全体に美しい刺繍が施されています。タタルスタン共和国ククモルの工場から寄贈されたものです。19世紀半ばまで、ここにはワーレンキ製造で最大級のコマロフ兄弟の工場がありました。

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△第二次世界大戦中に兵士たちに支給されたワーレンキの数は1億足以上とも言われています。長く厳しい冬に、兵士たちの足を守ったこのブーツの存在が、勝利の大きな要因のひとつになったと歴史家たちは考えています。

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△第二次世界大戦では最高軍司令官代理で戦後は国防大臣を務めたゲオルギー・ジューコフのワーレンキ。

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△その後登場したブルキ(бурки)は、高品質の白いフェルトと革で作られた冬ブーツです。ソ連時代の映画などでも見かけるこの美しいブーツは、1920年代から50年代にかけて、政府の指導者や高官、軍人など当時の社会のエリート層に人気の高級な履物でした。

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△一方、農村では、ラプキ(лапки)と呼ばれる伝統的なわらじのような靴を履いていました。菩提樹や白樺などから作られていて、オヌーチ(онучи) と呼ばれる靴下のように足に巻いて保護する布と一緒に使われていました。

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△その後、ゴム製のカバーや靴底などが作られるようになりました。

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△世界の伝統的な履物を紹介するコーナーには日本のわらじも発見!ほかには、モンゴルの乗馬に適した形になっているフェルトブーツや、オランダの木靴、ハンティ・マンシースク管区のトナカイ皮のブーツなどがありました。

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△ヤロスラヴリやククモル(タタールスタン)など、国内の主要工場のワーレンキも展示されていました。

 

そして、伝統的な履物から進化したワーレンキの芸術的な価値が大きく見直されたのは、ロシア連邦文化省の後援で2000年に開催された展覧会「ワーレンキ」が大きなきっかけとなりました。

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△繊細な刺繍が施されたもの、色鮮やかにペイントされたもの、ファーやビーズで装飾されたものなど。

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△シンプルなワーレンキからインスピレーションを得てクリエイターたちが制作した作品が並びます。

 

つづいては、2009年に開催されたワーレンキのコンクール受賞作の数々。

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△日本のアーティスト高梨真澄さんから寄贈されたマトリョーシカチャーム付きのワーレンキもありました。

 

さて、こうして伝統的な履き物からアート作品として進化したワーレンキですが、現在のモスクワの街中では見かけないのか?というと、実はこんなお洒落なブーツになっていました。

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△1月にご紹介したロシアのショール「プラトーク」と「ワーレンキ」を組み合わせたバッグ&ブーツは、ロシアの冬のおしゃれにぴったり!値段もとってもお手頃なので、私も思わず2足購入。

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△可愛らしいデザインの子ども用も。ほかにも、スリッパなどのフェルト小物も展開されていました。

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△こちらはモスクワにあるワーレンキをテーマにしたロシア料理レストラン。季節ごとのディスプレイが楽しい入り口前の大きなワーレンキが目印。ワーレンキ型のケーキもおすすめですよ。

見て楽しい!履いて温かい!ロシアの冬を満喫するのにぴったりのワーレンキから今後も目が離せません!

ロシアの伝統的なフェルトブーツ、ワーレンキ博物館へ 前編

日曜日, 3月 16th, 2025

ロシア伝統的な羊毛フェルト製ブーツ「ワーレンキ(варенки)」をご存知ですか?

極寒の冬を耐え抜くための必需品として長い歴史を持ち、マトリョーシカ人形や湯沸かし器のサモワールと同様に、しばしばロシアをイメージするアイコンのひとつにも挙げられます。

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そんなワーレンキの魅力を探るべく、モスクワにある「ロシアのワーレンキ」博物館を訪れました。

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△建物の一角が予約制のミュージアムになっており、ショップも併設されています。2001年冬のオープニングにはなんと、ワーレンキを履いた本物の熊が登場、民族舞踊グループと共にダンスを披露してメディアで話題になりました。

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△通りの角にある博物館の入り口(左)とワーレンキのお店の入り口(右)

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△ちいさなミュージアムですが、ワーレンキの歴史と魅力が詰まっています。

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△親子ツアーに参加し、ワーレンキづくりの工程について学びます。みんな興味津々!

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△1920年代の貴重なモノクロ写真で、昔のワーレンキの工場の様子を見ることもできました。この工場は、ニジニ・ノヴゴロドで1903年にミトロファン・スミルノフによって設立された「スミルノフと息子たちの蒸気フェルト履物工場」で、ソ連時代に国有化され、「ニジニ・ノヴゴロド第一国立フェルト履物工場」となりました。

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△ワーレンキの原料となるのは、良質な羊の毛のみ!一般的に、女性用のワーレンキづくりには約1,500グラム、男性用には2,000グラム以上のウールが必要とされています。

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△ワーレンキの起源については諸説ありますが、古く13世紀ごろまで遡るともいわれています。羊毛は、もともとは遊牧民の住居ゲルなどに使用されており、その後ロシア全土に広がっていきました。寒冷な気候の中で、足元を暖かく保つための実用的な履き物としてワーレンキは愛用されてきたのです。

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△選別された羊毛を梳き、不純物を取り除くための櫛など伝統的なワーレンキ造りで用いられる実際の道具を手に取り、それぞれの使い方の説明を聞きます。

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△昔ながらの製造工程で使用されるのは、フェルト化の工程の前に羊毛の絡まりを解いて、繊維を均等に並べる重要な役割を担っている機械。熟練の職人が手動でハンドルを回して作業していきます。

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△大小さまざまなローラーがあり、羊毛が次第にほぐれながらシート状に広がっていきます。ローラーの表面には、金属の細かい針やブラシが付いていて、均一に整えるのに役立ちます。「手でさわってみてもいいですよ」に子どもたちは大喜び!

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ぬるま湯を浸透させてフェルト化します。マットの上で湿った羊毛を圧縮しながら擦ったり転がしたりしていくと、羊毛の繊維同士が絡み合い、生地が収縮して、密度が高く丈夫になり、保温性にすぐれたブーツになります。このとき、適度な湿り気の調整に熟練の技が必要なのだそうです。

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△布状になったフェルトで型紙を包むようにしてワーレンキの形を成型していきます。「つま先やかかとにウールを多く使用することで、強度と柔軟性が確保されます。縫い合わせる必要がないので針も糸も必要ありません。縫い目がない分とても気密性があり丈夫で長持ちします。」

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△成形が完了した後、木型にはめたまま数日~1週間かけて自然乾燥させてさらに強度を高めます。「生地が縮んでこんなに小さくなるんですよ!そのため完成形を見越して、かなり大きく型を用意しておかなければなりません。」

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△「スラブの生活」を可愛らしく再現したコーナー。ワーレンキとともに、昔から使われている道具を体験することができます。粉を挽いてペチカ(ロシア式の暖炉)でパンを焼き、水汲みに出かけてサモワール(ロシア式の湯沸器)でお湯を沸かしお茶を飲んだり、糸を紡いで機織りをしたり・・・

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△時代が違えば、毎日こんなお手伝いが日課だったのかしら?

(左)水汲みをするための天秤棒。両側に木桶がついているのが一般的ですが、ここはワーレンキ博物館らしくワーレンキがついていました!これでもかなりの重さがあり、「実際は水の入った桶をぶらさげて家まで歩くなんて」と驚きます。

(右) 鋳鉄鍋をフォーク状の鉄の器具で持ち上げて、いかにこの時代の女性たちの家事が重労働だったかを想像してみます。「今は空っぽだけれど、このなかには熱々のキャベツスープがたっぷり入っていたの。気をつけて運ばなくちゃね!」

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△揺りかごの上の赤ちゃん人形もちいさな可愛らしいワーレンキを履いていますね。

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△ツアーの最後は、特大ワーレンキを履いて記念撮影!

羊毛の山から頑丈で温かなフェルトのブーツ「ワーレンキ」が誕生する過程や職人の技術に、ツアーに参加した親子全員が感嘆の声を上げていました。

(後編へつづく)