Archive for 12月, 2014

2014年総括、そして2015年展望

金曜日, 12月 26th, 2014

2014年もフェスティバルblogにお付き合いくださいましてありがとうございました!日本組織委員会の長塚英雄事務局長に今年のフェスティバルを総括していただきました。

――2014年を振り返ってどのような感想をお持ちですか。

長塚――2014年は、新潟と東京2都市で盛大に開幕し、ヤングジェネレーションイベント8本を含む60本のプログラムが展開されましたから、かつてないめまぐるしいフェスティバルでした。

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△初開催の新潟オープニング

このフェスティバルをめぐる情勢も、プーチン大統領来日参加が予定されていましたがウクライナ問題で急変、国際情勢も日ロ関係も悪化する中で、国際文化交流とこれまで築いてきた絆を大切に維持する努力をおこなってきました。4月に栗原小巻副委員長が、10月に鳩山由紀夫委員長がフェスティバルを継続発展させるためにモスクワを訪問、交流を深めたことも9年間で初めてのことでした。

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△栗原副委員長のロシア訪問(4月)

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△鳩山委員長のロシア訪問(10月)

ロシア天才少年コンサートでは300名の幼稚園児を前に演奏しましたが、大人顔負けの静かな鑑賞態度で驚きましたし、日本映画大学と全ロシア国立映画大学の共催イベントも実現し、今後の大学間交流を促進しました。モスクワ・マラジョージヌイ室内オーケストラと洗足音楽大学との交流もすすみました。フェスティバルには以上のようなエピソードがたくさんありますが、マリア・マクサコワの歌声を聞いた91歳のご婦人が感動して「生きていてよかった」と感想をのべたことが忘れられません。

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△東京オープニングで歌声を披露するマクサコワ。その後パーティで両国代表と。

――2015年はどのような展望をお持ちですか。

長塚――2015年は、日露和親条約160周年とロシア文化フェスティバルIN JAPAN10回記念をテーマにした重要な節目のフェスティバルになります。プログラムは、スタニスラフスキー&ダンチェンコ記念バレエ劇場、マルク・ゴレンシテイン指揮オーケストラコンサート、オブラスツォワ・ロシア歌曲コンサート、フェドセーエフ指揮チャィコフスキー・シンフォニー・オーケストラ、シュ―キン演劇大学劇団公演、ポリャンスキー指揮ロシア国立交響楽団、マックス・ラグジュアリー日本デビューコンサート、日露和親条約160周年記念展、国立サンクトペテルブルグ・アカデミーバレエ公演など重量級のイベントがそろいました。

しかし、ご承知のようにプログラムを支える財政は、ルーブルと円の異常な安値とウクライナ問題の経済への影響などにより、きわめて厳しい情況です。予定されたプログラムを遂行するためには市民の皆様のご協力、ご支援が必要です。

12月8日のクロージングセレモニーに対するセルゲイ・ナルイシキン国家院議長のメッセージにありましたように、「2017年から2021年の5カ年協定を2015年オープニングセレモニーで調印」するために、両国組織委員会は全力をあげて邁進するものです。

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△公式サイトの開催プログラムよりご覧頂けます。

2015年版ポスター&パンフレットは、来年1月にもいち早くこちらのblogで皆様にお披露目できたらと思っております!それでは皆様、良いお年を・・・!

 

(写真=公式リポートより 撮影=丸山英樹)

栗原小巻さんが新たな「桜の園」に挑む!

火曜日, 12月 23rd, 2014

そして、来たる2015年の幕開けに栗原小巻さんから演劇のプレゼント!

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すでに『桜の園』のラネーフスカヤ役はもちろん、トルストイ『アンナ・カレーニナ』アンナ役、チェーホフ『三人姉妹』イリーナ役、『かもめ』ニ―ナ役などたくさんのロシア作品のヒロインを演じ、また登場人物の衣装デザインなどを手がけることで作品への思いを深め、舞台に情熱を傾けていらっしゃる栗原小巻さんが、2015年ロシア文化フェスティバル IN JAPANの登録プログラムとして新解釈による『桜の園』に挑みます。

ーーロシアへの想い、ロシア文化フェスティバル IN JAPANへの想いをお聞かせください。

栗原ーーバレエを学びましたときにロシアの素晴らしい先生方に巡り会うことで私の芸術家人生が始まったように思います。そして、ロシアとの友好、交流を続けていきたいという想いが芽生えたと思います。私のおりました東京バレエ学校は、“チャイコフスキー記念“と冠されていたんですが、そのチャイコフスキーが日記に「ロシアでは西欧と違い、政治よりも芸術の方がより重要視されている」と書いているんですね。政治というのは、時代によって変わりますでしょう?ロシア革命、社会主義から民主主義……日本も大戦前と大戦後ではまるで別の国のように変わりましたよね。政治というのはとても移ろいやすいものですから、そういうものに重きを置かずに、文化や芸術のように普遍的なものが重要だという認識を持つことが出来たなら、両国の国民も相互の理解も深まりますし、また相互の尊重が成し遂げられるのではないかと思っております。そういう意味でも、今関わっておりますロシア文化フェスティバル IN JAPANが友好を深めるうえでとても大切な役割を果たしていると確信しております。これからも長くこのフェスティバルが続いていって、それによって日本人とロシア人の友情が深まっていけば素晴らしいことだと願っております。

2015年はチェーホフ生誕155周年にあたり、ロシア文化フェスティバルIN JAPANでも6月にシューキン演劇大学劇団の来日公演『イワノフ』も予定しております。あわせてご期待ください!

 

 

「モスクワわが愛」がスクリーンに甦る!

日曜日, 12月 14th, 2014

ロシア文化フェスティバル IN JAPAN日本組織委員会副委員長としても欠かせない存在である大女優、栗原小巻さん。

ロシアで最も有名な日本人女優といっても過言ではありません。1968年にチェーホフ作の『三人姉妹』で人気を集め、81年には日本ではじめてソ連の演出家を招いた舞台『桜の園』に主演。70年代に日ソ合作映画『モスクワわが愛』『白夜の調べ』に連続主演し、続く『未来への伝言』では企画にも参加。そのすべてがロシアで大ヒットを遂げました。

今年2014年の文化フェスティバルは、映画関連プログラムもかなり充実していましたが、12月にはヨーロッパ最大の映画スタジオとして1923年に設立されたモスフィルムの創立90周年記念映画祭が開催され、『モスクワわが愛』が公開40周年を記念してスクリーンに甦りました。

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バレエを通してロシアと出逢ったという小巻さんにとって、ボリショイ劇場でプリマを夢見るバレリーナ役のヒロインはまさに適役でした。日本に残してきた恋人とロシアで出逢った彫刻家ヴァロージャとの間で揺れ動きながら、バレエに身を捧げ一身に舞い続けるヒロイン百合子は、ついに夢が叶いプリマとしてジゼルを踊る前日に白血病で倒れてしまいます。可憐に情熱的にこの悲劇のヒロインを演じきった栗原小巻さんにお話を伺いました。

ーー栗原小巻さんの女優人生において『モスクワわが愛』はどのような作品でしたか?

栗原ーー私にとってバレエは青春でしたので、ボリショイの方々とレッスンをさせて頂いたり、ボリショイ劇場で大好きなジゼルを踊ることが出来るなんて、それはもう大変な喜びでした。まさに夢が叶ったようでした。私のバレエの師であるアレクセイ・ヴァルラモフ先生が当時ちょうどボリショイにいらっしゃったので、バレエの撮影もとてもスムーズでしたし、先生ご自身も映画に出演してくださったり!まるでバレエ留学に来たのかと思うくらいに、温かく親しみを持って迎えてくださいました。言葉の壁を乗り越えて、日ソ両国のスタッフ&キャストが心を通わせて、アレクサンドル・ミッタ監督を中心に心ひとつに作品を作りあげるという、かけがえのない経験でした。クランクインの日、今はなきロシアホテルのちょうど北側になるかしら・・・そこで撮影が始まったんですけれども、1カット目が終わりましたところで、みんなでお皿を割って、その破片を持ち合って、映画の成功を願ったんです。日本ではそういう習慣はありませんでしょう?ですからとても印象に残っておりますし、ほかにも本当にたくさん、たくさんのことが忘れられませんが・・・『モスクワわが愛』という作品は、その後の合作映画や海外ロケ、海外公演などこれまで俳優として恵まれたたくさんの作品において、すべてが喜びになり、たとえ困難なことがあったとしてもどんなことも乗り越えられるという、女優としての自信になった特別に大切な作品です。

 

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△Москва, любовь моя(モスクワ、わが愛)

 

ーー日ソ合作映画第2弾『白夜の調べ』では、白夜の季節の美しいレニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)の音楽院で、ソ連の作曲家イリヤと出逢うピアニストの悠子役を演じられました。実現から撮影まで、日本とソ連でスタイルが異なって苦労したというような点はありましたか?

栗原ーー合作映画第1作目実現まではとても長い歳月がかかったんです。けれどもその大ヒットによって、第2作目は「また作りましょう!」という感じで大変スムーズにすすんだんですの(笑)。改めてプロデューサーの皆様のご苦労があってのことだったと思いますが、とても嬉しいことでした。作曲家のシュワルツさんが現場についてくださって、その場で音楽が生まれるというような素晴らしい環境のなかで、ソロヴィヨフ監督やイリヤ役のソローミンさんなど皆で話しあいながら作品が作り出されていきました。映画人の皆様はスタッフもキャストもそれぞれに個性的でいらっしゃるから、“この国だから異なる“ということでひとくくりには出来ません。日本で撮影していても、それぞれの方のキャラクターによって異なりますものね。日本もソ連も、どこの国でも、良い作品をつくりあげようという思いのもとでは皆同じだと感じております。

 

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△Мелодии белой ночи (白夜の調べ)

第3弾『未来への伝言』では1960年頃に世界中で猛威を振るったポリオ(小児麻痺)で長男を失い、同じ病にかかってしまった次男を救うため、そして日本の子供たちの命を救うために、厚生省にも働きかけて航空協定も結ばれていないソ連から生ワクチンを運ぼうと奮闘する母親圭子役を演じ、またこの作品では企画にも参加されました。

今年は創立95周年を迎えた全ロシア国立映画大学の卒業記念映画祭も開催され、代表団の一員として、同大学の教授も務めるソロヴィヨフ監督が来日し、日本映画大学で講演しました。栗原小巻さんと再会し抱き合うソロヴィヨフ監督の笑顔が忘れられません!